有名コレクター所有の米憲法の初期印刷物が一般公開へ。建国250年を祝う新ギャラリーにも多額の寄付
米憲法の初期印刷物を所有する著名投資家ケネス・グリフィンが、2026年まで同文書を米国憲法センターに貸与することを発表した。あわせて過去最大となるおよそ22億円の寄付も行い、建国250周年に向けた展示強化を支援する。

大手ヘッジファンド、シタデルの創業者で、US版ARTnewsが毎年発表しているTOP 200 COLLECTORSにも名を連ねるケネス・C・グリフィンは、自身が所有するアメリカ憲法の稀少な初期印刷物を、2026年まで米国憲法センター(NCC)に貸与すると発表した。さらにグリフィンは、フィラデルフィアに拠点を置くNCCに対し、同センターがこれまでに受けた寄付としては過去最大となる1500万ドル(約22億円)を寄付する予定だ。
NCCによれば、提供された資金は、アメリカ建国の原則に焦点を当てた新しいギャラリーと、権力分立および連邦主義に注目するギャラリーの創設に充てられるという。いずれのギャラリーも、アメリカ建国250周年となる2026年に開館する予定だ。
グリフィンは、数少ないアメリカ憲法の複製を2021年に4320万ドル(現在の為替で約63億5000万円)で入手している。この金額は、約1万7000人のメンバーで構成され、4000万ドル(約58億8400万円)超を共同調達していた分散型自律組織(DAO)『ConstitutionDAO』の入札額を上回っていた。この文書は憲法制定会議に参加した代議員のために印刷された14部の複製の1つであり、憲法の最終版の印刷のモデルとなった。
複製された憲法を入手したときからグリフィンは、「すべての国民と観光客が博物館やその他の公共スペースでこの文書を鑑賞できるようにする」と語っていた。またグリフィンは、1789年に下院を通過した17の憲法修正案の初版(そのうち10項目は最終的に権利章典として批准)も併せて貸し出す予定としている。
NCCは今回の寄付と文書貸与への謝意として、中心的な集会スペースをケネス・C・グリフィン・グレートホールに改名するという。同センターの総裁兼CEOは次のような声明を発表している。
「ケン・グリフィンの寛大な支援により、アメリカ建国の物語をより意義深く伝えることができることを、私たちは大変光栄に思います。憲法の稀少な初期印刷物および権利章典の原本を特集する建国原則の新ギャラリーは、イギリスからの独立宣言と憲法制定250周年を見据えるなかで、大勢の人々を引きつけ、魅了することでしょう」
また、グリフィンは声明のなかで次のように述べた。
「過去250年にわたるアメリカのめざましい繁栄は、私たちの憲法に示されている英知の証だと言えるでしょう。憲法の起草者たちは、建国当時に課せられていた試練に耐え、アメリカンドリームを守る政府システムを設計するうえで、驚くべき先見性をもっていました。こうした神聖な文書を、国民と共有するためにNCCとパートナーシップを組めることを誇りに思います」
NCCは、「The Story of We the People」と題された主要展示の改装工事を6月から開始し、2026年に完成させる予定だという。(翻訳:編集部)
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