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  • 2024.05.20

ケヒンデ・ワイリーが性的暴行か。ガーナのアーティストがインスタグラムで告発

5月19日、ガーナ在住のアーティスト、ジョセフ・アワ=ダルコが、インスタグラムの投稿で画家ケヒンデ・ワイリーが2021年に性的暴行を行ったとする告発文を投稿。ワイリーはこれを否定している。

2022年10月24日、カタール、ドーハで開催されたナオミ・キャンベルによるアートとファッションの展覧会「EMERGE」の発表会に出席したケヒンデ・ワイリー。Photo: David M. Benett/Dave Benett/Getty Images for EM

ケヒンデ・ワイリーの性的暴行をインスタグラムで告発したのは、ガーナを拠点とするアーティスト、ミュージシャン、キュレーターのジョセフ・アワ=ダルコ。彼はアフリカとディアスポラの現代美術のコレクターでもあり、2020年にはガーナ初のレジデンス・プログラム「ノルドール・アーティスト・レジデンス・プログラム」を設立、その翌年に私設美術館「インスティテュート・ミュージアム・オブ・ガーナ」をオープンさせた。また、2023年にサザビーズとイスラエルのオリム・コレクションが共同開催した現代アフリカ美術の展覧会もキュレーションしている。地元メディアのGhanaWebによれば、アワ=ダルコの家はガーナで最も裕福な一族のひとつで、その純資産は6億5000万ドル(約1013億円)だという。

ケヒンデ・ワイリーはロサンゼルス生まれで、ニューヨークを拠点に活動する人気画家。オールドマスター絵画の手法で現代の黒人男女を描く特徴的なスタイルで知られており、2017年にバラク・オバマの公式肖像画を描いたことで一躍世界に知られることとなった。現在も多くの美術館から注目されている。

アワ=ダルコの告発文によると、2021年6月9日、「ノルドール・アーティスト・レジデンシー」の中で開催されたワイリーの名誉を称える夕食会で、彼はアワ=ダルコに2度性的暴行を加えたという。1回目は、アワ=ダルコがワイリーともう1人のゲストをトイレに案内していたときに尻を触られたという。その時アワ=ダルコは、「気まずいユーモアで」その場をおさめたという。しかしその後、夜遅くに、ワイリーが彼に「もっと深刻で、暴力的な」行為を行ったというが、その詳細は明かさなかった。

3年の時を経た今、告発した理由については、ワイリーが同性愛者であることと、ガーナでは反LGBTQ+の風潮があることから、公表することが難しかったと明かした。そして彼は、「私の辛い経験について語る言葉と率直な行動が、他の(同じような被害を受けた)人たちが名乗り出る力になればと思った。事件の全ての解明が、状況の説明だけでなく、他の被害者への補償と癒しへの道筋を作ることを願っている」と話した。

アワ=ダルコの投稿が公開されて間もなく、ケヒンデ・ワイリーは自身のインスタグラムで、行為は「合意の上だった」と反論した。ワイリーが各所に電子メールで送った声明には、アワ=ダルコの主張は「深く傷つく」ものであり、「真実を明るみに出すためにあらゆる法的手段を追求する」と書かれている。詳細は以下の通りだ。

「私が短い間、合意の上で関係を持った相手が、一緒に過ごした時間について虚偽の、不穏な、中傷的な告発をしています。私はこれらの主張に深く傷いており、真実を明らかにして私の汚名をそそぐためにあらゆる法的手段を追求するつもりです」

「このような主張は、性的虐待の被害者全員に対する仕打ちでもあります。なぜ彼が私を標的にしたのか、全く分かりません。なぜなら私たちが出会ってから、私の方に歩み寄って来たのは彼だからです。例えば私の誕生日パーティーに出席するために飛行機でナイジェリアに来たり、ニューヨーク北部の私の家を訪ねようとしたり、温かく心のこもったメールを送ってくれたり、そして1年前、サンフランシスコのデ・ヤング美術館で開催された私の個展にも来てくれました。その時彼は、『親愛なる友人の展覧会は、息をのむほど素晴らしかった』とインスタグラムに投稿してくれました。彼はインスタグラムで精神疾患と闘っていると明かしています。彼がどんな状況であれ、助けを得られることを願っています」

それに対して、5月19日にUS版ARTnewsがインスタグラムのダイレクトメールを通じて行った取材でアワ=ダルコは、ワイリーの声明に以下のように反論した。

「私は何年もセラピーに通っており、ワイリーによる暴行という辛い現実を受け入れることができたのは、2023年10月下旬、ギャラリストである親友のひとりに打ち明けたときでした」

2人の関係についてのワイリーの説明は、性的暴行の事実と矛盾するものではないと主張。以下のように語った。

「彼による虐待行為を認識する前、2人の関係は友好的で真心がこもったものでした。彼は『他の被害者』と同じように、私をワイリーの誕生日パーティーに招待してくれましたし、会う予定について語り合ったりもしました。しかしここで重要なのは、『性犯罪者は見ず知らずの他人である』という誤解を訂正することです。報告されている性的虐待事件のほぼ90%以上が、被害者が加害者の親しい間柄や、家族や友人であったという調査結果があります(性的暴行撲滅に焦点を当てた非営利団体RAINNは、この数字を80%と見積もっている)。私は健全な精神の持ち主で、誠実に証言しています」

そしてアワ=ダルコは、「積極的に法的措置を求める」とも語った。2024年3月、アワ=ダルコはインスタグラムへの投稿で、「私より地位が上の人物」による性的暴行の経験について言及したが、その時はワイリーを名指ししていなかった。この投稿で彼は、「予想される弁護士費用」として20万ドル(約3115万円)を目標に寄付を募っている。

US版ARTnewsはワイリーの代理人を務めるショーン・ケリーとロバーツ・プロジェクツ社にコメントを求めたが返事はなく、彼が設立した団体、ブラック・ロック・セネガルはコメントを拒否した。(翻訳:編集部)

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