新たな世界遺産26件が発表。カメルーンの遺跡やシエラレオネの熱帯雨林などアフリカにスポットライト
7月上旬にパリで開催された第47回世界遺産委員会で、新たに26の遺産が世界遺産リストに登録された。今回は西アフリカのシエラレオネとギニアビサウが新たな登録国となるなど、アフリカ勢が存在感を示している。

ユネスコは、7月6日から16日に第47回世界遺産委員会を開催。アフリカ大陸の4件やオーストラリア先住民の土地にある「ムルジュガの文化的景観」など、26の遺産が登録リストに加わった(文化遺産21件、自然遺産4件、複合遺産1件)。また、2件が登録範囲拡大の認定を受けている。
アフリカで新規登録された4件のうち、文化遺産はカメルーンの「マンダラ山脈のディ・ギッド・ビィの文化的景観」とマラウイの「ムランジェ山の文化的景観」、自然遺産はギニアビサウの「ビジャゴス諸島の沿岸・海洋生態系:オマティ・ミンオ」とシエラレオネの「ゴラとティワイの複合地域(ゴラ熱帯雨林国立公園とティワイ島野生生物保護区を含む)」となっている。
カメルーンの「マンダラ山脈のディ・ギッド・ビイの文化景観」は、16の石の建造物が点在する遺跡で、ディ・ギッド・ビィ(Diy-Gid-Biy)は現地のマファ族の言葉で「首長の住居の廃墟」を意味するという。また、マラウイで世界文化遺産の対象となったムランジェ山は、同国南部にある最高峰(海抜3002メートル)で、ヤオ、マンガンジャ、ロムウェといった民族がこの山を守り、崇敬してきた。
上記に加え、南アフリカとモザンビークにまたがるイシマンガリソ湿地公園の範囲拡大が承認され、新たに「イシマンガリソ湿地公園とマプト国立公園」として約4000平方キロの範囲が自然遺産として登録された。アフリカ大陸での登録数は100を超え、ユネスコの発表によると、さらに7カ国が2027年までに新たな候補地の提出を予定している。こうした動きについて、ユネスコのオードレ・アズレ事務局長は声明でこう強調した。
「アフリカを優先事項とすることは、単なる象徴的な行為ではありません。これは、アフリカ大陸の歴史、文化、自然の重要性が認識されるべきとの理念に基づいた具体的かつ日常的な取り組みであり、長期的なコミットメントです。私のユネスコ着任以来、アフリカで19の新たな遺産が登録され、6つの貴重な遺産が危機から救われるなど、この大陸が世界遺産としての正当な地位を確立したことを誇りに思っています」
国連の教育科学文化機関であるユネスコによる世界遺産の認定は、その遺産が世界的な重要性を有することを示し、戦争や環境問題の脅威から特に保護されるべきであることを意味する。そのため同機関には、消滅の危機に瀕する遺産に「暫定的な保護強化」を与える権限があり、こうした場所には破壊行為や軍事目的の使用からの高いレベルの保護施策が講じられる。前出のアズレ事務局長の声明では、世界遺産登録の意義と責任について次のように述べられている。
「196カ国が締約国になっている世界遺産条約は、世界で最も広く批准されている条約の1つであり、その影響力と人気が世界中で認められています。今年新たに登録された世界遺産にとって、この注目度は大きな責任を伴います。それは、価値ある遺産を継承し、保護し、重要性への認識を広める責任です」
一方、7月22日にアメリカのトランプ政権は、ユネスコからの再脱退を表明した。ユネスコが「分断を生む社会的また文化的な大義を推進」しており、ジェンダー平等や気候変動などの「持続可能性の目標に過度に注力している」ことが理由とされる。(翻訳:石井佳子)
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