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今週末に見たいアートイベントTOP5: MSCHFが「現代」を風刺する新作を発表、目[mé]のスケーパーが再び埼玉に出現!

関東地方の美術館・ギャラリーを中心に、現在開催されている展覧会の中でも特におすすめの展示をピックアップ! アートな週末を楽しもう!

ミスチーフ Animorph Painting 4: Sorayamaphael 2025 Oil on canvas H137 x W183 x D3.8 cm
MSCHF Material Values(NANZUKA UNDERGROUND)より、ミスチーフ Animorph Painting 4: Sorayamaphael 2025 Oil on canvas H137 x W183 x D3.8 cm

1. 「磯崎新の原点 九州における1960-70年代の仕事」(北九州市立美術館)

福岡相互銀行大分支店(1967年)Courtesy of Arata Isozaki & Associates
磯崎新《内部風景Ⅲ 増幅性の空間-アラタ・イソザキ》1979年 北九州市立美術館蔵 ⒸEstate of Arata Isozaki
北九州市立美術館(1974年)
⑪ ヴァシリー・カンディンスキー《合意》1939年 Walkアセットマネジメント蔵

戦後の建築界を牽引した磯崎の初期作品展

北九州市立美術館の50周年を記念し、美術館を設計した磯崎新(1931-2022)の初期作品を集めた回顧展が開催される。磯崎は1970年の大阪万博やロサンゼルス現代美術館など、国内外で多くの建築を手がけてきた。

本展では1960〜70年代に九州で手がけた建築に関する模型や資料、自身の建築をモチーフとした版画作品を紹介する。合わせて、若き磯崎の才能を見いだし、銀行支店や本店の設計を依頼した四島司が収集した「四島コレクション」が展示される。展示作品には、ヴァシリー・カンディンスキーアンゼルム・キーファーなどが含まれている。

「磯崎新の原点 九州における1960-70年代の仕事」
会期:1月4日(土)~3月16 日(日)
場所:北九州市立美術館(福岡県北九州市戸畑区西鞘ヶ谷町21-1)
時間: 9:30 〜 17:30
休館日:月曜(祝日の場合は翌平日)


2. シグリッド・サンドストローム 「DUSK」(ペロタン東京)

Caption: View of the exhibition "Dusk" at Perrotin Tokyo. Photo by Osamu Sakamoto. Courtesy of the artist and Perrotin.
Caption: View of the exhibition "Dusk" at Perrotin Tokyo. Photo by Osamu Sakamoto. Courtesy of the artist and Perrotin.
Caption: View of the exhibition "Dusk" at Perrotin Tokyo. Photo by Osamu Sakamoto. Courtesy of the artist and Perrotin.
Caption: View of the exhibition "Dusk" at Perrotin Tokyo. Photo by Osamu Sakamoto. Courtesy of the artist and Perrotin.

夕暮れ」から「闇」を空間として再考する

スウェーデンのアーティスト、シグリッド・サンドストロームの日本初個展。サンドストロームは、北欧の大自然のなかで育った子ども時代の経験をもとに、抽象的な風景画を通して探求を続けている。本展では「夕暮れ」から「闇」を深みと優しさを生み出す空間として再考することを試みている。

作品では、版画、染み、アーチを描くブラシストローク、オイルスティックを融合させた特徴的な技法が作品に流動感を与える。特に、展示作品《Dusk》(2024)や《Distance in Blue(2024)では、作品同士がまるで互いに語り合っているかのような相互作用が顕著に見られる。また、両面作品《Borealis》(2024)は裏表で異なる質感があり、その不明瞭感は神道における「闇」と似た解釈を持つ。

シグリッド・サンドストローム 「DUSK」
会期:1月17日(金)〜3月22日(土)
場所: ペロタン東京(東京都港区六本木6-6-9)
時間:11:00 〜 19:00
休館日:月日祝


3. 目[mé]「LIFE SCAPER in SAITAMA ARTS THEATER」(彩の国さいたま芸術劇場)

展示風景。
目[mé]

劇場空間に現れるスケーパーを追う

現代アートチーム目[mé]のいくつかの作品を紹介する展覧会。

目[mé]がディレクターを務めた「さいたま国際芸術祭2023」のプログラムの1つ「SCAPER(スケーパー)」は芸術祭の枠を超え多様で独創的な鑑賞体験を生み出す機会として注目された。スケーパーとは、パフォーマンスなのかそうでないのか定かでない、人為と自然、虚構と現実の間の存在を表す目[mé]による造語。本展では、目[mé]と劇場が契約を交わし、劇場がスケーパーが出現する可能性を所有する。劇場という、もともと虚実が入り混じる空間において立ち現れるスケーパーとはいかなるものか、劇場で実際に体験してほしい。

目[mé]「LIFE SCAPER in SAITAMA ARTS THEATER」
会期:1月21日(火)〜2月24日(月)
場所:彩の国さいたま芸術劇場(埼玉県さいたま市中央区上峰3-15-1)
時間:9:00 〜 22:00
休館日:月曜(2月24日は除く)


4. アン・テウォン 「deep sea fish」(DIESEL ART GALLERY)

歪みから現代の仮想的現実を問う

ソウルを拠点に活動しているアーティスト、アン・テウォンの日本初個展。アン・テウォンは、画像の形式で流通するミームをモチーフに、3Dモデルを奇妙に歪ませることで、現実と仮想の中間物のような絵画作品と彫刻作品を制作している。

日本橋馬喰町CON_のキュレーションによる本展では、極限の環境に適応する過程で目の機能が退化した深海魚と、PCやスマートフォンの画面を日々眺める現代の人間たちを重ね、「見る」という行為の概念の変化を示す。一点透視図法的な合理性とは違って歪んで見える存在は、二次元と三次元、仮想と現実を区別できない新たな環境を生きていることを体感させるだろう。

アン・テウォン 「deep sea fish」
会期:1月25日(土)〜2025年4月16日(水)
場所:DIESEL ART GALLERY(東京都渋谷区渋谷1-23-16)
時間:11:30 〜 20:00
休館日:無休


5. MSCHF Material Values(NANZUKA UNDERGROUND)

ミスチーフ Animorph Painting 4: Sorayamaphael 2025 Oil on canvas H137 x W183 x D3.8 cm
ミスチーフ
Animorph Painting 1: Toriyambrandt
2025
Oil on canvas
H147 x W120 x D3.8 cm
ミスチーフ MATERIAL VALUE SCULPTURES FIGURE 2: STACKED PEOPLE 2025 Indium, Aluminum, Steel, Glass, Plastic, Electronics H68 x W28.6 x D28.6 cm
ミスチーフ MATERIAL VALUE SCULPTURES FIGURE 3: SCORPION 2025 Indium, Aluminum, Steel, Glass, Plastic, Electronics H65 x W28.6 x D28.6 cm

歴史的議論に切り込むの3つの新たな実践

ニューヨーク・ブルックリンを拠点とするアート・コレクティブ、MSCHF(ミスチーフ)による新作個展。本展では、3つの異なるメディアを用いた新作を発表し、アートの定義や価値についての歴史的な議論を、現代の経済構造やテクノロジーを背景に悪戯めいた作品の形式に昇華させる。

展示作品は、現代の高度資本主義社会におけるアートと物質的価値の関係をユーモアを交えて再定義する「MATERIAL VALUE SCULPTURES」シリーズや、アメリカの子供向けSF小説「Animorph(アニモーフ)」で、人間が動物に段階的に変身する描写に着想を得ている「ANIMORPH PAINTING」シリーズ。ほか、現代社会における労働の退屈さや無意味さを暗示し、資本主義が生み出す労働の矛盾を鑑賞者 に直感的に体感させるインスタレーション作品《RAIN CUBICLE SCULPTURE》。

MSCHF Material Values
会期:2月1日(土)〜3月22日(土)
場所:NANZUKA UNDERGROUND(東京都渋谷区神宮前3-30-10)
時間:11:00〜9:00
休館日:日月

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