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ジョージ・コンドの新作「パステル画」展がNYの2カ所で同時開幕。2億円近い作品がほぼ完売

当代きっての人気アーティストの1人、ジョージ・コンドが紙に描いたパステル画の新作展覧会が、ニューヨークの2つの主要ギャラリーで同時開催されている。油彩画ほどではないといえ、その価格は1億円弱から2億円超。それでも飛ぶように売れている。

ジョージ・コンド Photo: Daniel Zuchnik/Getty Images

ニューヨークハウザー&ワースとスプルース・マーガスで、大人気アーティスト、ジョージ・コンドのパステル画展「George Condo: Pastels(ジョージ・コンド:パステルズ)が1月29日に同時開幕し、話題になっている。両ギャラリー合わせて大型のパステル作品が20点出展され、60万ドルから150万ドル(直近の為替レートで約9300万円〜2億3000万円、以下同)という価格にもかかわらず、ほぼ完売だという。

出展作品の大部分は、コンド特有のピカソ的なスタイルで架空の人物を描いた肖像画で、その描写のスピード感には圧倒される。中心となる約200×150cmのサイズは120万ドル(約1億8600万円)だ。なお、スプルース・マーガスの展覧会は3月1日まで、ハウザー&ワースは4月12日まで開催される。

1984年からコンドを扱っているスプルース・マーガスは、カラフルな肖像画3点、白黒の抽象画2点、やや小ぶりの肖像画(約150×100cm)3点の計8点を出展。肖像画は全て売却済みとなっている。一方、ハウザー&ワースでの展示は12点で、うち2点は他より大きく、価格は150万ドル(約2億3000万円)。ざっと計算すると、それぞれのギャラリーの合計金額は780万ドル(約12億円)と1500万ドル(約23億3000万円)に上る。

2022年の第1回フリーズ・ソウルに出展されたジョージ・コンドの油彩《Smiling Profile》(2022) Photo: Courtesy Sprüth Magers

コンドの作品はオークションでも最高価格帯に属し、アートネット・プライス・データベースによれば、2024年のオークション総売上高は3920万ドル(約61億円)。現代アーティスト(1945年から1974年の間に生まれたアーティスト)のカテゴリーで、ジャン=ミシェル・バスキアの1億8340万ドル(約284億円)と奈良美智の6120万ドル(約95億円)に次ぐ第3位にランクされた。売上高のピークである2021年の7660万ドル(約119億円)からは48.8%減だが、同時期にファインアートのオークション市場全体も38.6%減となっている。

アート市場が低迷から抜け出せないでいる今、紙を支持体とした作品に1億円弱から2億円を超える値付けは高いという声もある。たとえば、オークションに出品されたコンドの紙作品の落札額は、最高でも2018年に記録した《Tan Orgy Improvisation》の100万ドル強(約1億5500万円)だ。

あるコレクターも、当初は高すぎると思ったという。しかし、直接作品を見て、そのサイズとパステル画を超えたインパクトに感銘を受け、考え直したと話していた。実際、もし今回の作品がリネンやカンバスに書かれたものであれば、ギャラリーでの販売額は2.5倍近くになる。

ハウザー&ワースの共同社長、マーク・パイヨによると、同ギャラリーの作品は「完売しており、さらに最新作を求めるコレクターが引も切らない」状態だ。パイヨはまた、「パステルは、支持体がカンバスでも紙でも、コンドの創作活動で非常に重要な位置を占める画材です」と付け加えた。

いずれにしても、コンドの新作を手に入れるのは至難の技だ。今回のパステル画展がそれを裏付けている。

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