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訃報:Take Ninagawaの共同創設者でアーティストの竹崎和征が急逝。NYでの初個展からわずか数週間後

霞んだ風景画で知られる画家、竹崎和征が6月22日、心臓発作のため48歳で亡くなった。所属ギャラリーのMisako & Rosenが6月25日に発表した。

ニューヨークでは初個展となった47カナルで設営中の竹崎和征。Photo: Courtesy Misako & Rosen

6月22日に急逝した画家の竹崎和征は、ニューヨークでは初となる47カナル・ギャラリーでの大規模個展を今年6月8日に終えたばかりだった。同展では、彼が拠点としていた日本の香川県丸亀市の風景を画題にした作品が展示されていた。

あらゆるフォルムが溶けて抽象化したような竹崎の絵画は、人間による産業介入が丸亀という場所に与える脅威を物語っている。47カナルのアンドリュー・マークルは竹崎の個展に際し、「竹崎の表現は、絶えず移り変わる環境に対して開かれた窓であり、深遠であると同時に儚さをもつ。それは、時間、記憶、主体と客体の間の多孔質な重なりについての考察でもある」とステートメントに記している。

1976年に高知県で生まれた竹崎は、1999年に高知大学を卒業すると拠点を東京に移すが、以後も故郷は彼の大いなるインスピレーションであり続けた。2008年にMisako & Rosenで開催された展覧会で、彼は、「この町の中の自然と人工の組み合わせは、可能性に満ち、私の想像力を駆り立てる」と書いている。

Kazuyuki Takezaki《Board / Table》2023 Photo: Courtesy Misako & Rosen, Tokyo, and 47 Canal, New York

ニューヨークのイヴォン・ランバートをはじめ世界の一流ギャラリーのグループ展に参加し、その評価を確立していった竹崎だが、とりわけ日本のアートシーンにおける大きな功績は、自身が東京・恵比寿のアパートの一室で立ち上げたギャラリー、Takefloor(のちにTake Ninagawaに改名)だろう。ジェフリー・ローゼンは、Takefloorが日本のアートシーンにおける実験的アートの触媒の役割を果たしたと評価し、それがMisako & Rosen創設のきっかけにもなったという。ローゼンは2015年、Artspaceの取材に対し、竹崎のギャラリーは「私たちの世代に、自分たちのギャラリーを持つ勇気を与えてくれた」と語っている。

竹崎とともにTake Ninagawaを立ち上げた蜷川敦子は、インスタグラムを通じてこう追悼している

「アーティストのために負荷を背負い、バウンダリーを押し広げ、日本のアートシーンをより良い場所に、アージェンシーを持って取り組むことをミッションに掲げながら、一人ではできなくても二人、三人ならできるかもしれないと、その一役を担うことを共に夢見ながらTake Ninagawaを立ち上げました」

東京での活動を経て帰郷した竹崎は、その後、拠点を丸亀に移した。丸亀では、板にキャンバスを貼り、それを持って郊外をドライブしながら、丸亀の山や木々を眺め、目にしたものを素早くオイルスティックで描いていく「ボード/テーブル」シリーズの制作を始めた。それは、自然の移ろいを永遠に留め置くための行為でもあった。これらの作品のいくつかは、前述の47カナルでの展示や、2023年にミルウォーキーのグリーン・アート・ギャラリーで開催された竹崎のアメリカ初の個展でも紹介された。

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