美しく不気味──アグネス・クエスチョンマークのラディカルな肉体探求【New Talent 2025】

US版ARTnewsの姉妹メディア、Art in America誌の「New Talent(新しい才能)」は、アメリカの新進作家を紹介する人気企画。2025年版で選ばれた20人のアーティストから、肉体とテクノロジーの融合をアートを通じて試みるアグネス・クエスチョンマークを紹介する。

アグネス・クエスチョンマークに会ったのは、ブルックリン海軍工廠にある彼女のスタジオだった。そこは、水中の要素を多く含む作品を生み出す彼女にふさわしい場所だと思えた。クエスチョンマークの主たるテーマはトランスボディ。つまり彼女は、ジェンダーや人間という枠組み、そして種の垣根を超えていこうとしている。もし彼女が別の何かになれるとしたら、それはヒレか触手、あるいはその両方を持つ海の生き物だろう。

手の込んだマルチメディアパフォーマンスで知られるクエスチョンマークだが、それ以外にもさまざまな作品を手がけている。現在取り組んでいるのは、布にプリントされたイメージの上に、アクリル絵の具とシリコンを混ぜたものを塗った作品だ。鮮やかな赤やオレンジで描かれているのは、ほとんどが心臓など臓器のイメージで、官能的でありながらも不気味な感じがする。彼女に勧められるまま作品に触れた私は、それに頬を押し当ててみたくなった。しかし初対面の彼女にそう頼むのは、さすがにはばかられた。

クエスチョンマークは、リサーチの一環として集めているという、特殊な医療技術を持つ企業の資料も見せてくれた。肺や肝臓、心臓など、移植前の臓器を保管する機器を製造している会社のウェブサイトは、業務用エアコンや揚げ物用の調理器具メーカーのものによく似ている。見た目は美しく魅力的だが、それらは人間の臓器を入れる機械なのだ。「普段は目にする機会のない肉体とテクノロジーの融合に興味があるんです」と彼女は言う。

彼女のお気に入りの素材はシリコーンだ。シリコーンは人体のような質感を持ちながら、もちろん人体ではない不気味な素材だが、化学的安定性があり、体内に入っても安全とされている。私もクエスチョンマークもトランスジェンダーなので、肉体改造の話題で話が弾んだが、女同士の秘密なので詳細は割愛する。トランスジェンダーの多くは、医療産業との関わりの中でさまざまな冒険を潜り抜けるものだ。だが、どんな人の身体も、不自然な方法で機械とつながることはあるだろう。

果たして身体は、どのようなものになり得るのか? クエスチョンマークはこの問いに突き動かされているようだ。特に、2021年に制作された《TRANSGENESIS(トランスジェネシス)》以来、それが顕著になっている。ロンドンのアートギャラリー、ハーレスデン・ハイストリートで発表されたこのインスタレーション兼パフォーマンス作品で、クエスチョンマークはコイルのような触手を持つ巨大なハイブリッド生物に変身した。1日8時間、23日間にわたって在廊していた彼女は、まるで水中にいるかのように優しく腕を振っていた。

2023年に手がけた《CHM13hTERT》で、クエスチョンマークは再び海洋生物に変身している。今度はヒレのある、キメラ的な生き物だ。6メートルほどもある人魚のような尾をつけた彼女は、ミラノの地下鉄駅のガラス張りの囲いの中で、1日12時間、16日間にわたり、ケーブルと紐で吊るされて過ごした。

アグネス・クエスチョンマーク《CHM13hTERT》(2023)
アグネス・クエスチョンマーク《CHM13hTERT》(2023)

こうした怪物的な佇まいは、人の神経を逆撫ですることもある。通行人の中には、彼女に向けて怒鳴ったりガラスを叩いたりする人もいたという。タイトルの《CHM13hTERT》は、ヒトゲノムを研究するために開発された細胞株の名前にちなんでいるが、彼女にとってこの細胞株は、「ゲノムを改変し、いつの日か私たちの思い通りの形を作れるようになるかもしれない」ということを意味している。

クエスチョンマークは最近、バイオハッカーのジョジー・ゼイナーとイタリアの出版社ネロとの共同で、《QuestionGen(クエスチョンジェン)》(2024)というエディション作品を制作した。彼女のDNAが入ったカプセルが、通常の薬剤に使われているようなプラスチックとアルミの包装に入れられ、そこに「誤情報」の説明書が添えられている。

クエスチョンマークは、肉体とテクノロジーの可能性をとことん探求しようとする。私が惹かれるのは、周囲を巻き込む熱意と、それを制御する健全な批評精神だ。しかしそれ以上に、彼女の作品が持つ美しさと不気味さの間の緊張感に興味をそそられる。彼女の作品は、「期待されたものではなかった」ものでも愛することができるという希望を私に与えてくれる。この「期待されたものではなかった」という気持ちは、ほとんどのトランスジェンダーがよく知っているものなのだ。(翻訳:野澤朋代)

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