三大オークションハウスの総売上高は昨年から約3割減少。一流アーティストの売上も伸び悩む
2024年下半期に回復の兆しを見せたオークション市場だが、過去の数字と比較すると見劣りしてしまう。しかし、ロンドンの分析会社によると、落札価格はアート市場におけるアーティストの価値の変化を示しているわけではなく、その年の取引価格の目安にすぎないという。
美術品のオークション市場は2024年に回復の兆しを見せたものの、2022年に記録した総売上額には遠く及ばず、昨年の総額にも届かなかった。
今年、高額落札された上位10作品の総額は5億1260ドル(約786億円)になるが、2023年の総額6億6000万ドル(現在の為替で約1038億円)から22.3%減。2022年の総額11億ドル(同約1730億円)と比較すると、53%も減少している。また、ロンドンに拠点を置く分析会社、ArtTacticの調査結果によると、オールドマスター、近代美術、戦後、現代アートの各カテゴリーにおけるサザビーズ、クリスティーズ、フィリップスでの2024年のオークション総売上高は41億ドルに達するが、2023年と比べると29%減少しており、2022年の総額と比較すると47.9%と売上が半減したことになる。
2024年に最も高額で落札された作品は、クリスティーズ・ニューヨークが11月に開催した20世紀美術のイブニング・セールに出品されたルネ・マグリット「光の帝国」シリーズの一つ(1954年)だった。1億2110万ドル(約188億円)で落札された本作は、マグリット作品の最高価格を更新したが、この金額は、2年前にアンディ・ウォーホルの《Shot Sage Blue Marilyn(ショット・セージ・ブルー・マリリン)》(1964年)に支払われた1億9500万ドル(現在の為替で約306億円)には及んでいない。また、2024年に10番目に高額で落札された作品、フィンセント・ファン・ゴッホの《Les canots amarrés》(1887年)は3220万ドル(約50億円)の値がついたが、これは2022年の高額落札作品10位となったマグリットの「光の帝国」シリーズ作品が記録した7980万ドル(現在の為替で約125億円)をはるかに下回っている。
このほかにも、市場の指標となることが多いパブロ・ピカソ作品の総落札額も今年は下落している。2024年に最も高額で落札されたピカソ作品は、11月のオークションに出品された《La Statuaire》(1925年)の2480万ドル(現在の為替で約38億9600万円)。高額取引されたピカソの上位10作品の総額をみると、2023年は3億4440万ドル(同約541億円)、2022年は2億7480万ドル(同約432億円)、そして2021年には3億4070万ドル(同約535億円)だが、今年は1億1460万ドル(同約180億円)と伸び悩み、3年ぶりに2億ドル(同約314億円)を下回った。さらに、高額取引されたピカソ上位20作品の累計落札額も、今年は1億2840万ドル(同約202億円)で、2023年の6億9000万ドル(同約1085億円)から大幅に下落した。2023年に1億3900万ドル(当時の為替で約209億円)で落札された『Femme à la montre』(1932年)と比較すると、82%の減少となる。
とはいえ、売上額だけを唯一の判断基準にしてはならない。たとえば、ここ4年間だけでもジャン=ミシェル・バスキア作品の落札価格は大きく変動している。2020年に1500万ドル(現在の為替で約23億円)で落札されたバスキアの作品が、2021年には9300万ドル(同約146億円)に跳ね上がり、2022年には8500万ドル(同約133億円)、2023年には6700万ドル(同約105億円)と徐々に下落。そして今年に入ると、4600万ドル(同約72億円)とさらに下がっている。また、2024年に最高価格をたたき出したマグリット作品も、年によって最高落札額は変動しており、2020年には2460万ドル(同約38億円)、2021年には1720万ドル(同約27億円)、2022年には7940万ドル(同約125億円)、2023年には4230万ドル(同約66億円)と一貫性はない。
ArtTactic社の報告書が示しているように、これらの評価額は、市場におけるアーティストの価値の変化を表しているわけではない。こうした落札額はむしろ、一流アーティストの作品が取引される額の「目安」であり、目玉作品に高値で買い手が付いただけにすぎない。(翻訳:編集部)
from ARTnews