拡大を続けるフリーズが「VIP専門のスペシャリスト」を大幅増員。3拠点から世界をカバー
10月9日からいよいよアートフェア、フリーズ・ロンドンがスタートする(13日まで)。現在世界で7つのアートフェアを運営するまでに成長したフリーズは、同フェアからVIPに対する施策に力を入れる。
ロンドン、ロサンゼルス、ニューヨーク、ソウルでアートフェアを開催するフリーズは、2023年夏、さらにアメリカで最大規模を誇る「アーモリーショー」と「エキスポ・シカゴ」を買収してアート界を驚かせた。
この急激な成長により、フリーズのエグゼクティブ・ディレクターであるクステル・チャドは「VIPのリーダーシップチームの再編と拡大が急務となっています」とUS版ARTnewsに明かした。これまでVIPに対応するグローバルディレクターは1人しかいなかったが、10月9日から13日まで開催されるフリーズ・ロンドンを皮切りに、アメリカ、ヨーロッパ、アジアの各地域に責任者を配置し、VIPへの働きかけや体験をより効果的に提供出来るようにしたという。
設置の理由は、2022年の教訓もあるかもしれない。同年のフリーズ・ロンドンのVIPデーには、動く気配のない長蛇の列ができ、フェアの最重要ゲストが苛立ちを募らせた。US版ARTnewsの取材に、匿名のアートアドバイザーは、「まるで新発売の限定スニーカーを待つ行列のようだった」「列の最後尾が見えなかった」とその様子を描写した。また、あるアートアドバイザーは、この状況はチケットシステムの不具合や混乱が原因であるように見えると答え、一部のコレクターの中には、フェアに参加せずに帰ると脅した人もいたという。2023年のフリーズ・ロンドンを含め、それ以降のフリーズのフェアではそういった苦情は聞かれないため、問題は全て解決されたようだ。
チャドによると、VIP対応人員の再編は、組織全体をより良くし、フリーズのグローバルな事業規模に適したものにすることだという。チャドはこう説明する。
「私たちのフェアと世界的な影響力を同時に成長させるという意図が強くありました。フェアの買収により、世界中のコレクターや機関と関わる方法について、地域ごとの戦略的アプローチが必要であることが明らかになりました。主な目的は、私たちが手掛ける7つのフェア全てにおいて、世界中から集まる最高のコレクターをギャラリーに紹介することです」
フリーズの新しいVIPチームは、ロサンゼルスを拠点にアメリカ大陸を統括するブルック・カンター、韓国・ソウルからアジアにおけるVIP対応と事業開発を統括するミンジュ・クォン、そしてヨーロッパ、中東、アフリカを担当するレオニー・ミルで構成されている。
カンターはロスのハマー美術館でキッズアートミュージアムプロジェクトの創設者兼理事長を務め、その後アートスペースLAXARTの理事や、10年近くクリスティーズの副社長を務めるなど西海岸のアートシーンでは欠かせない人物だ。クォンはフリーズで韓国のVIP担当として6年以上勤務したベテランで、アート・プサンのフェア・マネージャーの経験を持つ。ミルは最近フリーズに加わったばかりだが、ロンドンのクリスティーズでシニアスペシャリストとディレクターを歴任し、タデウス・ロパックなどのトップギャラリーやアドバイザー、キュレーターとして働くなど豊富な経験を持つ。(翻訳:編集部)
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