「寝室の情景」を描いた古代モザイク画がポンペイに帰還。第2次世界大戦中にナチスが略奪

7月15日、第2次世界大戦中にナチスの将校がポンペイから持ち出したとされる古代のモザイク画が、約80年ぶりに返還されたことが明らかになった。

男女の姿を描いた古代のモザイク画がポンペイ考古学公園に帰還した。Photo: Eliano Imperato/Anadolu via Getty Images

第2次世界大戦中にナチスに略奪され、その後ドイツの市民が所有していた古代のモザイク画が、ポンペイに戻ってきた。描かれているのは寝室の情景で、ほぼ全裸の女性が、寝椅子に横たわる男性に向かって手を伸ばしている。

このモザイク画は、ヴェスヴィオ山周辺の地域で制作されたものと見られている。広く知られているように、西暦79年のヴェスヴィオ山の噴火でポンペイは火砕流に埋まり、古代都市は当時のまま封印された。

ポンペイ考古学公園によれば、モザイク画は第2次世界大戦中イタリアで補給線を監督していたドイツ国防軍の大尉が持ち出し、あるドイツ人に「寄贈」されたという。ポンペイの邸宅あるいは別荘の床を飾っていた可能性もあるが、大尉がモザイク画をどこから、どのようにして入手したのかは分かっていない。

同公園は声明で、このモザイク画が2023年9月16日に、ドイツのシュトゥットガルトにあるイタリア領事館の協力のもと、公式にイタリアに返還されたことを明かした。それから2年近く経って、返還が発表されたことになる。

略奪文化財の品々が戻ってくるたびに、傷が癒えていきます。ですから、保護チームの尽力に感謝の意を表したいと思います。傷つけられるのは、作品の物質的価値ではなく、その歴史的価値です。不正な取引は、古代遺物の価値を著しく損います」と、同公園のディレクター、ガブリエル・ツフトリーゲルは声明で述べ、こう続けている。

「私たちはモザイク画の正確な出所を知りませんし、今後も知ることはないでしょうが、その真正性を確かめ、できる限りその歴史を解明するため、さらなる調査と考古学的分析を行う予定です。この文化財の研究やそこから得られる知識、そして一般市民の鑑賞する喜びは、考古遺物を盗む人々の貪欲さと利己主義という泥の中から育つ蓮の花のようです」(翻訳:石井佳子)

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