不動産王が寄贈したジョアン・ミッチェル作品をテート・モダンがお披露目。ロスコ作品と並べて展示
4月3日、ロンドンのテート・モダンが大物アートコレクターからの大規模な寄贈を発表。そこに含まれるジョアン・ミッチェルの大作《Iva》がお披露目された。寄贈を行ったのは、US版ARTnewsの「トップ200コレクターズ」に選出されているダーリーン&ホルヘ・ペレス夫妻。

マイアミを拠点とするアートパトロンで、US版ARTnewsの「トップ200コレクターズ」に名を連ねるホルヘ・M・ペレスとダーリーン・ペレス夫妻がロンドンのテート・モダンに大規模な寄贈を行い、4月3日に発表が行われた。
特に注目されたのは、幅6メートルにおよぶジョアン・ミッチェルの大型三連画、《Iva(イヴァ)》が寄贈に含まれていることだ。ミッチェルの最重要作品の1つとされるこの大作は、現在テート・モダンの所有するマーク・ロスコのシーグラム壁画と並んで展示されている。
抽象表現主義を代表する作家の1人であるジョアン・ミッチェルは、今年生誕100歳を迎える。同時代の男性作家の陰に隠れがちだった彼女の作品は近年再評価がめざましく、オークションでの人気も高い。ミッチェルの飼っていたジャーマンシェパードの名をタイトルにした《Iva》も、彼女の特徴である大胆な色彩と筆致のエネルギッシュさが存分に発揮されている。
寄贈者のホルヘ・M・ペレスは不動産開発業で財を成した億万長者で、マイアミの主要な公立美術館などにも1億ドル(約146億円)を超える寄付および寄付の誓約を行っている。なお、多額の寄付を受けた公立のマイアミ美術館は、ペレス・アート・ミュージアム・マイアミ(PAMM)に改名された。
BBCの取材に応じたペレス夫妻は、自分たちのコレクションをできるだけ多くの人に見てもらいたいと語った。また、《Iva》は隣り合うロスコの作品と「響き合っている」と述べ、「この絵は永遠にここにある」と付け加えている。夫妻はさらに、世界のアート界の潮流を形成する上で、女性アーティストなどの多様な声を支持することの重要性を強調した。
《Iva》以外にも、ペレス夫妻はテートのキュレーターによるリサーチ資金として数億円規模を寄付。近日中には、インカ・ショニバレCBE、エル・アナツイ、マリック・シディベなど、アフリカ出身およびアフリカにルーツを持つアーティストの作品も寄贈される。
イギリス国内でテート・モダンなど複数の文化施設を運営するテートのディレクター、マリア・バルショーはBBCに対し、この寄贈は同館がこれまで受けた中で「最も大きな意味を持つ」ものの1つであり、一般の人々が現代アートの傑作に触れる機会を拡大する「大きな転機となる」と述べた。また、クリス・ブライアント文化相は、ミッチェルの業績をあらゆる人に開放する寛大な行為は「非常に素晴らしい」と称賛している。(翻訳:石井佳子)
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