ダボス会議でレフィク・アナドルが作品を発表。南極の氷河融解に警鐘を鳴らす
1月20日に開幕した世界経済フォーラムのオープニング・コンサートにおいて、レフィク・アナドルが地球温暖化や環境危機を題材とした映像を提供した。
人工知能(AI)を駆使してインスタレーションや空間デザインを手がけるレフィク・アナドルが、2024年に引き続き今年も世界経済フォーラム年次総会(WEF)のオープニング・コンサートで、地球温暖化や環境危機を題材にした映像を提供した。
2024年には熱帯雨林の生態系を題材にしており、今年の映像は国連が「氷河保護国際年」と定めた年にちなみ、気候変動による南極の氷河の融解に焦点を当てている。アナドルのスタジオは、アイスランドや南極での現地調査を実施し、異なる季節や光の条件下で1000万以上の氷河の画像データを収集。これらのデータは、スタジオが開発した「Large Nature Model」と呼ばれるAIシステムで処理され、再生可能エネルギーを使用して作品化されたという。
完成した作品は、ダボス会議センターの本会議場の壁面に投影され、モーフィング・チェンバー・オーケストラと声楽家たちの演奏に合わせ、氷河の壮大な美しさとそこに存在する生態系を表現されている。「氷河は人類にとって重要な淡水源であり、その急速な融解と形状変化は極めて深刻な問題です」とアナドルは語る。
このプロジェクトの特徴は、スミソニアン博物館に収められた1億4800万点の収蔵品やロンドン自然史博物館にある8000万点の標本、コーネル大学鳥類学研究所が所有する5400万点の画像など、世界有数の自然史データアーカイブとの協力のもと制作されている点だ。WEFのアート・文化部門責任者であるジョセフ・ファウラーは、アナドルの作品について「AIと倫理、自然を組み合わせ、単なる対話にとどまらない行動変容をもたらす」と評価している。
環境をテーマとしたこれらの作品は、スタジオの非営利部門RAS AI財団を通じて制作され、ロンドンのサーペンタイン・ノースでの初個展「Echoes of the Earth: Living Archive」を皮切りに、NvidiaやGoogleのAIカンファレンス、国連本部での首脳会議、そしてソウルのフトゥラ・ソウルでの8作品展示など、2024年から世界各地で精力的に発表を重ねている。