フロリダ州が芸術文化の予算を51億円カット。多数の芸術・文化施設が財政難に陥る可能性
フロリダ州の2025年度予算案が6月中旬に可決されたが、芸術文化振興に対する予算およそ51億円を削減すると、州知事のロン・デサンティスが発表。これによって文化施設は資金難に直面することが決定的となり、政府に対して「大きな失望と困惑を感じる」と非難の声が上がっている。
日刊紙タンパベイ・タイムズによれば、フロリダ州知事のロン・デサンティスは、芸術文化活動に対する3200万ドル(約51億1100万円)の助成金を2025年度予算に組み込むことに対し、拒否権を行使した。これは、デサンティスが1165億ドル(約18兆6000億円)の予算案を成立させる前に削減した10億ドル(約1600億円)の一部であり、今回の予算削減によって、タンパベイをはじめとする文化施設が多大な損害を被ることとなる。
タンパで開催した記者会見中に予算案に署名したデサンティスは、州の芸術文化助成プログラムを削減した理由を特に説明しなかった。しかし、支出を削減し「税をあてがうに値しない」と判断した項目への資金提供を将来的に避けていきたい、という考えは会見中に示していた。
予算が削減されたことで、州内における芸術・文化施設の未来には暗雲が漂っている。タンパ美術館館長を務めるマイケル・トモアはタンパベイ・タイムズに対し、「大きな失望を感じると同時に困惑している」と語っている。美術館側は施設の拡張工事の資金として50万ドル(約8000万円)、そして教育プログラムを充実させるために7万500ドル(約1100万円)の総額57万500ドル(約9100万円)を政府から受け取ることを想定していたというが、州からの助成金はこれによってゼロになってしまった。
また、地域のアーティストたちを支援するタンパの非営利団体「Creative Pinellas」のチーフ・エグゼクティブを務めるマーガレット・マレーは、地元の音楽団体や演劇集団、青少年プログラム、そしてアートフェスティバルが直面する資金難から立ち直ることは難しいと推測する。「文化的活動に対する支出が完全に断ち切られるなんて、芸術関係の仕事をしてきたなかで、ピネラス郡でも、どこの地域でも未だかつて経験したことがありません」
「FreeFall Theater」は、これによって即座に財政難に陥る可能性がある団体の一つだ。この団体は、10万5000ドル(約1700万円)の助成金を州から支給されることを想定していたという。また、ローリーパーク動物園は、州からの50万ドル(約8000万円)の補助金を、総額1億2500万ドル(約200億円)の拡張工事の一部に組み込まれたマナティ救護生息地のために使用する算段だった。いずれの団体も、助成金や寄付金は政府以外から得ているというが、予算削減により、他の資金源を見つける必要に迫られている。
フロリダ州下院議員のアナ・エスカマニをはじめとする一部の民主党議員は、この予算削減を非難しており、エスカマニは次のような声明を発表した。「文化や芸術に対する予算削減は、文化施設によるこれまでの貢献を軽視していることを意味し、州の経済は活力を失うこととなるだろう」
ほかにも、芸術啓蒙団体「Florida Cultural Alliance」の上層部もこの決定を非難しており、今回の予算削減は「これまでの助成金プログラム史上、前例のないことだ」と指摘している。(翻訳:編集部)
from ARTnews