世界初の機械式計算機がオークションへ。父を助けるために開発された「最も重要な科学機器」
フランスの数学者ブレーズ・パスカルが父の仕事を助けるために考案した世界初の機械式計算機がオークションに出品される。1642年に作られたこの計算機は、現在も完全に機能しており約5億円の評価額が付けられている。

フランスの数学者、ブレーズ・パスカルが1642年に開発した計算機が、クリスティーズ・パリで開催されるオークションに出品される。黒檀の棒で装飾されたこの機器は、製作から380年余りを経た今も完全に動作し、評価額は200〜300万ユーロ(約3億4500万〜5億1700万円)にのぼる。
「パスカリーヌ」と呼ばれる世界初の機械式計算機についてオークションハウスは、「これまで出品された最も重要な科学機器」と評価している。この計算機は、19歳のパスカルが父の負担を軽減するために考案したもので、父エティエンヌはノルマンディーの会計監査院長として、州の税収を計算するために膨大な会計処理や測量作業を担っていた。
パスカルは用途に応じて異なる機能をもつパスカリーヌを開発。四則演算や会計計算、測量用の3種類が作られ、約50種類の試作品を経て20台前後が製作された。そのうち現存するのは9台のみで、現在はアンリ・ルコック自然博物館やパリ工芸博物館などヨーロッパの主要博物館に所蔵されている。
11月19日に開催される「レオン・パルセ・コレクション」に出品される計算機は、個人コレクターが所有する唯一のモデルで、「測量計算専用として知られるただひとつの機器」だという。さらにこのオークションでは、パスカルの著作15冊が登場し、そのなかには遺稿集『パンセ』初版も含まれている(予想落札価格は20万〜30万ユーロ[約3450万〜5170万円])。加えて、アンヌ・ド・ボージューの『ブルボン及びオーヴェルニュ公妃アンヌ・ド・フランスから娘シュザンヌ・ド・ブルボンに宛てた教訓』が15万〜20万ユーロ(約2600万〜3450万円)で出品されるほか、デカルトやニュートン、モンテーニュらの著作も並ぶ。
オークションに先立ち、パスカリーヌは各地で展示される。9月10〜23日のクリスティーズ・パリを皮切りに、10月11〜15日にはニューヨーク、10月23〜29日には香港を巡回し、最終的に11月13〜19日に再びパリで公開される予定だ。(翻訳:編集部)
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