所有するアート作品をNFT化してアーティスト支援の資金に。大物アートコレクター、エラ・フォンタナルス=シスネロスの画期的計画
コンセプチュアル・アート、ビデオアートからラテンアメリカのアートまで、幅広い分野の作品を所有するキューバ生まれのメガコレクター、エラ・フォンタナルス=シスネロスが、NFTアートに参入する。その目的について取材した。
今回発表された計画は、フォンタナルス=シスネロスの2000点を超えるコレクションから選んだ作品を3Dスキャンし、その名もNFTarotというNFT版のタロットカードに仕立てるというもの。まずは第1弾として、NFTarotのカード全44枚のうち14枚が10月6日にWeb3アートのプラットフォーム、LiveArt(ライブアート)で発売される。
14枚のうち7枚は、キューバのアーティスト、グスタボ・ペレス・モンソンの作品だ。キューバ初のコンセプチュアルアーティストとされるモンソンは、ワイヤーや糸を使った幾何学的なインスタレーションやドローイングを制作している。残りの7枚には、やはりキューバ人のビデオアーティスト、グレンダ・レオンの作品が使われている。
NFTarotの売上による著作権収入はオリジナル作品を制作したアーティストに還元される一方、売上金の大半はシスネロス・フォンタナルス美術財団(CIFO)が行うアーティストへのコミッション(制作委託)や助成金プログラムの資金となる。
また、この販売を皮切りに、フォンタナルス=シスネロスは新プロジェクトのeDigital.ART(eデジタル・ドット・アート)を始動させる。発表によると、このプロジェクトは「エラ・フォンタナルス=シスネロスの目にかなった作家とコレクターをNFTでつなぐ新しい取り組み」だという。
「eDigital.ARTとのコラボレーションは、ラテンアメリカのアーティストを応援し、その活動に対する世界的な認知を高めるという私のライフワークの一環」だと、フォンタナルス=シスネロスはARTnewsのメール取材に答えた。また、「NFT化することで、対象となるアーティストをコレクションする人の幅を広げることができ、世界中で活動するラテンアメリカ系アーティストへのCIFOの支援をさらに強化することもできます。さらに、NFTによる継続的な著作権収入は、アーティストへの直接支援になるんです」と説明している。
フォンタナルス=シスネロスは、ジョン・バルデッサリ、オラファー・エリアソン、ラファエル・ロサノ=ヘメル、ヴィック・ムニーズ、リジア・クラーク、ルイス・カムニッツァーといった定評あるアーティストの作品を数多く収集している。こうした作品をNFT化して販売するのは、自慢のコレクションを実際に売却することなく、そこから価値を引き出す画期的な方法と言えるだろう。
2018年にフォンタナルス=シスネロスは、自身のコレクションから約400点をスペイン政府に寄贈すると発表したが、政権交代後にその契約は取り消しになった。今年になってからは、アルスエレクトロニカ(オーストリアのリンツで40年にわたり開催されているメディアアートの祭典)と提携し、テクノロジーを用いた作品を制作しているラテンアメリカ系アーティストを支援する新たな助成プログラムを立ち上げている。(翻訳:清水玲奈)
※本記事は、米国版ARTnewsに2022年9月15日に掲載されました。元記事はこちら。