フィリップスの2024年総売上高は1330億円超。オークション部門は前年比14%減で苦戦が続く
世界三大オークションハウスの一角、フィリップスの2024年の売上高が報告された。オークション売上が前年比14%減と大きく落ち込む一方、若い顧客の獲得にシフトしていることが示されている。
世界三大オークションハウスの一角、フィリップスの2024年の全世界売上高は8億4300万ドル(直近の為替レートで約1332億円、以下同)。うちオークション部門の売上高は7億2100万ドル(約1140億円)で、2023年の8億4070万ドル(約1328億円)から14%減と、他の大手オークションハウス同様、厳しい落ち込みが明らかになった。
フィリップスによると、売上高は伸び悩んだが、ニューヨーク、ロンドン、ジュネーブ、香港といった各拠点でのロット別セルスルー率は86%で、オークションに出品された作品の8割は推定落札額を超える価格で落札されたという。
近年の年次報告書では、フィリップスが若い顧客に重点を置いていることが示されている。オークションでは入札参加者と落札者の3割を40歳以下のコレクターが占め、さらにその3分の1近くが2024年に初めてフィリップスとの取引を行った。
また、2024年のプライベートセール部門の売上高は1億2100万ドル(約191億円)。ここには、フィリップスが新たに設立した低価格帯向けデジタル販売プラットフォーム用にアーティストに制作を依頼したエディション作品も含まれている。
美術品販売が鈍化する一方で、時計と宝飾品は安定的な売れ行きを見せている。デザイン分野では90%のセルスルー率が維持され、時計は4年連続で2億ドル(約316億円)以上の売上高を達成した。
全体として、フィリップスは2023年の深刻な低迷からまだ立ち直れていないことが分かる。イギリス支社の財務監査の一環として2023年に提出されたディレクターズリポートによると、特に収益の大きな柱である最高価格帯作品の販売競争が激化したことが、利益目標達成に影響を及ぼしたとされている。
同リポートはさらに、ロシア資本の親会社、マーキュリー・トレーディング・グループからの融資に頼っているフィリップスは、「赤字続きで負債が膨らんでいる」とし、「これらの品目(美術品)の調達プロセスにおける競争の激しさなど、競合としのぎを削る中で利益率が圧迫されている」と指摘している。なお、フィリップスは2024年の推定利益率の開示には応じていない。(翻訳:石井佳子)
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