今週末に見たいアートイベントTOP5:デ・キリコ10年ぶりの大回顧展、森村泰昌が最新作や近作14点を発表
関東地方の美術館・ギャラリーを中心に、現在開催されている展覧会の中でも特におすすめの展示をピックアップ! アートな週末を楽しもう!
1. currents / undercurrents-いま、めくるめく流れは出会って(青森公立大学 国際芸術センター 青森)
国内外10作家の作品から人や自然の「移動」を考察
古来から人間をはじめとする生物たちは、自然環境の影響を受けながら、移動を続けることで生きてきた。全世界から表現活動を行う人々が集う、青森公立大学の国際芸術センターを舞台に開催される本展は、「現在」という意味をもちながら、海流や気流など一定の方向に動く水や空気、電流などの流れを意味する「current」と、目に見えにくい流れや暗示を意味する「undercurrent」をキーワードに、場所とかかわり合いながら表現を続ける国内外そして青森ゆかりのアーティストの作品を集めた。
出品作家は、パレスチナ人アーティストのジュマナ・エミル・アブード、ニュージーランドを拠点に活動する画家ロビン・ホワイトのほか、青野文昭、岩根愛、是恒さくら、工藤省治、光岡幸一、中嶋幸治、澤田教一、鈴木正治。本展は会期半ばで展示替えを行い、変化し続ける「いま」をこの場に取り込むことを試みる。後期では青森市教育委員会が所蔵するアイヌの衣服も展示する。
currents / undercurrents-いま、めくるめく流れは出会って
会期:前期 4月13日(土)~6月30日(日)、後期 7月13日(土)~9月29日(日)
会場:青森公立大学 国際芸術センター 青森(⻘森市⼤字合⼦沢字⼭崎152-6)
時間:10:00~18:00
休館日:無休
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2. 森村泰昌 楽しい五重人格 (ShugoArts)
最新作や近作14点で森村泰昌の多面性に触れる
西洋美術史や日本美術史に関する人物や映画女優、歴史的な人物に扮したセルフポートレイトで知られる現代美術家、森村泰昌。近年は2022年に京都市京セラ美術館で大規模個展「森村泰昌:ワタシの迷宮劇場」を開催したほか、数々のパフォーマンスを手掛け、2024年4月には新刊『生き延びるために芸術は必要か』(光文社新書)を出版するなど、さまざまな方法で表現活動をしている。森村はそのような「統一感が欠如していること、整理されず散乱していること、異なるキャラクターや価値観が混在していること、ヒエラルキーを生み出さないこと」をむしろ肯定し、「お定まりのアイデンティティに収斂されること」を回避したいと話す。
本展は、森村の最新作と未発表作、近作計14点を、相互に関係性を持たない五つのセクション(五重人格)で構成して展示する。今回森村が扮するのは「甲斐庄楠音」、「ナポレオン」、「ミロの絵画」、「カフカ」、「魯迅」。作品は不協和音を奏でるとともに、森村の多重人格性や創造の源泉について語りだすことだろう。
森村泰昌 楽しい五重人格
会期:4月19日(金)~6月1日(土)
会場:ShugoArts(東京都港区六本木6-5-24 complex665 2F)
時間:11:00~18:00
休館日:日月祝
3. ONE SINGLE BOOK(ギャラリー小柳)
31作家がそれぞれ選んだ「1冊の本」で作品を制作
同ギャラリーと同じ銀座1丁目に店舗がある「1冊の本を売る書店」、森岡書店との共同企画展。森岡書店、同ギャラリーにゆかりのあるアーティスト計31人が自由に「1冊の本」を選び、その本に独自のアイデアで手を加えた作品が並ぶ。例えば、トーマス・ルフは、デュッセルドルフ芸術アカデミーの学生時代に愛読していたオスヴァルト・ヴィーナーの哲学書に、当時証明写真機で撮影し、後年にピクセル化したセルフポートレイトの小さな写真を添えた。そして紙の支持体を中心に油彩やドローイングを制作する 金田実生は、本展のための新作《ドローイングノート 10 2024.3.8.~》を描きあげた。
出品作家は次の通り。(森岡書店)朝吹真理子、遠藤薫、沖潤子、金田実生、猿山修、杉謙太郎、諏訪敦、花代、羽良多平吉、平澤摩里子、廣瀬智央、牧野伊三夫、向井山朋子、吉増剛造、ビジョイ・ジェイン、シャルロット・デュマ。(ギャラリー小柳) ミヒャエル・ボレマンス、ソフィ・カル、ジャネット・カーディフ&ジョージ・ビュレス・ミラー、マルレーネ・デュマス、マーク・マンダース、クリスチャン・マークレー、トーマス・ルフ、杉本博司、須田悦弘、束芋、寺崎百合子、熊谷亜莉沙、ユアサエボシ、中村裕太、橋本晶子 。会期中、森岡書店では関連した企画展が開催される。
ONE SINGLE BOOK
会期:4月25日(木)~6月22日(土)
会場:ギャラリー小柳(東京都中央区銀座1‒7‒5 小柳ビル9F)
時間:12:00~19:00
休館日:日月祝
4. デ・キリコ展(東京都美術館)
デ・キリコの70年にわたる画業を100点以上で回顧
「形而上絵画」の生みの親として知られる、20世紀の巨匠ジョルジョ・デ・キリコ(1888-1978)。1910年頃から、簡潔な構図の風景の中に歪んだ遠近法で脈絡のないモチーフを配置した、日常の奥に潜む非日常を表現した絵画を描き始める。それが後に「形而上絵画」としてサルバドール・ダリやルネ・マグリットなどの後のシュルレアリスムの画家をはじめ、数多くの芸術家に影響を与えた。
日本では10年ぶりの大規模な回顧展となる本展は、およそ70年にわたる画業を「イタリア広場」「形而上的室内」「マヌカン」などのテーマに分け、100点以上の作品で余すところなく紹介。デ・キリコの代名詞と言える「形而上絵画」は現在世界中に散らばっており、まとまった数で見られる貴重な機会となる。また、デ・キリコが手掛けた彫刻や挿絵、さらには舞台衣装のデザインなども展示し、その幅広い創作活動も紹介する。
デ・キリコ展
会期:4月27日(土)~ 8月29日(木)
会場:東京都美術館(東京都台東区上野公園8-36)
時間:9:30~17:30(金曜は20:00まで、入場は30分前まで)
休館日:月曜(5月6日、7月8日、8月12日を除く)、5月7日、7月9日~16日
5. YSN ゆっくり・しっかり・のこす「着物を考えるための調べもの」(Gallery SUGATA)
老舗着物問屋が仕掛ける着物文化を50年後に残すための試み
2020年に創業300年を迎えた着物メーカー問屋、「矢代仁」が350周年に向けてスタートしたプロジェクト「YSN」。50年後にも着物が人々に受け入れられるものになるために、今考えるべきテーマを自由な視点で見出し、解きほぐしている。この取り組みの初めての展覧会となる今回は、「移動」、「暑さ」、「柄」にまつわる3つの「調べもの」を発表する。
「移動」は、写真家の岡﨑果歩とスタイリストの中本ひろみによるユニット「néné petit」が参加し、西洋化され洋服が前提となった現代の街並みのなかで、着物が「映える」風景を求めて、東京都内や熱海などの電車、駅、バス停、ホテルなど複数のロケーションで着物のファッションシュートを敢行した。「暑さ」は、肌着に起源を持つとされる着物の性能に着目。しゃり感のある手触りと紬よりも軽い着心地の高級着物生地「御召」をテクノロジーディレクター集団「BASSDRUM」のメンバーとともに、現代の冷感インナーなどと比較しながら、高さスキャン、高解像度スキャン、CTスキャンという3つの非破壊手法でデータ化。3Dプリントや空間再現ディスプレイにより、御召が持つ独自の風合いを様々な角度から体験する。「柄」は、デザイン、アート、テクノロジーのプロフェッショナルとの協力で、矢代仁に伝わる200年前の「柄帳」を分類およびピックアップ。現代の視点から、新しい価値を再発見することを目指す。
YSN ゆっくり・しっかり・のこす「着物を考えるための調べもの」
会期:5月1日(水)~5月12日(日)
会場:Gallery SUGATA(京都市中京区室町通二条下ル蛸薬師町271-1)
時間:11:00~18:00
休館日:無休