ゲッティイメージズが独自の生成AIツールをリリース。著作権問題は回避できるのか?
シアトルに本社を置くゲッティイメージズは9月25日、同社が有する広範なデジタルメディアのコレクションから画像を生成する独自の人工知能ツールをリリースした。
ゲッティイメージズ(以下ゲッティ)は、ハイテク大手Nvidiaと提携して開発したソフトウェア「Generative AI by Getty Images」をリリースし、生成AI市場に参入することを発表した。同社は何百万枚ものニュース画像、ストック画像、アーカイブ画像の所有権を持つため、これまでAI企業を悩ませてきた著作権問題を回避することができるとしている。
この新ツールの開発は、ゲッティが保有する1200万枚以上の写真を使用してAIを訓練したとして同社が画像生成AI「Stable Diffusion」の開発元、Stability AIを訴えた裁判が開始する前に着手したという。この訴訟は現在も進行中だ。
ゲッティのCEO、クレイグ・ピーターズは声明の中で、新しいAIツールを「商業的に安全」であると胸を張った。曰く、ジェネレーターには同社のニュースコレクションの画像は使用せず、代わりに同社の膨大なクリエイティブ・ライブラリのみを利用して生成モデルを作成するという。これは、ディープフェイク(誤った情報を広めるために使われる改変メディアの一種)の配布を避けるためであり、ゲッティの画像ジェネレーターは、同社が複製権を持たない画像や商標登録されている画像をユーザーが使用できない仕様になっているという。
また同社は、新しいAIモデルを開発するためのデータとして作品が使用された提供アーティストには、補償する予定であるとも述べている。昨年来、数多くのアーティストやデジタルメディアのクリエイターが、AI技術の開発やトレーニングにおける画像や作品の無断使用をめぐって、生成AIを展開する企業を訴えてきた。その最たる例が、Stability AI、Midjourney、DeviantArtの著作権侵害を訴えたアーティストたちによる集団訴訟で、7月には裁判官が訴えを退ける可能性が高いとみられていたが、まだ判決は出ていない。
ピーターズは、競合各社が展開する生成AIは、インターネット上でオープンソース化された無許諾の画像をもとに開発されていることから、現在の状況はユーザーにとって「地雷原」であると語り、一方で、同社の「Generative AI by Getty Images」はユーザーにとって、より「商業的に実現可能な」選択肢であると絶賛した。さらに、このツールの収益分配モデルが、ソフトウェアに作品が使用されるアーティストに有利に働くことはあり得ないとする他のテクノロジー企業による主張を「覆す」ものであると付け加えている。
from ARTnews