ニューヨーク近代美術館(MoMA)が米国メディア王の寄託作品をオークション出品。合計落札予想価格は100億円超
米三大テレビネットワークの1つ、CBSを創設したメディア王ウィリアム・ペイリー。彼が設立した財団は、長年ニューヨーク近代美術館(MoMA)に数多くの美術品を寄託している。そのコレクションを、サザビーズのオークションにかけることが発表された。
この秋、ペイリー財団のコレクションからオークションに出品されるのは、パブロ・ピカソ、フランシス・ベーコン、オーギュスト・ロダンなど、そうそうたる作家の絵画や彫刻だ。オークションはニューヨークとロンドンで行われ、合計7000万ドル(約100億円)を超える値が付くと予想されている。
サザビーズが9月14日に発表したところによると、同財団が売却を決めたのは1990年のペイリーの死後、MoMAが保管してきた約80点の作品のうち29点だ。収益は主に、ストリーミングチャンネルの立ち上げやデジタルアート作品の取得など、MoMAのデジタル事業の拡大に使われるとされている。
11月14日のニューヨークのイブニングセールには、パブロ・ピカソの静物画《Guitare sur une table(テーブルの上のギター)》(1919)が出品予定で、推定落札価格は2000万ドル(約29億円)。一方、これに先立つ10月14日にロンドンで行われるオークションには、フランシス・ベーコンの小型三連画《Three Studies for Portrait of Henrietta Moraes(ヘンリエッタ・モラエスの肖像画のための3つの習作)》(1963)が出品される。こちらの推定落札価格は3500万ドル(約50億円)だ。そのほか、アンドレ・ドラン、ピエール=オーギュスト・ルノワール、ジョアン・ミロ、ピエール・ボナールらの作品も10月と11月のイブニングセールで販売されるという。
ウィリアム・ペイリーは、MoMA設立から8年後の1937年に同美術館の理事に就任した。彼がまだ新進気鋭のメディア企業経営者で、現代アートコレクターとしての経験も浅かった頃のことだ。その後、同館の理事長、会長を歴任し、同館への寄付は死後も続けられた。ペイリーは財団を通じてMoMAとのパートナーシップを結び、何十年にもわたってMoMAがコレクションの展示方法や作品の売却益の使い道を決定できるようにしている。
MoMAのグレン・D・ロウリー館長は、近々行われる売却は1990年に行われた遺贈に基づくものであると述べ、ペイリーの「先見性のある慈善活動は、30年後のMoMAのニーズを先取りしていた」と称賛している。
ウィリアム・ペイリーの息子で財団の理事長を務めるビル・ペイリーによると、オークションに出品する作品は、財団がMoMAのキュレーターと協力して選定したという。オークションの売り上げの一部は、芸術、医療、メディア分野での同財団の支援活動に役立てられる。(翻訳:清水玲奈)
※本記事は、米国版ARTnewsに2022年9月14日に掲載されました。元記事はこちら。