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有名考古学者が《モナリザ》のイタリアへの返還協力を示唆。「略奪美術品の中でもこの作品は最重要」

エジプト学の権威と言われる考古学者、ザヒ・ハワスが、レオナルド・ダ・ヴィンチによる《モナ・リザ》のイタリアへの返還を確実にするため、イタリア文化省と協力すると発言して話題になっている。

2023年3月、エジプト・ギザのクフ王のピラミッドで新通路を発見したことを発表するエジプトの元考古大臣、ザヒ・ハワス。Photo: Fareed Kotb/Anadolu Agency via Getty Images

ザヒ・ハワスは、世界で最も有名な考古学者と目される人物であり、エジプト考古最高評議会の事務局長を経て、2011年には同国の考古大臣を務めた。アートニュースペーパーが報じたところによると、イタリア・ウンブリア州オルヴィエートで開催された文学祭「イゾラ・デル・リブロ」に関連して行われたイタリアの新聞社によるインタビューの中で、そのハワスが、レオナルド・ダ・ヴィンチによる《モナリザ》のイタリアへの返還を確実にするためイタリア文化省と協力すると発言したという。

強硬な「出土国主義者」としても知られるハワスはまた、「イタリアから略奪された美術品の中でも『ラ・ジョコンダ(モナ・リザのイタリアでの別称)』は最重要作品です。この作品はイタリアに返還されなければなりません」と語った。加えて、これまで何度も繰り返してきた主張を再び繰り返したという。

大英博物館にあるロゼッタ・ストーン、ベルリンの新博物館が所蔵する古代エジプト王妃ネフェルティティの胸像、そしてルーブル美術館にあるデンデラの黄道帯の3つのエジプト財宝も、生まれ故郷に返還されるべきです」

ハワスはその後、自身のFacebookで《モナリザ》返還についての自身の発言を否定するコメントを投稿したが、新聞社に対する彼の発言が過去数十年にわたってくすぶっていた同作品をめぐる世界的な議論に火をつけたのは間違いない。同作品は、1503年にフィレンツェの裕福な絹商人フランチェスコ・デル・ジョコンドの依頼によってダ・ヴィンチが制作を開始し、その後1516年に移住したフランスで完成させたと考えられている。そして1519年にダ・ヴィンチが逝去した後、フランス国王フランソワ1世が同作品を購入したというのが通説だ。一方、ナポレオンが1796年から1797年のイタリア遠征中にこの絵画を盗んだという説もあり、これがイタリアへの返還を求める声の高まりに拍車をかけている。

今年4月には、ダ・ヴィンチの相続人の代理人だと主張する団体「International Restitutions」がフランス国務院に対し、《モナリザ》を返還するよう訴えていたが、翌月、国務院はこの訴えを却下した。

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