今週末に見たいアートイベントTOP5: 畠山直哉が新旧2シリーズを公開、気鋭の作家イ・ヒョヌが見せる新たな表現
関東地方の美術館・ギャラリーを中心に、現在開催されている展覧会の中でも特におすすめの展示をピックアップ! アートな週末を楽しもう!
1. 空想旅行案内人 ジャン=ミッシェル・フォロン(東京ステーションギャラリー)
30年ぶりの大回顧展。230点でその創作を辿る
20世紀後半のベルギーを代表するアーティストであるジャン=ミッシェル・フォロン(1934‐2005)。彼の晩年の立体作品までを含めた約230点を紹介する、日本では30年ぶりの大回顧展。
1960年代には雑誌「エスクァイア」や「ザ・ニューヨーカー」の表紙を飾るなど注目を集めたほか、版画や水彩画、ポスター、文学作品の挿絵や舞台美術など活動は多岐にわたる。色彩豊かで幻想的な詩情を湛えつつ、環境破壊や人権問題への告発を秘めたフォロンの芸術から、デジタル化やパンデミック、戦争など、社会的に大きな曲がり角にある現代の私たちに通じるメッセージを読み取ることができるだろう。
空想旅行案内人 ジャン=ミッシェル・フォロン
会期:7月13日(土)〜9月23日(月)
場所:東京ステーションギャラリー(東京都千代田区丸の内1-9-1)
時間: 10:00~18:00(金曜は20:00まで、入館は30分前まで)
休館日:月曜(祝日は除く)
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2. ACARDIUS by Hyunwoo Lee(DIESEL ART GALLERY)
イ・ヒョヌが生み出す新たな存在「無心体」とは
1994年韓国・ソウル生まれのアーティスト、イ・ヒョヌはオブジェクトの社会的文脈、機能、意味が集約された結果として生まれるイメージを追求している。
本展で展示されているのは「無心体」と呼ばれる手術を待つオブジェである。横たわったままで、さらには身体の部位までもはっきりとしていない存在は、なにかに没入している状態として表現されている。彫って刻む「彫刻」という行為と、身体として立つ「立体」に思考を巡らせた結果、寡黙な対象を黙々と作っているのだ。また、会場では展覧会のために作られた限定グッズや、DIESELとコラボレーションによるTシャツも販売している。
ACARDIUS by Hyunwoo Lee
会期:8月23日(金)〜10月23日(水)
場所: DIESEL ART GALLERY(東京都渋谷区渋谷1-23-16)
時間: 11:30〜20:00
休館日:無休
3. 熊谷直子 写真展「レテに浮かんで」(book obscura)
喪失を経て、作家の目は世界をどのように捉えたのか
写真家・熊谷直子は商業写真、特にポートレイトにおいて、人物の内面の核を片手で掴み取るような写真表現を追求している。
本展は熊谷の2冊目となる作品集『レテに浮かんで』刊行を記念して開催される。東日本大震災後の宮城県気仙沼の人々や認知症を患う母親を被写体として撮影し、1冊目の作品集『赤い河』を発表した熊谷。そこから7年という月日の中でコロナ禍があり母がこの世を去り、生家が更地になり、友との別れも経験するなどこれまで立脚してきた「関係」そのものが失われ、形を変えた。喪失のあとで、作家の目は世界をどのように捉えたのか。「そこに何が写っているか」を超えた「固有の目」の置きどころにこそ写真という表現の本質が存在するのだということを存分に伝えてくれる傑作の数々を紹介する。
熊谷直子 写真展「レテに浮かんで」
会期:8月29日(木)〜9月23日(月)
場所:book obscura (三鷹市井の頭4-21-5)
時間:12:00〜19:00
休館日:火曜・水曜
4. 畠山直哉 「津波の木」(タカ・イシイギャラリー)
津波との関係性をめぐる風景を捉えた2シリーズを展示
岩手県生まれの写真家、畠山直哉の作品は、自然・都市・写真の関わり合いに主眼を置き緻密に作り上げられながら、豊かな詩情をもって鑑賞者に届けていることで世界的に高い評価を得ている。
本展では、東日本大震災で実家と母親を亡くした畠山が、津波の痕跡をとどめる樹木や風景を記録した作品群「津波の木」から10点、新作の「Kochi」より、高知県を舞台に県内各地の津波避難タワーを被写体とし、それらが日常の生活環境に組み込まれる様相を浮かび上がらせる作品30点を展示する。
畠山直哉 「津波の木」
会期:8月31日(土)〜 9月28日(土)
場所:タカ・イシイギャラリー(東京都港区六本木6-5-24)
時間:12:00 〜19:00
休館日:日月祝
5. みちのおくの芸術祭 山形ビエンナーレ2024(蔵王温泉、東北芸術工科大学)
山形の大自然の中で「いのちをうたう」芸術祭
2014年にスタートし、6回目となる「みちのおくの芸術祭 山形ビエンナーレ」。今年は初めて蔵王温泉と東北芸術工科大学を会場に開催する。テーマは「いのちをうたう」。地球の熱エネルギーを蓄え、いのちを育む場所としてその歴史を刻んできた蔵王温泉と、山形県南村山郡金瓶村に生まれ、医師として働く一方で17冊の歌集を発表し近代文学に大きな足跡を残した歌人・斎藤茂吉(1882-1953)にちなんだ。
ビエンナーレでは、周遊型の展覧会とパフォーマンス「ひとひのうた」、蔵王の自然が舞台の五感を呼び覚ます体験型アートイベント「山と土と茶と」、時代とともに変遷する蔵王のすがたを辿る展覧会「現代山形考」、東北芸工大のクリエイティブ講座「夏芸大」が開催される。参加作家は、渋谷七奈、伊藤紺、池上恵一、春原直人、永岡大輔など。
みちのおくの芸術祭 山形ビエンナーレ2024
会期:9月1日(日)〜9月16日(月・祝)
場所:蔵王温泉(山形県山形市蔵王温泉)、東北芸術工科大学(山形県山形市上桜田3-4-5)
時間:会場により異なる
休館日:無休