シャルダンの名画が登場! ジョナサン・アンダーソンによるディオール最新ショーは「歴史と現在の優雅な共存」と絶賛
6月27日(現地時間)、パリのアンヴァリッドでディオールの2026年メンズ サマーコレクションが発表された。ジョナサン・アンダーソンが同ブランドのアーティスティック・ディレクターに就任して初となるショーでは、18世紀フランスの画家、ジャン・シメオン・シャルダン(1699-1779)の名画2点が登場した。

パリ7区の旧軍病院アンヴァリッドで現地時間の6月27日、ディオールの2026年メンズ サマーコレクションショーが開催された。
ショーを率いるのは、この春に史上初となるメンズ・レディース両方のアーティスティック・ディレクターに就任したばかりのジョナサン・アンダーソン。アンダーソンは2013年から10年以上にわたりロエベのクリエイティブ・ディレクターとして、当時あまり注目されていなかったレザーブランドを蘇らせた。そして彼はファッションのみならず、クラフトを支援するためのプラットフォーム「LOEWE FOUNDATION Craft Prize」を立ち上げるなど、伝統技術の継承と推進に貢献した。
そんなアンダーソンが手掛けた今回のショーは、公式資料によると、ベルリンにある1830年開館の美術館ゲメールデガレリー (絵画館)の室内を模したという。フロアの壁は、昔ながらの美術館のようにベルベットで覆われており、シャルダンによる2点の作品、ルーブル美術館蔵の《野イチゴの籠》(1761)とエディンバラ国立近代美術館蔵の《花瓶の花》(1750頃)が飾られていた。
因みにアートニュースペーパーによると、《野イチゴの籠》(1761)は2022年にフランス国外に売りに出されるところだったが、昨年1万人の市民による160万ユーロ(現在の為替で約2億7000万円)以上の募金と、ディオールも傘下に入るLVMHが購入資金の約3分の2にあたる1500万ユーロ(同・約25億円)を拠出したことによってルーブルが取得している。

シャルダンの絵画が選ばれた理由について、ディオールは公式資料で、「芸術がしばしば過剰で大掛かりなものだった時代に、シャルダンは日常を大切にし、壮大さの代わりに誠実さや共感をもたらしました。美術館という場所は、会話が繰り広げられ、歴史が日常の一部となる公共スペースです。美術館の部屋は時として、名画に囲まれながら、息をのむような、解放的で喜びに満ちたランウェイが開催される空間にもなります」と説明する。
この空間に呼応するように、披露されたコレクションは、ディオールが1947に発表したアイコニックな「バー」ジャケットや、テールコートが取り入れられ、18~19世紀に流行したウエストコートが当時のままに再現された。それらにジーンズやチノパン、再構築されたタイを合わせている。
今回のショーについて、ニューヨーク・タイムズの批評家ヴァネッサ・フリードマンは、「アンダーソンは劇的な変化を避け、ディオールの遺産と現在を融合させた」と評しており、コレクションについては「フォーマルとカジュアル、歴史と現代を一体化させています。彼が提案したのは、矛盾は優雅に共存できる、という明確で説得力のある主張でした」と絶賛した。
デビューショーに先立つ6月22日、アンダーソンはディオールのSNSに、ショーのインスピレーションを与えた人物として、アンディ・ウォーホルが撮影した2枚のポラロイド写真を投稿した。1枚はジャン=ミシェル・バスキア、もう1枚はジャクリーン・ケネディ・オナシスの妹で社交界の常連だったリー・ラジウィル(1933-2019)だ。彼らの写真に、アンダーソンは次の言葉を寄せている。
「この旅を始めたとき、私は、私にとってスタイルの象徴であるバスキアとラジウィルの写真に何度も目を戻していました」
ラジウィルとディオールの繋がりは、1960年代に当時のクリエイティブディレクターであったマルク・ボアンの下で始まり、彼女はボアンのミューズだった。1977年にボアンが彼女のためにデザインしたシルクローブは、メトロポリタン美術館に収蔵されている。
アンダーソンによる初のウィメンズコレクションは9月に発表される予定だ。(翻訳:編集部)
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