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元恋人が「極端な暴力」と「激しい感情操作」を受けたと告発。ケヒンデ・ワイリーに再び性的暴行疑惑

ケヒンデ・ワイリーから過去に性的暴行を受けたとする人物が現れ、ワイリーが否定する出来事が2024年5月にあったが、6月10日、2人目の被害者を名乗る人物がインスタグラムに告発文を投稿した。

2023年11月14日、ヒューストン美術館で開催された自身の個展「An Archeology of Silence」に訪れたケヒンデ・ワイリー。Photo: Karen Warren/Houston Chronicle via Getty Images

オールドマスターの肖像画の技法を使って黒人を描いた作品で知られるアメリカの人気画家、ケヒンデ・ワイリーに、 2度目の性的暴行疑惑が浮上した。

ワイリーをめぐっては、2024年5月、ガーナを拠点とするアーティスト、ミュージシャン、キュレーターのジョセフ・アワ=ダルコが2021年にワイリーから性的暴行を受けたとインスタグラムに投稿し、物議を醸していた。ワイリーはそれに対して次のように否定している。

「私が短い間、合意の上で関係を持った相手が、一緒に過ごした時間について虚偽の、不穏な、中傷的な告発をしています。私はこれらの主張に深く傷いており、真実を明らかにして私の汚名をそそぐためにあらゆる法的手段を追求するつもりです」

だが6月10日、ワイリーから性的暴行を受けたと主張する2人目の人物が現れた。それはブラック・ライブズ・マターの有名な活動家で、社会正義を掲げる非営利団体「ウォリアーズ・イン・ザ・ガーデン」の事務局長であるデリック・イングラムだ。彼はアワ=ダルコと同じくインスタグラムの画像部分に文章を掲載し、その中で、ワイリーと交際していた2021年のおよそ4カ月のあいだに、ワイリーのソーホーのマンションで「非同意の性行為」に加えて「極端な暴力」、「激しい感情操作」を受けたと明かした。

またイングラムは、投稿のテキスト部分でも、ワイリーの名前は書かれていないものの「私が最も弱く傷ついていた時期につけ入った略奪者。今日、私は自分の力を取り戻します。私の過去は自慢できるものではなく、これまで多くの恥を背負ってきました。でも、私はもう被害者になることを拒否します」と非難した。そして、「この略奪者の全ての被害者たちへ、私はもっと多くの被害者がいると確信しています。あなたは一人ではありません」というメッセージとともに、アワ=ダルコの告発の投稿にリンクを付けた。2人はいずれもワイリーに対する法的措置を検討している。

イングラムの主張について、ワイリー側にUS版ARTnewsが取材したところ、彼の弁護士ジェニファー・バレットはイングラムとワイリーが 「一度だけ合意の上で逢瀬をした 」と認めた上で、次のように否定した。

「(イングラムの主張には)証拠がありませんし、インスタグラムに投稿しても、それが真実にはなりません。しかし、今日の世界では、誰でもたった1度の投稿であからさまな嘘を広めることができ、世間はそれを額面通りに受け入れるのです」

バレットは、アワ=ダルコの主張についても「事実無根」と改めて否定し、次のように語った。

「この人物は1年以上にわたってワイリーを追いかけ、交際を迫ったが失敗に終わりました。最近この人物はアプローチを変え、SNSのフォロワーからワイリーに対する訴訟資金の寄付を募り、ほかの人たちにも自身の告発に追随するよう勧めています。 彼の努力の結果、もう1人、数年前に1度だけ合意の上でワイリーと逢い、その後、より深い関係を求めて何カ月間も彼にロマンチックなメールを送り続けた人物が現れたのです」

イングラムの投稿には1日足らずで4900もの「いいね!」が寄せられた。これは、人々のケヒンデ・ワイリーに対する高い関心の現れでもある。2022年のニューヨーカー誌のプロフィールによれば、ワイリーは「世界のブラックカルチャーにおいて最も影響力のある人物のひとり」であり、彼が2019年にセネガルに設立したアーティスト・レジデンス・プログラム「ブラック・ロック・セネガル」のおかげで「アート界の重心はアフリカに移りつつある」と評されている。

また、2023年にサンフランシスコ美術館で開催された個展「Kehinde Wiley: An Archaeology of Silence」は大成功を収め、大勢の観客を集めた。同展はその後ヒューストン美術館に巡回し、2025年にはマイアミのペレス美術館とミネアポリス美術館での開催も予定しているという。(翻訳:編集部)

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