今週末に見たいアートイベントTOP5:ライアン・ガンダーの今を知る18点を公開、NAZEの眼を通して「廃材」を見る

関東地方の美術館・ギャラリーを中心に、現在開催されている展覧会の中でも特におすすめの展示をピックアップ! アートな週末を楽しもう!

Closed systems, 2024
ライアン・ガンダー:ユー・コンプリート・ミー(ポーラ美術館)より。

1. どうぶつ展 わたしたちはだれ? どこへむかうの?〜WHO ARE WE? WHERE ARE WE GOING?(PLAY! MUSEUM)

PLAY!MUSEUMでの「WHO ARE WE 観察と発見の生物学」展示風景
2022年 国立科学博物館「WHO ARE WE 観察と発見の生物学」展示風景(提供:国立科学博物館)
清川あさみ「角のある住人たち」(2011)
土屋仁応「亀」(2022)

9作家が創った展示空間「ユートピア」は必見

国立科学博物館(科博)とコラボレートし、動物をテーマに展覧会を開催する。核となるのは、科博が2021年に制作した、約180点の貴重な資料や世界屈指の動物標本コレクションを含む巡回展「WHO ARE WE 観察と発見の生物学」。また、同展のコンセプトをもとに、PLAY! MUSEUMが独自に創った「笑顔の森」「模様の惑星」「しっぽはすごい」などの5つのテーマで、体験型のインスタレーションを展開する。

さらに、アート好きには見逃せないのが9人のアーティストによる展示空間「ユートピア」だ。約30点の立体、平面作品を通して、哺乳類の中で⼈間だけに与えられた無限の創造⼒を体感できるだろう。展示作家は⼤曽根俊輔、清川あさみ、瀬戸優、鷹⼭真彩、⼟屋仁応名和晃平、はしもとみお、ミロコマチコ、安⽥ジョージ。

どうぶつ展 わたしたちはだれ? どこへむかうの?〜WHO ARE WE? WHERE ARE WE GOING?
会期:4月16日(水)~7月6日(日)
場所:PLAY! MUSEUM(東京都立川市緑町3-1 GREEN SPRINGS)
時間:10:00~17:00(土日祝は18:00まで、入場は30分前まで)
休館日:なし


2. MOT Plus ハン・ネフケンス財団との共同プロジェクト シャハナ・ラジャニ(東京都現代美術館)

シャハナ・ラジャニ《回復のための四つの行為》より(制作:ハン・ネフケンス財団)
シャハナ・ラジャニ《回復のための四つの行為》より(制作:ハン・ネフケンス財団)
シャハナ・ラジャニ《回復のための四つの行為》より(制作:ハン・ネフケンス財団)
シャハナ・ラジャニ《回復のための四つの行為》より(制作:ハン・ネフケンス財団)

環境破壊により故郷を失った一家を描く

バルセロナを拠点に世界各地の美術組織と連携し、映像を表現媒体とするアーティストの制作支援を行う非営利団体、ハン・ネフケンス財団との共同企画。同財団と東京都現代美術館は、若手アーティスト支援の一環としてインド、イギリス、ベルギー、香港などのアート施設を連携して「南アジア・ビデオアート・プロダクション・アワード」を設立。この度、同アワードを、パキスタンを拠点に活動する1987年生まれのアーティスト、シャハナ・ラジャニに授与した。

本展は同賞を記念し、ラジャニによる新作映像インスタレーション《回復のための四つの行為》を展示する。同作は、インダス・デルタにおけるダム建設が引き起こした環境破壊により、パキスタンのカラチへ移住を余儀なくされた漁師の一家が、消えゆく故郷を絵に描き留める姿を追った映像をベースとしている。3つのスクリーンで構成されるインスタレーションは、インダス・デルタの現在の状況と、そこに生きていた人々が繋ぎとめようとする風景との隔たりと重なりに観る者を招き入れる。

MOT Plus ハン・ネフケンス財団との共同プロジェクト シャハナ・ラジャニ
会期:4月29日(火祝)~6月29日(日)
場所:東京都現代美術館(東京都江東区三好4-1-1)
時間:10:00~18:00
休館日:月曜


3. 「ランドスケープをつくる ラ・サマリテーヌ 修復と再生」展(東京都庭園美術館)

アール・ヌーヴォー様式ファサード、モネ通り © Salem Mostefaoui for La Samaritaine
アール・ヌーヴォー様式手すりの修復 © Vladimir Vasilev for La Samaritaine
施釉溶岩石パネルの修復 © Vladimir Vasilev for La Samaritaine

伝説の老舗デパート、ラ・サマリテーヌ再生の物語

1890年、パリのセーヌ川にかかる橋ポン・ヌフの右岸に創業した老舗デパート「ラ・サマリテーヌ(La Samaritaine)」。当時の最先端の建築工法で建てられたアール・ヌーヴォー様式の店舗は、1926年にはアール・デコ様式の建物が増築され、パリ市民に長年愛されてきた。しかし2005年に安全上の理由から閉鎖を余儀なくされ、14年後の2019年にホテルやオフィスを備えた複合施設として生まれ変わった。

本展ではラ・サマリテーヌの修復と再生の過程を紹介しながら、パリの街で歴史が現代へと引き継がれ、未来へと新しい風景が作り出されていく様子を紹介する。

「ランドスケープをつくる ラ・サマリテーヌ 修復と再生」展
会期:5月20日(火)~7月13日(日)
場所:東京都庭園美術館 正門横スペース(東京都港区白金台5-21-9)
時間:10:00~18:00
休館日:月曜


4. NAZE「KAWARU MONO KAWARANAI MONO」(アニエスベー ギャラリー ブティック)

photo©︎Shu Nakagawa
photo©︎Shu Nakagawa
photo©︎Shu Nakagawa
photo©︎Shu Nakagawa

NAZEの眼を通して廃材を見つめる

廃材をただの「ゴミ」としてではなく、創造を生み出す媒介物として見つめるNAZEによる個展。NAZEはグラフィティカルチャーをベースに、触覚的な筆致で描かれるドローイングや、スプレーやコラージュを用いたペインティングのほか、廃棄物を使ったオブジェやテキスタイルを使った作品を制作している。

本展では、設営期間中にNAZEがギャラリーに滞在し、アニエスベーから提供された用途を終えた洋服の見本残布などを使いながら作品を完成させた。また、会期中も不定期に来場し、空間に⼿を加えることで、展⽰の⾵景を少しずつ変えていく。NAZEの創作は、⺟の故郷であるフィリピンで見た、廃材で出来た家の色彩や造形がかっこよく見えたことからスタートした。NAZEの作品を通して、「ゴミ」と一言で片づけられてしまうものに対して新たな視点を得られることだろう。

NAZE「KAWARU MONO KAWARANAI MONO」
会期:5月24日(土)~6月29日(日)
場所:アニエスベー ギャラリー ブティック(東京都港区南青山5-7-25 ラ・フルール南青山2F)
時間:12:00~19:00
休館日:月曜


5. ライアン・ガンダー:ユー・コンプリート・ミー(ポーラ美術館)

Closed systems, 2024
You Complete Me, or I see things you canʼt see (A Frogs Tale), 2025
You are repetitive and productive but you dream of being free, 2025
Idea Machine, 2024

自身の「家族」にフォーカス。日本初公開の新作多数

イギリスを拠点に活動するライアン・ガンダーは、絵画、彫刻、映像、テキスト、VRインスタレーションから建築、出版物や書体、儀式、パフォーマンスに至るまで、幅広く多元的な作品と実践を通して芸術の枠組みやその意味を問い直し、国際的な評価を確立してきた。その作品には言葉をしゃべるネズミなどユーモアあるものが多く、幅広い年齢層に親しまれている。

本展では、館内の様々なスペースで18点を展示する。そのうちの大半は新作で、「アニマトロ二クス」シリーズには、まだ幼いガンダーの子どもの声が使用されている。また、地名の綴りをそのままキャンバスに写した絵画作品は、ガンダーの父親が各地で撮影した写真の整理のために記した手書き文字が抜き出して描かれている。ほか、自然豊かで周囲に多くの野生動物が生息するポーラ美術館のために制作した「動物」たちの作品にも注目だ。

ライアン・ガンダー:ユー・コンプリート・ミー
会期:5月31日(土)~11月30日(日)
場所:ポーラ美術館(神奈川県足柄下郡箱根町仙石原小塚山1285)
時間:9:00~17:00(入場は30分前まで)
休館日:なし

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