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  • 2024.03.18

アドリア海の海底から木製のマストほか大量の遺物を発見。「世界的に見ても稀有な例」

スロベニア南西部・ポルトロシュ沖のアドリア海で、古代船の一部や大量の陶器などの遺物が見つかった。発見したのはリュブリャナ大学水中考古学研究所(ZAPA)の調査チームで、一帯は古代ローマの港湾跡と見られる。

スロベニアのポルトロシュ沖で発見された陶器などの遺物。Photo: ©2024 ZAPA, Zavod za Podvodno Arheologijo

リュブリャナ大学の水中考古学研究所(ZAPA)は、同大学の海洋・運輸学部のダイバーらとともに、3000以上の陶器片を採集。船のマスト2本や船の係留に使われたと見られる木の杭、帆や索具などの部品も見つかった。

水中から引き上げられたマストは約1メートルあり、モミとトウヒの木でできている。研究チームはアートネット・ニュースの取材に、「これだけのものが残っているのは、世界的に見ても稀有な例」だと答えた

陶器片の多くは、紀元1世紀頃に大量生産された赤色の陶器で装飾的なデザインが施されたシガラータと呼ばれるもの。アンフォラ(取手の付いた首の長い壺)や調理用品、高級食器などの交易品だったとされる。

スロベニアでは2017年来、アドリア海沿いの約50キロに及ぶ海岸線で、国を挙げた大規模な水中考古学の調査が行われている。今回の発見もその成果の1つだが、ZAPAによれば、「視界の悪い海中」での作業だったため、調査は困難を極めたという。

大きな発見のあったポルトロシュには先史時代からケルト民族が定住していたが、紀元前178年以降は古代ローマの支配下に入った。遺物のあった場所に近いベナルディン・ビーチは港に適した環境だったとされ、研究チームによると紀元3世紀から4世紀にかけて小さな港が置かれていた可能性がある。ちなみに、同ビーチは現在、リゾート地として人気が高い。

この地域ではまた、1998年からの調査で複数のローマ時代の遺跡が発見されている。その中には、ガソリンスタンドの下から発掘された農業集落や、古い塩倉庫の隣で2004年に見つかった養魚場などがある。

今回発見された木製の遺物はメラミン樹脂で保護され、陶器片などとともにポルトロシュに近いピランのセルゲイ・マシェラ海洋博物館に保管される予定。また、フィールドワークがいったん終了した後も、遺跡の調査は続けられる。(翻訳:石井佳子)

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