ボブ・ディランの習作を集めたドローイング画集『Point Blank (Quick Studies)』が今秋発売

2016年にノーベル文学賞を受賞したミュージシャン、ボブ・ディランが2021〜2022年に手がけたドローイング約100点を収録した『Point Blank (Quick Studies)』が11月に刊行される。大型絵画制作のための習作群を通じて、鋭い観察眼と創作の源泉に迫る貴重な一冊となっている。

Photo: Courtesy of Simon & Schuster
Photo: Courtesy of Simon & Schuster

ボブ・ディランのドローイングに焦点を当てた画集『Point Blank (Quick Studies)』が、11月18日にサイモン&シュースターから刊行される予定だ。この作品集には2021〜2022年にかけて描かれた白黒ドローイング約100点が収録される。これらは《Point Blank》シリーズの大型絵画のための習作群であり、ディランの貴重な制作過程を垣間見ることができる。

この画集には、ローラースケートをはいた恋人たち、カラオケで歌う人、パリの運河、甲冑、さらにはセロハンテープのロールなど、さまざまなものや場面が描かれた習作が含まれている。各作品には、エディ・ゴロデツキーやジャッキー・ハミルトン、ルーシー・サンテといった作家による散文が添えられ、ディラン特有の曖昧なストーリーテリングに輪郭をもたせている。肖像画や静物画、都市の風景、刹那的な瞬間など、幅広い主題を扱ったドローイングを見れば、ディランの観察眼がいかに鋭いかがわかるだろう。サイモン&シュースターのエディトリアル・ディレクターを務めるショーン・マニングは、これらの習作を次のように評している。

「無邪気さのなかに達観した視点があり、喜びを表現しながらもどこか寂しげで、ユーモラスでありながら官能的。そして謎めいていながらも、親しみやすさがディランの作品にはあります。ひとつのイメージのなかで相反する感情がうまく捉えられているのです」

ディランの画家としてのキャリアは、自身の音楽活動と並行して継続されてきた。彼の描いたドローイングや絵画は、『セルフ・ポートレイト』や『プラネット・ウェイヴズ』などの初期に発表されたアルバムのジャケットにも使われていた。ギャラリーで本格的に扱われるようになったのは、2007年に発表された《Drawn Blank》シリーズからだ。過去20年間でディランの絵画はアメリカやヨーロッパで展示され、広く知れ渡るようになり、批評家たちは、彼の作品には楽曲制作における叙情性や幾重にも重なる象徴性が映し出されていると評している。

『Point Blank (Quick Studies)』は、ディランが2004年に発表した著書『Chronicles: Volume One』のオーディオブックと同時期に発売される予定だ。(翻訳:編集部)

from ARTnews

あわせて読みたい