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美術館スタッフが展示作品を誤ってゴミ箱へ。ビール缶そっくりの作品はすんでのところで救出

オランダのLAM美術館で、エレベーター技師が展示作品をゴミと間違えて捨ててしまうという前代未聞の出来事が起こった。

オランダのLAM美術館でゴミと間違えられて捨てられたアレクサンドル・ラヴェの《All the good times we spent together by》。Photo: instagram/@LAM museum

オランダの南ホラント州・リッセにあるLAM美術館は、食にまつわるアート作品において世界最大級の収蔵数を誇る珍しい美術館だ。このほど、同館の展示作品がエレベーター技師によって誤ってゴミ箱に捨てられてしまったとアートネットが伝えた

捨てられてしまった作品は、フランスのアーティスト、アレクサンドル・ラヴェの《All the good times we spent together by》(2016)。この作品は、ラヴェが友人たちと過ごした楽しい時間へのオマージュとして制作したもので、ベルギーで有名なビールメーカー「ジュピレル」の空き缶が丁寧な手描きで再現されている。缶は一部分がつぶれているなど造形もリアルであるばかりか、ガラスケースなどの保護もなく、あたかも捨てられた本物のビール缶のようにガラス張りのエレベーターの中に展示されていた。

この作品を誤って捨ててしまったエレベーター技師は、この日たまたま美術館の常勤技術者の代理として勤務していた。技師はエレベーターの中にビール缶があるのを発見し、ゴミ箱に捨ててしまったのだ。しかし幸いなことに、作品はゴミが回収される前に救出され、損傷も見当たらなかったため、すぐに展示を再開することが出来たという。だが、今回のような事件を防ぐため、台座の上に作品を設置することにしたという。

エレベーターの中という、なんとも紛らわしい場所に展示をした理由について、LAMのディレクターであるシエツケ・ファン・ザンテンは、「私たちのアートは、来館者に日常的な物を新しい視点で見ることを促します。思いがけない場所にアート作品を展示することで、この体験をさらに深め、来館者を飽きさせないようにしています」と説明する。また、今回のハプニングについては「技術者は、誠意を持ってただ自分の仕事をしていただけです。ある意味では、アレクサンドル・ラヴェの芸術作品の有効性を証明するものとも言えるでしょう」と話した。

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