今週末に見たいアートイベントTOP5: 『攻殻機動隊』士郎正宗の漫画創作に迫る、映画とゲームの2作家が探る未来の共通領域
関東地方の美術館・ギャラリーを中心に、現在開催されている展覧会の中でも特におすすめの展示をピックアップ! アートな週末を楽しもう!

1. Thumbelina(DECAMERON)
1歳の表現者から学ぶ「創作とは何か」
アーティストの磯村暖を新ディレクターに迎えて初となる展覧会は、2023年に誕生し、1歳にして描画への熱意を注ぎ始めたThumbelina(トゥンベリーナ)の個展を開催する。Thumbelinaは「親指姫」という意味を持つ。直感的な色彩と自由なストロークからなるペインティングは、人間の原初的な創造的衝動性を感じさせるとともに、既にひとりの表現者としての特異性を放っている。
本展では、その中からThumbelinaが人生で最初に描いたペインティング作品群を展示する。また、会場では、磯村暖が制作した絵本『Thumbelina』の展示も同時に行う。
Thumbelina
会期:3月28日(金)~5月11日(日)
場所:DECAMERON(東京都新宿区歌舞伎町1丁目12-4)
時間:20:00~29:00
休館日:月曜
2. グレゴール・ヒルデブラント「Cherries Bloom in April」(ペロタン東京)
カセットテープを用いる作家が表現する始まりの静寂
ドイツ人アーティスト、グレゴール・ヒルデブラントの日本初となる個展。ヒルデブラントはカセットテープやレコードを主な素材として用い、その物質性と音楽性を融合させた作品で知られている。「…それでも4月に桜は咲く」という展覧会タイトルは、ドイツのシンガーソングライター、コンスタンティン・ヴェッカーの1980年代初頭に発表した楽曲から引用したものだ。
本展では、作家のトレードマークであるカセットテープを用いた「テープ・ペインティング」の新作が複数展示される。タイトルにもある桜の花をモチーフとして展開する作品もあるが、特筆すべきは、カセットテープの先端部分に使われるわずか数センチの鮮やかな赤色のリーダーテープを繋ぎ合わせて制作した連作だ。これらのテープはヒルデブラントが長年収集したもので、赤いリーダーテープは音楽が始まる前の静寂を象徴し、新しい始まりを予感させる。
グレゴール・ヒルデブラント「Cherries Bloom in April」
会期:4月3日(木)~6月21日(土)
場所:ペロタン東京(東京都港区六本木6-6-9 ピラミデビル1F)
時間:11:00~19:00
休館日:日月祝
3. 士郎正宗の世界展〜『攻殻機動隊』と創造の軌跡〜(世田谷文学館)
漫画の巨匠、士郎正宗の創作世界に迫る
漫画家、士郎正宗の初の大規模個展。熱狂的な人気を誇る『攻殻機動隊』の作者として知られる士郎は、1985年にSF漫画『アップルシード』でメジャーデビュー、89年に『攻殻機動隊』の連載を開始。先端技術を独自の感覚で取り入れ、情報化社会の現代を予見しているような世界観は、多くの人々を魅了し続けている。
本展では、『攻殻機動隊』や『アップルシード』、『仙術超攻殻ORION』などのアナログ原稿およびデジタル出力原稿を紹介するとともに、作家の蔵書やコメントもふんだんに紹介し、士郎正宗のパーソナルな部分にも迫る。細部まで描き込まれた絵や、膨大な情報で組まれたプロット、アナログ原稿の「欄外」にまで及ぶ作家の言葉は、作品に熱を持たせ、読む人の想像力をかきたてる士郎ワールドを物語っている。
士郎正宗の世界展〜『攻殻機動隊』と創造の軌跡〜
会期:4月12日(土)~8月17日(日)
場所:世田谷文学館(東京都世田谷区南烏山1-10-10)
時間:10:00~18:00(入場は30分前まで)
休館日:月曜(5月5日、7月21日、8月11日は除く)5月7日、7月22日、8月12日
4. LOVE ファッション−私を着がえるとき(東京オペラシティ アートギャラリー)
アートとデザインの両面からファッションを考察
服を着ることは人間の普遍的な営みである。そして装いには私たちの内なる欲望が潜み、憧れや熱狂、葛藤や矛盾を伴って表れることがある。お気に入りの服を着たい、あの人のようになりたい、ありのままでいたい。本展は、着る人のさまざまな情熱や願望=「LOVE」を受け止める存在としてのファッションに焦点を当てる。
京都服飾文化研究財団(KCI)が所蔵する18世紀から現代までの衣装コレクションを中心に、18世紀の宮廷服から、現代の川久保玲や山本耀司、ミウッチャ・プラダといったデザイナーたちの作品まで、約130点の作品が5つの章に分けて展示される。また、身近な友人との日常を切り取り、ありのままに生きることを肯定するヴォルフガング・ティルマンスの写真や同世代の女性たちのインタビューを題材にその日常と内面を描き出す松川朋奈の絵画、背負う貝殻を変えるヤドカリの姿に人のアイデンティティを重ねるAKI INOMATAの作品などを通して「私」をめぐる問いの現在形を探る。本展のために制作された原田裕規による新作映像《Shadowing》も注目。また、同期間「project N 98 楊博」として、中国出身のアーティスト、楊博(ヤン・ヴォ―)が日常の風景やボブ・ディランやイギー・ポップ音楽にまつわるモチーフ、彼らが歌う歌詞から引用された文字などを描いた作品を展示する。
LOVE ファッション−私を着がえるとき
会期:4月16日(水)~6月22日(日)
場所:東京オペラシティ アートギャラリー(東京都新宿区西新宿3-20-2)
時間:11:00~19:00(入場は30分前まで)
休館日:月曜日(4月28日、5月5日は除く)5月7日
5. SATELLITES: ニコラス ウィンディング レフン WITH 小島秀夫(プラダ 青山店)
2人のクリエイターが探る未来の共通領域
デンマークの映画監督ニコラス・ウィンディング・レフンと日本のゲームクリエイター小島秀夫による展覧会。このプロジェクトはプラダ財団の支援を受けて、クリエイティブスタジオ byNWRによって構想された。本展は、両者が10年以上にわたり交流し、培ってきた思考プロセスと繋がりから生まれており、映画とビデオゲームという異なる表現媒体から、両者がメディアの境界を曖昧にする技術を通じて未来の共通領域を探る。
会場はミッドセンチュリー風のワンベッドルーム・アパートメントとして演出され、来場者を別の次元へと誘う現実感のある家庭空間を創り出す。そこに設置されるのは、レトロフューチャーな宇宙船を模した6台のテレビ。だがテレビパネルは切り開かれ、内部構造をあらわにした状態で展示される。そこに映し出されるのは、英語と日本語で交わされる友情、クリエイティブな協働、新技術と創造性、死とその先に残るものなど多岐にわたるテーマの対話だ。会場近くの更衣室では、これらの対話をさまざまな言語にAI翻訳したカセットテープを聴くインスタレーションも展開される。
SATELLITES: ニコラス ウィンディング レフン WITH 小島秀夫
会期:4月18日(金)~8月25日(月)
場所:プラダ 青山店 5F(東京都港区南青山5-2-6)
時間:11:00~20:00
休館日:不定休