メゾン マルジェラ「5AC」バッグをNerhol、BIENらがハック! メゾンの「コード」と共鳴する作品を発表
メゾン マルジェラのシグネチャーバッグである「5AC」を4組の日本人アーティストが再解釈するハッキングプロジェクトが発表され、10月17日まで東京・表参道のメゾン マルジェラ オモテサンドウで展示されている。
ジョン・ガリアーノによるメゾン マルジェラの代名詞的存在であるバッグ「5AC」は、2016年に彼がクリエイティブ・ディレクターに就任後、初めて手掛けたバッグコレクションだ。メゾンのコードである「アノニミティ・オブ・ザ・ライニング(ライニングの匿名性)」という考え方が適用されたこのバッグは、通常は外からは見えないライニングが、「デザインや機能として第2の用途を見い出す」という意図のもと、バッグの開口部から意図的にはみ出ているデザインが特徴だ。
この「5AC」を、4組の日本人アーティストが再解釈して「Hack(システムに侵入して改変)」するプロジェクト、その名も「ハッキングプロジェクト」が発表された。起用されたアーティストは、メディウムもアプローチもそれぞれに異なる、Nerhol、大竹笙子、BIEN、NUNO | we+の4組だ。
Nerhol《Canvas (Nusa)》
グラフィックデザイナーの田中義久と彫刻家の飯田竜太によるアーティストデュオ、Nerholは連続写真を積層させ、彫刻する作品で評価を確立している。彼らは近年、絵画の象徴的存在である「カンバス」の起源を辿り、麻の紙を用いた作品制作にも取り組んでいる。そうしたシリーズの延長線上にあると言える今回の作品でも、2人は職人の協力を得て貴重な大麻の繊維で紙を漉き、その紙を細切りし、紙を撚って糸にし、それを織機で織り100%麻の紙のカンバスを作り上げ、さらにカンバスの表面を穴が開くほど擦り、削りとって、牛の膠を塗り重ねた。展示では、この気が遠くなるほどのプロセスを経たカンバスの向こう側に「5AC」を配置。バッグと作品の概念を重ね合わせた。
大竹笙子《HACKED PATCHED》
木版画を主なメディウムとし、日常で目にした情景を具現化する大竹は、種類の異なるファブリックに「5AC」をはじめとする様々なモチーフを刷り、ファブリックをつなぎ合わせた力強い作品を発表。頭の中が何者かにハッキングされることで出現したイメージが継ぎ接ぎされ、増殖していく様子を表現したという。ひとつのアイテムの中に異なるピースを融合させることで、それぞれの機能や物語の記憶を呼び起こし、マッシュアップし、新たな価値を引き出すこの作品は、メゾン マルジェラの「メモリー・オブ」と呼ばれるコードにも重なる。作品中央には、パッチワーク布で包まれた「5AC」が隠れている。
BIEN《Visible observation for 5AC》
ドローイングを中心としながらも様々な表現を手掛けるBIENは、複数のMDF彫刻と「5AC」マイクロからなるインスタレーションを発表した。木材チップを原料として成型された板であるMDFを幾層にも重ねて作られた彫刻は、正面のみならず、様々な角度から眺めることが想定されている。正面は黒の塗料が吹きかけられているが、その塗料はときに側面にもはみ出していて、「表面からは通常見えない部分」「物事には様々な側面があるけれども、それを一様には捉えられないこと」にも光が当てられている。これらの彫刻に交じって並べられた「5AC」もまた、その名称を外してしまえば、彫刻作品と同様に実は一義的なジャンルで分けられない何か得体の知れないものであり、異物としてそこに再び現れることが意図されている。
NUNO | we+《回転するキューブ - Inverse Equation》
「NUNO | we+」は、日本国内で布づくりを行う須藤玲子率いるテキスタイルデザインスタジオ、NUNO と、林登志也と安藤北斗が設立したコンテンポラリーデザインスタジオwe+が2022年12月より始動させた協働プロジェクト。彼らは、天井からつるされた刺繍布を張った四角いキューブの中に「5AC」を収めた。バッグを作品で包み込むことで、「ベーシックなコードを反転させる」というメゾン マルジェラの哲学をトレースする。キューブは閉じられた空間でありながら、回転することで無限に広がる世界へと人々を誘う。
Maison Margiela The 5AC Hacking Project
会期:10月3日(木)〜17日(木)
場所: メゾン マルジェラ オモテサンドウ(東京都渋谷区神宮前5丁目10-1 GYRE1F)
時間:11:00〜20:00