「あいち2025」に波及。愛知県とイスラエルの連携に抗議する公開書簡、展示作家にも連帯呼びかけ

国際的に注目を集める芸術祭「あいち2025」が、開催地であり資金提供元でもある愛知県とイスラエルとの関係をめぐる抗議に巻き込まれている。

あいち2025の会場である愛知芸術文化センター。Photo: Courtesy Aichi Arts Center

愛知芸術文化センター、愛知県陶磁美術館、瀬戸市のまちなかの3カ所を舞台に9月13日に開幕したばかりの国際芸術祭「あいち2025」を巻き込んだ公開書簡が拡散されている。

抗議の焦点となっているのは「Aichi-Israelマッチングプログラム」だ。同プログラムは、2022年に愛知県とイスラエル・イノベーション庁の間で締結された覚書に基づいて実施されているもので、公式サイトによれば、愛知県内の企業とイスラエルのスタートアップ企業をつなぎ、地元企業がイスラエル企業を通じて「革新的なテクノロジーを発見する」ことを目的としている。

「あいち2025」自体は「Aichi-Israelマッチングプログラム」と直接的な関係を持つわけではないが、愛知県から資金提供を受けている。現在オンラインで拡散している公開書簡は芸術祭の参加作家に対して、「#SMASHTHEMATCH(試合を潰せ、拒否せよ)」を支持し、「あいち・イスラエル・マッチングプログラムの即時中止を要求せよ」と呼びかけている。この書簡では、同プログラムが「世界初のAI主導によるジェノサイドと、テクノロジー主導のアパルトヘイトを正当化し、企業や労働者を意図的にジェノサイドに加担させている」と批判している。

「あいち2025」に参加するアーティストのうち、バゼル・アッバス、マイケル・ラコウィッツ、ダラ・ナセル、パフォーマンスグループ「態変」の創設者・金滿里らがこの書簡に署名している。SNS上には、芸術祭開幕時に行われた同プログラムへの抗議活動の様子が動画で投稿されている。

今回の「あいち2025」の芸術監督を務めるのは、シャルジャ・アート財団ディレクターのフール・アル・カシミだ。展覧会タイトル「灰と薔薇のあいまに」は、パレスチナ出身の作家アドニスの詩から引用されたもので、カシミはアドニス本人から使用の許可を得たと述べている。

カシミはThe National紙の取材に対して、イスラエルによるガザでの軍事行動について言及している。さらに、開幕記者会見で彼女はイスラエルの軍事行動を「ジェノサイドと民族浄化」と表現し、「これは非常に感情を揺さぶられる体験でした。多くの人々が言うように、私たち全員が自由になるまで誰も自由ではありません。だから、パレスチナを自由にしましょう」と語ったという。

トリエンナーレの広報担当者はUS版ARTnewsに対し、メールで「あいち2025は、愛知県が実施するその他の経済的または産業的なパートナーシップとは直接的な関係はありません」と断った上で、こう述べている。

「あいち2025は、参加するすべてのアーティストの自由な表現を最大限に尊重します。『灰と薔薇のあいまに』は、連帯と集合的な声を通じて、未来の世代により明るい未来を育むことができるという理念を体現するプラットフォームです」

これまで同様、今回の「あいち2025」も組織委員会によって実施されているが、ARTnews JAPANが「あいち2025」の広報担当者に確認したところ、「Aichi-Israelマッチングプログラム」をめぐる論争が始まった後の9月11日、組織委員会副会長の東朋テクノロジー代表取締役社長・富田英之が委員会を「一身上の理由」から辞任していたことが明らかになった。

東朋テクノロジーは2020年の報告書で、「イスラエルのスタートアップ・エコシステムに注力する」としていたが、US版ARTnewsは、同社が正式に「Aichi-Israelマッチングプログラム」に参加していたかどうかを確認することはできなかった。富田の関与については、パレスチナ問題に焦点を当てる一部のSNSアカウントから批判が上がっていた。US版ARTnewsは東朋テクノロジーにコメントを求めている。(翻訳:編集部)

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