芸術は「行動喚起」であり「希望の源泉」──2025年度「AWAW環境アート助成」受賞者が決定

環境問題に取り組む女性アーティストを支援する「AWAW環境アート助成」の2025年度受賞者が決定した。総額約7600万円が29のプロジェクトに授与され、アートを通じた環境アクションと市民参加の取り組みが各地で展開される。

ディープタイム・コレクティブ(アマンダ・リー・エヴァンズ、ティア・クレイマー)によるパフォーマンス作品《Embodying the River (stream)》(2022)。カスタムTシャツを用いたパフォーマンスと、プラスチック素材・映像・音を組み合わせたインスタレーションで構成。Photo: Allyn Griffin
2025年度の受賞者、ディープタイム・コレクティブ(アマンダ・リー・エヴァンズ、ティア・クレイマー)によるパフォーマンス作品《Embodying the River (stream)》(2022)。カスタムTシャツを用いたパフォーマンスと、プラスチック素材・映像・音を組み合わせたインスタレーションで構成。Photo: Allyn Griffin

アノニマス・ワズ・ア・ウーマン(Anonymous Was A Woman、以後、AWAW)とニューヨーク芸術財団(NYFA)は、2025年度の「AWAW環境アート助成」プログラムの受賞者を発表し、29のプロジェクトに対し総額52万1125ドル(約7600万円)を授与した。

同プログラムは、アメリカおよびその領土に拠点を置く、女性を自認するアーティストによる環境アートプロジェクトを対象に、1プロジェクトにつき最高2万ドル(約300万円)の助成金を提供するもの。選出されたプロジェクトには、「パブリック・エンゲージメント(市民参加型活動)」を2026年8月までに実施することが求められる。

審査はまず一次選考で候補が絞られ、その後、最終審査で受賞者が決定した。最終審査を務めたのは、カラマズー美術館・学芸部門ディレクターのレヘマ・C・バーバー、カルチャー・プッシュ・インクのエグゼクティブ・ディレクター兼ワークス・オン・ウォーター共同ディレクターのクラリンダ・マック・ロウ、ディネ族出身のアーティスト、ダコタ・メイス、ヤーバ・ブエナ芸術センターCEOのマリ・ロブレス、ボストンのSMFAタフツ大学メディアアーツ実践教授メアリー・エレン・ストロムの5人。選考基準として、プロジェクトがもたらす社会的・環境的インパクトも重視された。

AWAWの創設者スーザン・ウンターバーグは受賞者発表の声明で次のように述べた。

「私たちは多重の危機が同時に進行する時代に生きています。しかし、その現実に圧倒されて行動を止めてはなりません。いま、かつてないほど環境への行動が求められており、アーティストは私たちが直面する危機を『見て、感じて、応答する』ための強力な役割を担っています」

またウンターバーグは、2025年度の受賞者たちは、「私たちが直面する深刻な課題を照らし出すだけでなく、レジリエンス、公正、そして共同体的なケアの新たな道を模索しています」と評価し、彼らのプロジェクトは「芸術が『行動への呼びかけ』であると同時に、『希望の源泉』となり得ることを思い出させてくれます。どちらも今、欠かすことのできないものなのです」と続けた。

今年で4年目を迎える同プログラムの今回の助成金52万1125ドルは、カリフォルニア、グアム、ハワイ、ルイジアナ、メイン、メキシコ、ニューヨーク、ナイジェリア、セネガル、韓国、ユタといった地域で展開される、環境問題やアドボカシーに焦点を当てた29のプロジェクトに分配された。これら29件は、1004件の応募の中から選ばれた。

AWAWは1996年以来、主に40歳以上の女性アーティストに対して制限のない助成金として累計1000万ドル(約14億7000万円)以上を400人以上に授与してきた。2022年以降は、82のプロジェクトに総額140万ドル(約2億円)を提供している。

今年度の受賞者は以下のとおり:

  • BEAM(アニー・チェン、ゾーイ・リー、エレン・フリッツ)──ロードアイランド州ポッターズ・ポンド
  • ハイディ・K・ブランドウ──ニューメキシコ州サンタフェ
  • シャーロット・ブラズウェイト──セネガル・ポペンギネ=ンダヤネ
  • シャンタル・カラト──ニューヨーク州ナイアガラ郡
  • エリカ・コーン、ニコール・ドクタ──ユタ州ソルトレークシティ
  • ハーバン・クラ──ニューヨーク州ハドソン・バレーおよびニューヨーク市
  • アース・ライズ・コレクティブ──ルイジアナ州ヴィントン
  • ディープタイム・コレクティブ(アマンダ・リー・エヴァンズ、ティア・クレイマー)──ワシントン州
  • スージー・ガンチ──オンライン
  • マデリン・ガンダーソン──メキシコ・メヒコ州
  • マリア・エルナンデス・メイ──グアム・バリガダ
  • トミコ・ジョーンズ──ウィスコンシン州マディソン
  • マリヤム・カゼーム──ナイジェリア・ラゴス
  • レイレフア・ランジロッティ──カリフォルニア州サンフランシスコ
  • イム・スジン──韓国・永興島(ヨンフン島)
  • ジェミラ・マキューアン──ニューヨーク
  • ジェニファー・ネプチューン(エリン・ハットンと協働)──メイン州インディアン・アイランド、ペノブスコット国立博物館
  • ナタリア・ノイハウス──ニューヨーク州ナイアガラフォールズ
  • マーガレット・ピアース(プレーリーアイランドTHPO、ホーチャンク族文化資源部、アンダーソン・センターと協働)──ミシシッピ川流域
  • エミリー・ラボトー──ニューヨーク市ブロンクス
  • ティアレ・リボー──ハワイ州ホノルル
  • ラリッサ・ロジャース──カリフォルニア州ロサンゼルス
  • カーラ・ロメロ──ニューメキシコ州サンタフェおよびカリフォルニア州チェメフエビ・インディアン居留地
  • ヴァージニア・サン・フラテッロ──カリフォルニア州
  • ニーナ・サーネル──カリフォルニア州ロサンゼルス
  • テレサ・セコード──メイン州ファーミントン
  • スーパーマリン──ニューヨーク州ブルックリンおよびオハイオ州シンシナティ
  • ソチピリ・コレクティブ──テキサス州ヒューストン
  • ザハラ・ラスール、アリエル・リッチン──ニューヨーク州フージックフォールズ

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