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約半世紀ぶりにシヴァ神像「ゴールデンボーイ」が母国タイへ。メトロポリタン美術館が正式返還

ニューヨークメトロポリタン美術館が収蔵していた11世紀の彫刻2点が、このほどタイに返還され、5月21日に正式な引き渡しセレモニーが行われた。これらの彫像は、略奪文化財の不正取引で起訴された古美術商ダグラス・ラッチフォードに関係するものとされている。

返還された約900年前のヒンドゥー教のシヴァ神像、通称「ゴールデンボーイ」。バンコクの国立博物館で引き渡し式が行われたときの様子(2024年5月21日撮影)。Photo: Manan Vatsyayana / AFP via Getty Images

ニューヨークのメトロポリタン美術館が、シヴァ神像「ゴールデンボーイ」とひざまずく女性像の2つの略奪文化財をタイに正式返還した。今回の返還は、ニューヨーク州南部地区連邦検事局と同博物館との合意により決まったもので、昨年12月にメトロポリタン美術館が発表し、5月21日にバンコクの国立博物館で行われた返還式典で引き渡された。

4月にはタイと同美術館の間で、タイ美術の研究・展示に関する文化協定の調印式が行われ、その場でも2体の彫像がお披露目されていた。

AFP通信によると、「ゴールデンボーイ」は約130cmのブロンズ像。50年ほど前にカンボジアとの国境付近で発掘されたが、古美術商のラッチフォードによって1975年に密かに国外に持ち出されている。その後は、30年あまりにわたってメトロポリタン美術館が収蔵していた。2019年にカンボジアタイから起訴されたラッチフォードは翌年死去したため公訴棄却になったが、メトロポリタン美術館は起訴を受け、ニューヨーク州の連邦検事局や関係するアジア諸国の当局者に「能動的に」連絡を取ったという。

タイのプノンブートラ・チャンドラチョーティ美術局長は引き渡し式で「貴重な文化財を取り戻せたことを誇りに思います。これらの彫像は、永遠に母国に留まらなければなりません」と述べ、その後の記者会見で次のように付け加えた。

「しかし、略奪品返還の努力はここで終わりではありません。全てを取り戻すことが目標です」(翻訳:石井佳子)

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