マドンナも大ファン、レンピッカ黄金期の絵画が40年振りにオークションへ。予想落札額は15億円

アール・デコを象徴する画家、タマラ・ド・レンピッカ(1898-1980)が最盛期に描いた《ブカール博士の肖像》(1928)が40年振りにオークションに登場することが分かった。予想落札額は618万から989万ドル(約9億5300万円~約15億2500万円)だが、近年のレンピッカ作品への注目の高まりに記録的な価格になると予想されている。

タマラ・ド・レンピッカ《ブカール博士の肖像》(1928)Photo: courtesy of Christies’ Images LTD. 2025

ロシア帝国支配下のポーランド・ワルシャワに生まれ、アール・デコ様式の作品で知られた画家タマラ・ド・レンピッカ。彼女が1928年に制作した《ブカール博士の肖像》がクリスティーズ・ロンドンのオークションに40年振りに出品されることが分かった。アートネットが伝えた。

昨年はレンピッカの生涯を描いたミュージカルがブロードウェイで上演され、同年の8月から今年の2月9日まで、サンフランシスコのデ・ヤング美術館でアメリカで初となるレンピッカの大規模な回顧展が開催されるなど、近年レンピッカへの注目が集まっている。その中でも歌手のマドンナは長年のレンピッカコレクターとして知られており、総作品数は明かしていないものの、1990年のヴァニティ・フェア誌のインタビューでは「(コレクションは)美術館が開けるほど大量にある」と明かしている。最近では、2023年のコンサートの舞台美術に自身のレンピッカ作品を採用した

3月5日、クリスティーズ・ロンドンのオークションに出品される《ブカール博士の肖像》は、現在も販売されているプロバイオティクスの整腸剤「ラクテオール」を開発した医師で細菌学者のピエール・ブカールの依頼で制作されたもので、ブカールと仕事道具である顕微鏡と試験管が、キュビスムの影響を受けた劇的な背景とともに描かれている。同作について、クリスティーズ・ヨーロッパ会長のジョバンナ・ベルタッツォーニは、「レンピッカは、博士をまるでフィルム・ノワールの俳優のように派手で魅力的に描き出しました。実際には白衣を着ているのですが、あえてトレンチコートのデザインに変えています。それが驚くほど魅惑的な雰囲気を醸し出しています」と評した。

この作品の予想落札額は618万から989万ドル(約9億5300万円~約15億2500万円)。アートネットのプライス・データベースによると、レンピッカ作品の最高落札額は、2020年2月にクリスティーズ・ロンドンで2116万ドル(約32億6000万円)で落札された《マージョリー・フェリーの肖像》(1932)だ。注目すべきは、2018年から20年にかけて立て続けにレンピッカの最高額を更新しているという点で、最高額上位6作品は全て過去7年間に取引されている。現在の最高額は2011年の最高額848万ドル(現在の為替で約13億円)から実に約150パーセント上昇している。男性の肖像画で見ると、最高額は2012年にクリスティーズ・ニューヨークで456万ドル(同・約7億円)で落札された《アッフリト侯爵の肖像》(1925)で、今回この価格は超えるだろう。

ベルタッツォーニは、《ブカール博士の肖像》が男性の肖像画としては記録的な価格になると予想している。その理由について、「この作品は、彼女の全盛期に描かれています。レンピッカは伝説であり、彼女が描いた人々は全て、非常にコレクターの関心を集めているのです」と話す。さらに、「デ・ヤング美術館でのレンピッカの回顧展が終了し、ヒューストン美術館に巡回するというタイミングでオークションに出品されるというのも、まさに時代の空気を捉えています」と強調した。

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