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海に投げ捨てられた奴隷商人の銅像を美術館で永久展示へ。80%のブリストル市民は展示に賛成

17世紀の奴隷商人、エドワード・コルストンの銅像をブリストル市内の美術館、M Shedに永久展示する決議案がまもなく可決される。この銅像は、ブラック・ライブズ・マター運動の参加者によって2020年に引きずり下ろされたが、今後は地域で起きた抗議活動の歴史を伝えるために再び展示される見通しだ。

引きずり下ろされたコルストンの銅像が2021年にM Shedに展示されている様子。エドワード・コルストンは奴隷商人だったことから、彼の銅像は2020年に実施されたBlack Lives Matterの抗議活動の標的となった。 Photo: Polly Thomas/Getty Images

18世紀のイギリスの奴隷商人、エドワード・コルストンの銅像をブリストル市博物館・美術館に永久に展示する決議案が間もなく可決される。これは、ブラック・ライブズ・マター運動の抗議者たちによって2020年に倒された銅像だ。

この銅像は2022年1月以来、人目に触れることはなかったが、2021年6月から翌年1月まで一時的に展示されていたブリストル市博物館・美術館のM Shedに再び展示される見込みだ。

「この銅像が展示される最良の場所は、その背景と、多くのコミュニティにとってこの像が象徴するものを多様な人々と適切に共有できる博物館である、という見解は揺るぎません」と、ブリストル市長は声明を発表している。

この銅像と台座は、歴史的重要性を示す第二級指定建築物に指定されており、一定の保護が保証されている。ブリストル市議会の開発管理員会は、この銅像を台座から切り離すために、登録抹消を2月21日に決議する予定だ。提出された決議案によると、台座はコルストン・アベニューに残され、最終的には新しい刻印プレートが設置されるという。

この銅像はデモの参加者たちによって2020年6月に台座から引きずり下ろされ、ブリストル湾に投げ入れられた。抗議者たちは、イギリスの奴隷貿易の大手企業である王立アフリカ会社にコルストンが関与していたことから、この銅像を標的にしていた。また、銅像が投げ入れられた港は、奴隷として連れてこられたアフリカ人が海に投げ込まれた場所でもある。像が引きずり下ろされる様子を捉えた画像はネットで拡散され、奴隷制や植民地化に関連する歴史的人物の記念碑を、公共の場に展示することの是非を巡る議論の火付け役となった。

コルストンの銅像はのちに海から引き上げられ、像を台座に戻すべきか、撤去すべきかでブリストル市民の意見は分かれた。しかし、この像が港のそばに再び立てられることは「市民の不安」の対象になる可能性があり、「合理的ではない」とブリストル市議会の自然保護委員会は議会の報告書に記している

恒久的な解決策を模索するなかブリストル市議会は、この像をM Shedに展示した。銅像は横たわるように館内に設置され、その汚損の背景を詳しく説明した年表が添えられている。

ブリストルの歴史保全団体「We Are Bristol History Commission」がブリストル市民を対象に実施したアンケート調査によると、80%の市民が銅像が博物館に展示されることを認めたという。「We Are Bristol History Commission」の代表を務めるティム・コールと、報告書の執筆者は次のように声明を発表している。

「このプロジェクトでは、多様な意見や見解を多く集めることが重要です。その結果、銅像にまつわる思いの複雑さや、それに関連する背景が如実に示されていました」

もしこの決議案が可決されれば、銅像はブリストルで起きた抗議活動の歴史を紹介する新たな展覧会でお披露目となる。(翻訳:編集部)

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