サザビーズ・ニューヨークが従業員100人をレイオフ。今年5月にも50人解雇、売上悪化が影響か
サザビーズ・ニューヨークが若手社員を含む100人のレイオフを実施した。11月に開催されたオークションが前年と比べて約55%減少したことが影響していると考えられ、将来的には海外拠点における従業員削減も行われる可能性がある。
サザビーズがバックオフィスや若手、そして各部門のスペシャリスト職をはじめとするニューヨーク本社の従業員100名を解雇したと発表した。今回の解雇について同社は、次のような声明を発表している。
「アートマーケットが2024年に直面した課題を踏まえ、当社は業績向上と長期的な成長を目的とした人員配置と事業内容の見直しを慎重に検討しました。当社は各部門および世界各地に優れた専門知識と能力を備えた非常に優秀な人材を擁しており、お客様に最高水準のサービスを提供することに専念して参ります」
一方、同社ではさらなる人員削減と海外支社の閉鎖が計画もしくは進行中であるといい、US版ARTnewsの取材に応じたサザビーズ・ロンドンの従業員は、「とんでもないことが起きています」と答えた。
Artnet Newsによれば、今回の解雇に際し、社内で公式発表は行われなかったという。また、ウェブメディアのPuckは、解雇の対象となったのは「印象派および近代美術部門のシニアスペシャリストからビジネス開発担当者まで」含まれていたほか、古代美術とアメリカ美術、そして日本美術の専門家らもいたと報じているが、サザビーズの広報担当者は「根も葉もない噂」と否定している。
オークション市場の細分化が進んでいるなか行われた今回のレイオフ。サザビーズは11月にニューヨークで開催した印象派と近代美術、そして現代美術のイブニングセールで5億3310万ドル(約812億円)を売り上げたが、昨年同時期の12億ドル(現在の為替で約1827億円)から約55%減少している。
5月にサザビーズ・ロンドンで約50人の従業員が解雇されて以来、数カ月にわたって不安視されていた同社の財務状況だが、9月には2024年上半期の中核収益が88%減少し、オークション売上高が25%減少したという情報漏洩もある。また、美術品輸送業者や修復業者への支払いを先延ばしにしていることがウォールストリートジャーナル紙によって報じられた。
こうしたなか8月には、アブダビの政府系持ち株会社、ADQから約10億ドル(約1522億円)の資金を調達したことを発表し、10月に取引が成立した。ADQとの取引が成立する以前、サザビーズは、メディア通信大手のアルティスUSAの株主であるパトリック・ドラヒが単独で出資しており、18億ドル(約2740億円)の負債を抱えていた。現在ドラヒが所有している企業の負債総額は600億ドル(約9兆1322億円)にのぼり、2027年までに一部ローンの返済が求められているという。
サザビーズはまた、ニューヨークのマディソン・アベニューにあるブリューワー・ビルを1億ドル(約152億円)で購入。ニューヨーク市財務局によると、同ビルは945マディソン・アベニューがバークレイズ銀行から3500万ドル(約53億2800万円)の抵当権を設定して取得し、サザビーズは2039年10月31日までの15年間のリース契約を結んだという。
これ以外にも同社は、7月に香港に約2200平方メートルの拠点と、パリに約1000平方メートルの拠点を今年に入ってオープンしており、拡大を続けている。
Puckによれば、人員削減は競合のクリスティーズでも計画されているといい、「年末によくある出来事だが、サザビーズほどの規模ではない」という。しかし、US版ARTnewsの取材に応じたクリスティーズの広報担当者は次のように否定している。
「クリスティーズでは、特筆すべき人員配置の変更は今のところ予定されていません。他の業種と同様に、当社は市場への適応力を維持するためにグローバルな人材ニーズの見直しを継続して行っています」(翻訳:編集部)
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