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ミランダ・ジュライに聞いた、最近ハマっているアートないろいろ、ベスト5

映画監督、アーティスト、ミュージシャン、小説家などさまざまな顔を持つミランダ・ジュライ。現在、ミラノのプラダ財団で展覧会「New Society」を開催中のジュライに、最近彼女が特に気に入っているアートなモノ・コトを5つ紹介してもらった。

ミランダ・ジュライ。Photo: Valentina Sommariva

1974年アメリカ・バーモント州生まれのミランダ・ジュライは多方面で活躍するクリエイターだ。自身が監督・出演した映画『君とボクの虹色の世界』(2005)ではカンヌ国際映画祭でカメラ・ドールを受賞。2007年に発表した小説『いちばんここに似合う人』は、邦訳を含め世界20カ国で翻訳出版された。日本では、2008年の横浜トリエンナーレで作品発表の経験を持つ。

ジュライは現在、ミラノのプラダ財団で展覧会「New Society」を開催中だ(10月14日まで)。5月14には小説『All Fours』を発売する。小説の紹介ページでは、彼女の持つ「軽妙な語り口、人間の親密さに対する臆面もない好奇心、そして境界線を押し広げることへのリアルな喜び」が賞賛されていた。そんなジュライの視点からアートを見つめると、どのようなものが浮かび上がってくるのだろうか。

以下、彼女が最近注目しているアーティストなど、アートにまつわる5つのトピックスを語ってもらった。

1. ニコ・B・ヤング

Photo: Courtesy the artist

ニコ・B・ヤングはロサンゼルスを拠点に活動するアーティスト。ロサンゼルスの路上に捨てられていたテーブルの天板や、ミュージシャンだった亡き父のデモ音源など、既存の意味あるものを彫刻作品につくり上げている。彼はしばしば、そのものが持つ従来の姿を残しながら、まったく新しいものに変えてしまう。

一種のアート・コラボレーションとして、私はニコにアトリエの裏にある小さな家のキッチンにあるもので作品を制作するよう依頼した。すると彼は、アトリエ・ヴァン・リースハウトの家具を、彫刻家ロバート・ゴーバーの棒状のバターの作品を思わせる淡いイエローのラッカーで塗りつぶすという独自のアレンジを加えたのだ。

2. キング・スクール現代美術館

Photo: Courtesy King School Museum of Contemporary Art

長年の友人であり協力者でもあるハレル・フレッチャーとリサ・ジャレットが2014年に設立した、マーティン・ルーサー・キング・ジュニア・スクール現代美術館は、オレゴン州ポートランド北部にある幼稚園から小学校5年生までの公立学校、マーティン・ルーサー・キング・ジュニア・スクール内にある現代美術館であり、社会実践アートプロジェクトだ。

同館が行う共同ワークショップ、展覧会、アーティスト・レクチャー、サイトスペシフィックなコミッションを通して、生徒たちと国際的に有名な現代アーティストを結びつけるほか、生徒たちに美術館での実践や芸術分野でのキャリアについて体験的に学ぶ機会を与えている。このような知的な空間を通じて、子どもたちは信じられないようなパワーと主体性を獲得し、また世界と自分自身を見る別のレンズを手に入れている。フレッチャーとジャレットは、これほど枠にはまらないあり得ないことを実現し、社会的実践の反抗的なモデルを作り上げたのだ。

3. シェラザード・ガルビ

Photo: ©Sherazade Gharbi/Courtesy Créahmbxl, Belgium

シェラザード・ガルビは知的障がいを持つベルギーの画家、アニメーターだ。彼女の作品の多くに私はノックアウトされてしまった。その色使いは非の打ちどころがなく、とても興味深い人物の描き方をするアーティストだ。

私が初めて彼女の作品に出会ったのは、映像作家イルケ・デ・フリースとガルビによる参加型プロジェクト『The Search for Total Silence』(2023)だった。映像では、ガルビが4歳の時に障がいを持ったことや、楽園で病気が治り、結婚して4人の子どもを持つことができると信じていることが自身によって語られる。これはデ・フリースがガルビにノートを渡して書かせ、それをもとにデ・フリースがナレーションを創作したという。誰かの声をドキュメンタリーに反映させるのは難しいことで、特にその人が自分自身を表現するのが難しい場合はなおさらだ。それは、ガルビに彼女自身のストーリーを語らせるには素晴らしい方法だった。

4. オファーアップ

Photo: Courtesy OfferUp

オファーアップは、(地域コミュニティで不要になったモノなどの売買ができる)オンライン・マーケットプレイス。何が売られているかを見て気になったものがあったら売り手(見ず知らずの人)に商品についてメールで問い合わせ、最終的には、その人の家(これまで全く訪れたことのない地域の場合もある)まで品物を取りに行くという手間のかかる経験全体を、私はとても楽しんでいる。このアプリで私は、こっくりとしたオレンジ色のベルベット素材のL字型モジュラーソファを手に入れたのだが、それを手放すときにもオファーアップを使い、買い手であったコスチュームデザイナーと仲良くなった。ほかにも、おそらく2カ月にも及ぶテキストメッセージでのやり取りを経て、ガラスパネル付きのドアを買った。欲しいものを入手できなかったこともあって、それは漆塗りの食器棚。会社ではなく個人とやりとりするのは、とても楽しい経験だ。オファーアップで節約した分のお金で、より多くのものをシームレスにアマゾンで買ってしまうのは困った副産物。はあ。

5. イザベル・アルバカーキ

Photo: Photo Genevieve Hanson/Courtesy Jeffrey Deitch, New York

5月に発売される私の新作小説『All Fours』の執筆中、私はずっと友人の彫刻家、イザベル・アルバカーキ(LAを拠点に活動する1982年生まれのアーティスト)と話をしていた。彼女は精巧な作品をつくる凄まじい才能の持ち主なのだが、彼女もちょうど「Orgy for Ten People in One Body」という素晴らしい彫刻シリーズの制作中だった。私たちは本当にいろんなことを話したのだが、そのほとんどが、一回の人生や私たちが生きている構造の中では実現不可能だと思われる欲望──例えば恋愛や精神、あるいは経済的な──に関することだった。そんなわけで、『All Fours』(四つん這いという意味)は、彼女との対話から生まれたものと言える。事実、本のタイトルも、手と膝をついている首のない女性を描いた彼女の彫刻作品から付けられたもの。彼女が彫刻作品を通じて生み出す身体はすべて、動物がこの四つん這いという古典的なポーズをとる人型に変形したものだ。『All Fours』は、彼女に捧げた作品。

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