今週末に見たいアートイベントTOP5:香港M+と協働! 日本現代美術の20年を振り返る大規模展、アレックス・カッツが「即興」で創出する世界

関東地方の美術館・ギャラリーを中心に、現在開催されている展覧会の中でも特におすすめの展示をピックアップ! アートな週末を楽しもう!

小沢剛 《ベジタブル・ウェポン-さんまのつみれ鍋/東京》 2001年 Cプリント 113.0×156.0cm 国立国際美術館蔵 © Tsuyoshi Ozawa
時代のプリズム:日本で生まれた美術表現1989-2010(国立新美術館)より、小沢剛《ベジタブル・ウェポン-さんまのつみれ鍋/東京》 2001年、Cプリント、113.0×156.0cm 国立国際美術館蔵 © Tsuyoshi Ozawa

1. 特別展「深宇宙展~人類はどこへ向かうのか」To the Moon and Beyond(日本科学未来館)

有人月面探査車「有人与圧ローバー」実物大模型
前澤友作さんが実際に着用した宇宙服 ソコルスーツ
小惑星探査機「はやぶさ2」が持ち帰った リュウグウの粒子を観察
「さわれる本物のロケット部品」※展示イメージ

「宇宙探査時代」の最先端を知る

人類は今、かつてない宇宙探査の時代を迎えている。NASAはアポロ計画からおよそ半世紀ぶりとなる有人月面探査「アルテミス計画」を主導。再び月に宇宙飛行士を送り、将来的に火星の有人探査を行うという人類の夢が現実のものになろうとしている。本展はJAXA、国立天文台、東京大学をはじめとする日本の主要な宇宙研究開発機関に加え、宇宙開発に携わる多くの企業・団体の協力により、最新宇宙探査技術とその成果が一堂に集結する。

展示の目玉は、アルテミス計画で実際に使用される先端技術の数々だ。宇宙飛行士が宇宙服を着ずに、車内で1年のうち約1カ月間生活しながら月面探査を行う有人月面探査車「有人与圧ローバー」の実物大模型が世界初公開されるほか、月の氷などの資源探索が期待されている計測器「月面誘電率計測器(LDA:Lunar Dielectric Analyzer)」を紹介する。また、火星探査機が捉えた最新のデータを駆使して制作された映像を大画面で体験する火星ツアーも見逃せない。

特別展「深宇宙展~人類はどこへ向かうのか」To the Moon and Beyond
会期:7月12日(土)~9月28日(日)
場所:日本科学未来館(東京都江東区青海2-3-6)
時間:10:00~17:00(入場は30分前まで)
休館日:9月9日、16日


2. 「空へと / In Motion with the Sky マイナビアートスクエアアワード2025 ファイナリスト展 特別ゲストアーティスト:中島伽耶子」(マイナビアートスクエア)

撮影:野口羊
撮影:野口羊
撮影:野口羊

4人のファイナリストが提示する新たな視点

マイナビアートスクエアでは初めて、形式やジャンルにとらわれず新たな視点を持つ学生の作品や活動を称えるアワードを開催。教育的視点とアートへの深い見識を備えた審査員により、書類審査、二次審査(プレゼンテーション審査)を経て、展覧会審査に進むファイナリスト4人が選出された。

本展は、慶野結香をキュレーターとして迎え、A部門(大学生部門)で選ばれた江口湖夏(東京藝術大学大学院)、島田清夏(東京藝術大学大学院)、B部門(高校生以下部門)の朝田明沙(横須賀学院高等学校)、村上翔哉(三田国際科学学園高等学校)の4人、そして特別ゲストとして中島伽耶子の作品を展示する。多様化する現代社会において、アートが既存の枠組みを超えて新たな対話や関係性を生み出す力を体感できる機会となっている。

「空へと / In Motion with the Sky マイナビアートスクエアアワード2025 ファイナリスト展 特別ゲストアーティスト:中島伽耶子」
会期:8月28日(木)~9月27日(土)
場所:マイナビアートスクエア(東京都中央区銀座4-12-15 歌舞伎座タワー22F)
時間:11:00~18:00
休館日:日月祝


3. アレックス・カッツ「Four Seasons」(SCAI PIRAMIDE)

アレックス・カッツ《Summer 17》2023、
麻に油彩、121.9×182.9 cm Alex Katz is represented by GRAY Chicago/New York 協力: SCAI THE BATHHOUSE
アレックス・カッツ《Summer 3》2023、麻に油彩、91.4×91.4cm Alex Katz is represented by GRAY Chicago/New York 協力: SCAI THE BATHHOUSE
アレックス・カッツ《Spring 7》2023、麻に油彩、182.9×243.8cm Alex Katz is represented by GRAY Chicago/New York 協力: SCAI THE BATHHOUSE

「即興」が創り出すもの

現代のアメリカを代表する画家、アレックス・カッツの個展。1927年ニューヨーク生まれのカッツは1950年代より作品の発表を始め、以来、絵画、ドローイング、彫刻、版画など、様々な作品を生み出してきた。カッツの作品は「具象と抽象の間」を行き来する特徴を持つ。そのシンプルな構図における確信的なフォルムと情感の豊かさは、ビビッドな色彩と象徴的なイメージの使用によって増幅し、モチーフの特徴を明確かつ鮮烈に描き出す。過去に世界で200以上の個展と500以上のグループ展が開催されており、昨年はニューヨーク近代美術館(MoMA)で個展「Seasons」を開催した。

本展では、2022年に始めたシリーズ 「Seasons」を紹介する。同シリーズでカッツは、四季の移ろいをiPhoneで撮影したスナップショットと簡単なスケッチといった即興的な手法で捉え、広いキャンバスへと変換していく。彼が意図するのは、眼前の情景を視覚的に記録することではない。むしろ、知覚の残像を写し取った絵画を並べることで、目で見るという行為が空間を形作り、移りゆく風景を切り取った知覚の詩的な記録が会場を構築していくのだ。

アレックス・カッツ Four Seasons
会期:8月29日(金)~10月18日(土)
場所:SCAI PIRAMIDE(東京都港区六本木6-6-9 ピラミデビル3F)
時間:12:00〜18:00
休館日:月~水、日祝


4. 松岡一哲「もっと深くて鋭くて、危なくて、たまらなく美しいやつ。普通じゃないもの。」(タカ・イシイギャラリー フォトグラフィー / フィルム)

松岡一哲 「bird」2025 年 Cプリント © Ittetsu Matsuoka Courtesy of Taka Ishii Gallery

松岡一哲の柔らかで美しい世界

1978年生まれの写真家、松岡一哲による同ギャラリーでは3回目となる個展。松岡はスナップショットで撮影された、私写真の系譜に属する作品で知られている。長年愛用しているフィルムカメラ、オリンパス μ(ミュー)で撮影された作品群は、統一された淡い色の色調をまとい、独特の浮遊感を漂わせる。

本展では、今年撮影された作品を中心に、これまで一貫して示してきた自身の写真観をさらに色濃く反映させた近作約30点を発表する。松岡は、被写体のブレや甘いピント、意図しない露光、現場で起こる予期せぬ事象を積極的に受け入れることで、自身の作品の輪郭を柔らかく保ち、そっとすくい上げるように世界の一部をやさしく手渡す。そして、彼の作品には脚光を浴びるものとそうでないものとを分け隔てなく肯定する眼差しが息づいており、見過ごされてしまう場所や、切り取られない部分にも美しさが宿ることを気づかせてくれる。

松岡一哲「もっと深くて鋭くて、危なくて、たまらなく美しいやつ。普通じゃないもの。」
会期:9月6日(土)~10月11日(土)
場所:タカ・イシイギャラリー フォトグラフィー / フィルム(東京都港区六本木5-17-1 AXISビル2F)
時間:12:00〜19:00
休館日:日月祝


5. 時代のプリズム:日本で生まれた美術表現1989-2010(国立新美術館)

ナムジュン・パイク、ヨーゼフ・ボイス《2台ピアノのためのパフォーマンス》|撮影:安齊重男 草月ホール、1984年6月2日【1984年6月2日】 ゼラチン・シルバー・プリント 24.0 × 29.6 cm 国立新美術館ANZAÏフォトアーカイブ © Estate of Shigeo Anzaï, 1984. Courtesy of ANZAÏ Photo Archive, The National Art Center, Tokyo
椿昇《エステティック・ポリューション》 1990 年 発泡ウレタン、粘土、木(ヤナギ)、塗料他 290×360×270cm 金沢21世紀美術館蔵 ©TSUBAKI Noboru. 撮影:斎城卓 画像提供:金沢21世紀美術館
小沢剛 《ベジタブル・ウェポン-さんまのつみれ鍋/東京》 2001年 Cプリント 113.0×156.0cm 国立国際美術館蔵 © Tsuyoshi Ozawa
奈良美智《Agent Orange》 2006年 アクリル/カンヴァス 162.5 × 162.5 cm 個人蔵 © NARA Yoshitomo, 2025

日本が大きく動いた「20年」をアートの実践で振り返る

国立新美術館とそのパートナー美術館、香港のM+による初の協働企画。昭和が終わり、平成の始まった1989年から2010年までの20年間は、グローバル化が本格的に進展し、社会構造が劇的に変化した。と同時に世界は冷戦体制が終わり、大きく揺れ動いた。本展はその時代の日本でどのような美術が生まれ、どういった表現が発信されたのかを、国内外の50を超えるアーティストの実践から検証する。

展覧会は、1980年代初頭以降の国際化の胎動を伝える「プロローグ」に始まり、続く「イントロダクション」、その後3つのテーマで多角的に日本の20年に起きたアートの事象を紹介する。展示作家は、会田誠マシュー・バーニー蔡國強、クリスト、フランソワ・キュルレ、ダムタイプ福田美蘭、ドミニク・ゴンザレス=フォルステル、デイヴィッド・ハモンズピエール・ユイグ石内都ジョーン・ジョナス、笠原恵実子、川俣正、風間サチコ、小泉明郎、イ・ブル、シャロン・ロックハート、宮島達男、森万里子、森村泰昌村上隆長島有里枝、中原浩大、中村政人 、奈良美智 、西山美なコ 、大竹伸朗大岩オスカール 、小沢 剛 、フィリップ・パレーノ 、ナウィン・ラワンチャイクン 、志賀理江子 、島袋道浩 、下道基行 、曽根裕 、サイモン・スターリング 、ヒト・シュタイエル、トーマス・シュトゥルート 、束芋 、高嶺格 、フィオナ・タン、照屋勇賢、リクリット・ティラヴァニャ、椿昇、フランツ・ヴェスト、西京人、山城知佳子、やなぎみわ、柳幸典、ヤノベケンジ、米田知子ほか。

時代のプリズム:日本で生まれた美術表現1989-2010
会期:9月3日(水)~12月8日(月)
場所:国立新美術館(東京都港区六本木7-22-2)
時間:10:00~18:00(金土は20:00まで、入場は30分前まで)
休館日:火曜(9月23日を除く)9月24日

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