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ロシアと米欧の歴史的囚人交換が実現。ウクライナ侵攻を糾弾したロシア人アーティストも釈放

8月1日、ロシア政府とアメリカ政府などの間で16人の受刑者が交換された。その中に、ロシアのウクライナ侵攻に反対して2022年に逮捕されたアーティスト、サーシャ・スコチレンコの名もあった。

ロシアの裁判所で実刑判決を受けた際のサーシャ・スコチレンコ。Photo: AFP via Getty Images

アメリカ、ドイツ、ロシア間で8月1日、16人の受刑者の交換が行われた。ロシアに収監されていたアメリカ人ジャーナリストのエヴァン・ガーシュコヴィッチを含む8人が、西側諸国で収監されていたロシア人受刑者と交換されたが、その中には、ベルリンで、チェチェン出身の男性を殺害したロシアの暗殺者、ヴァディム・クラシコフや諜報機関の関係者も含まれている。

この交換は、アメリカとロシア間の何年にもわたる交渉の末に成立したものだ。受刑者たちは、仲介国であるトルコのアンカラの空港で交換された。交換されるメンバーにはロシアの野党指導者アレクセイ・ナヴァルニーも含まれるはずだったが、彼は合意成立前に北極圏の刑務所で死亡した。

また、ロシアに収監されていた受刑者の中には、サンクトペテルブルク出身のアーティスト、サーシャ・スコチレンコの名があった。彼女は2022年初頭にロシアがウクライナに侵攻した直後、地元のスーパーマーケットのラベルを「ロシア軍は、400人の住民が避難していたマリウポリの美術学校を爆撃した」などという反戦メッセージに貼り替えて抗議するなど、プーチン政権下で言論の自由がいかに奪われているかを訴えていた。

2023年に行われた公判に鮮やかなタイダイのシャツを着て出廷したスコチレンコは、「私は自分の意見と真実を貫く」と主張。同年11月、「ロシア軍に関する虚偽の情報を故意に流布した」罪で7年の実刑判決が下された際も、笑顔に手ハートで元気な姿をアピールしていたが、彼女の支持者たちは、スコチレンコに心臓病などの持病があるとしてロシア当局に釈放を求めていた

スコチレンコと一緒に、25年の実刑判決を受けていたアメリカのグリーンカード保持者であるロシア系イギリス人ジャーナリストのウラジミール・カラ=ムルザも釈放された。彼らは同日、トルコからドイツのケルンに移動した。

ロシアのウクライナ侵攻に反対した多くのロシア人アーティストが、現在もロシアの刑務所で服役している。 サンクトペテルブルク出身のアーティスト、アナスタシア・デューダエワとその夫は、反ロシアのスローガンを書いたナプキンをスーパーマーケットに置いた罪で有罪となった。また、シベリア出身のアニメ・アーティスト、タチアナ・ラレティナは、ウクライナの財団に30ドル(現在の為替で約4300円)を寄付したとして「国家反逆罪」に問われ、9年の実刑判決を受けている。(翻訳:編集部)

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