今週末に見たいアートイベントTOP5:ヴァン・クリーフ&アーペルの歴史を250点で紐解く、フィオナ・タンが暦から「抹消」された時間を追う

関東地方の美術館・ギャラリーを中心に、現在開催されている展覧会の中でも特におすすめの展示をピックアップ! アートな週末を楽しもう!

永遠(とわ)なる瞬間 ヴァン クリーフ&アーペル — ハイジュエリーが語るアール・デコ(東京都庭園美術館)より、絡み合う花々、赤と白のローズ ブレスレット 1924年 プラチナ、エメラルド、ルビー、オニキス、イエローダイヤモンド、ダイヤモンド ヴァン クリーフ&アーペル コレクション © Van Cleef & Arpels

1. ソニア・ドローネー「Everything Is Feeling」・レオ・ビラリール「Golden Game」(Paceギャラリー)

ソニア・ドローネー「Everything Is Feeling」展示風景。
ソニア・ドローネー「Everything Is Feeling」展示風景。
レオ・ビラリール「Golden Game」展示風景。
レオ・ビラリール「Golden Game」展示風景。

20世紀フランスと現代アメリカ作家の個展を同時開催

同ギャラリーを1階と2階の2会場に分けて、フランスのモダニズムを代表するソニア・ドローネー(1885-1979)とメキシコ系アメリカ人アーティスト、レオ・ビラリールの個展を開催する。ウクライナで生まれ、パリで活動したドローネーは、生涯を通じて色彩の持つ感情的・心理的・現象的な側面に強い関心を寄せ、テキスタイルやファッションデザインの分野でも活躍した。ミラノのジオ・マルコーニ・ギャラリーとの協働によって実現した本展は、ドローネーの色彩、パターン、そして抽象表現への先駆的なアプローチを紹介するとともに、日本独特の美意識との関連性について迫る。

一方レオ・ビラリールは自然、テクノロジー、偶然性と人間の体験との関係性の探求を紹介し、物理的な世界とデジタルな世界の境界についての思索を促してきた。本展では、様々なサイズで制作された、木材を主要な素材とする壁掛けの彫刻シリーズの最新作を発表する。今回ビラリールは初めてホワイトオーク(白樫)を素材に使った。《Golden Game》と 題された最新の彫刻群は、木という素材に宿る日本の文化的・歴史的意義を想起させる。LEDとカスタムソフトウェアを取り入れたこれらの作品は、自然界の力と神秘を映し出す抽象表現を静かに見つめ、深く思索する機会を与えてくれる。

ソニア・ドローネー「Everything Is Feeling」レオ・ビラリール「Golden Game」
会期:9月5日(金)〜10月18日(土)
場所:Paceギャラリー(東京都港区虎ノ門5-8-1 麻布台ヒルズ ガーデンプラザA 1-2F)
時間:11:00〜20:00(19:00~、日曜は18:00~アポイントメントのみ)
休館日:月曜


2. フィオナ・タン Lost Time(ワコウ・ワークス・オブ・アート)

Lost Time, 2025, work in progress
©Fiona Tan, courtesy WAKO WORKS OF ART

「暦改革」によって失われた時間を見つめる

1966年インドネシア生まれで、現在はオランダを拠点に活動するアーティスト、フィオナ・タンによる個展。タンは丹念なリサーチに基づく作品作りが特徴で、映像作品を介して時間や記憶、歴史の紡ぐ先を探求している。本展ではタンの最新作《Lost Time》を世界初公開する。

同作は天井から吊り下げた7枚のガラスによるインスタレーションで、それぞれのガラスパネルには、ローマ、アムステルダム、ロンドン、アラスカ、東京、モスクワ、アテネの各都市名とともに、各地でなされた改定によって暦から抹消された期間がサンドブラスト加工によって刻まれている。例えば、西洋において広く用いられてきた古代ローマ由来のユリウス暦と実際の地球の公転周期との間にはわずかな誤差が生じており、400年間の間に3日という見逃せない規模に拡大していった。そこで公転周期により近い新しい暦、グレゴリオ暦が1582年にローマ教皇グレゴリウス13世によって公布された。そして、18世紀から20世紀にかけて各地で暦改革が行われた際にそれぞれの暦に大きな欠落が生じることとなった。タンはその際に生じた市民たちの動揺を「それよりも奇妙なのは、一部の市民たちが『時間を奪われた』と信じ、暦の改革によって自分たちは本来より早く死ぬことになったと確信していたことだ。詩人フィリップ・ラーキンの言う通り『日々こそが私たちの生の場』なのだ」と話す。

フィオナ・タン Lost Time
会期:9月12日(木)〜10月25日(金)
場所:ワコウ・ワークス・オブ・アート(東京都港区六本木6-6-9ピラミデビル3階)
時間:11:00〜18:00
休館日:日月祝


3. 特別展「民藝誕生100年—京都が紡いだ日常の美」(京都市京セラ美術館)

木喰上人《地蔵菩薩像》 1801年 日本民藝館蔵
《馬ノ目皿》19世紀 アサヒグループ大山崎山荘美術館蔵

民藝運動と京都の関係に焦点

思想家の柳宗悦(1889-1961)、陶工の河井寬次郎(1890-1966)、濱田庄司(1894-1978)が京都に集うことで始まった「民藝」運動から100年を記念する展覧会。1923年の関東大震災で被災した柳宗悦は翌年京都へ転居し、この地で様々な人々と交流しながら木喰仏の調査旅行を進め、1925年に「民衆的なる工芸=民藝」という言葉を生み出した。

本展では「民藝」という言葉が誕生するきっかけとなった木喰仏をはじめ、1927年に京都・上賀茂に生まれた制作集団、上加茂民藝協団の中心人物である青田五良、黒田辰秋らの作品や、柳が静岡・浜松に開設した民藝のための美術館「民藝館」や大阪・三国の「三國荘」のために制作された河井寬次郎、濱田庄司、バーナード・リーチらの工芸作品を展示。京都と民藝との関わりを総合的に紹介する。

特別展「民藝誕生100年—京都が紡いだ日常の美」
会期:9月13日(土)~12月7日(日)
場所:京都市京セラ美術館本館 南回廊1階(京都府京都市左京区岡崎円勝寺町124)
時間:10:00~18:00(入場は閉場の30前まで)
休館日:月曜日(祝日の場合は開館)


4. 高井戸芸術祭2025「Upcycle Go! Around」(高井戸駅周辺エリア)

淺井裕介と地元小学生による巨大絵画を発表

今年で3年目となる高井戸地域を舞台にした地域密着型のアートフェスティバル。今年はアーティストの淺井裕介を迎えて開催される。淺井は土、水、マスキングテープなど身近な素材を用いてあらゆる場所で作品を制作する。また、画材に横浜の土が使われ、横浜の人々が絵画制作に協力し生まれた、横浜美術館所蔵の作品《八百万の森へ》(2024)など、地元の素材や人々の手を借りながら制作するスタイルが知られている。

今回は創立150周年を迎える高井戸小学校の生徒と共に、廃棄される予定だった巨大な紙に描いた絵画を展示するほか、複数のアートコレクターから借用した淺井作品を高井戸の様々な場所に展示する。鑑賞無料(一部店舗ワンドリンクオーダー制)。

高井戸芸術祭2025「Upcycle Go! Around」
会期:9月27日(土)〜10月11日(土)
場所:高井戸駅周辺エリア(杉並区立高井戸小学校、喫茶マカボイ、STUDIO VISIT、snip、株式会社ませぎ型紙製作)
時間:水〜金19:00〜22:00(土日は13:00〜17:00)
休日:月火


5. 永遠(とわ)なる瞬間 ヴァン クリーフ&アーペル — ハイジュエリーが語るアール・デコ(東京都庭園美術館)

絡み合う花々、赤と白のローズ ブレスレット 1924年 プラチナ、エメラルド、ルビー、オニキス、イエローダイヤモンド、ダイヤモンド ヴァン クリーフ&アーペル コレクション © Van Cleef & Arpels
コルレット 1929年 プラチナ、エメラルド、ダイヤモンド  エジプトのファイーザ王女旧蔵 ヴァン クリーフ&アーペル コレクション © Van Cleef & Arpels
カメリア ミノディエール 1938年 イエローゴールド、ミステリーセット ルビー、ルビー ヴァン クリーフ&アーペル コレクション © Van Cleef & Arpels
クリサンセマム クリップ 1937年 プラチナ、イエローゴールド、ミステリーセット ルビー、ダイヤモンド ヴァン クリーフ&アーペル コレクション © Van Cleef & Arpels

「美しき時代」の名品など250点が一堂に

ハイジュエリー メゾン、ヴァン・クリーフ&アーペルは、1895年にパリの宝石商一家であるアルフレッド・ヴァン クリーフとエステル・アーペルの結婚をきっかけに創立された。そして1906年にパリ・ヴァンドーム広場に最初のブティックを構えて以来、詩情あふれるデザインと革新的な技巧で高い評価を得てきた。

1925年に開催された「現代装飾美術・産業美術国際博覧会(通称 アール・デコ博覧会)」から100周年を迎えることを記念した本展では、同博覧会でグランプリを受賞した《絡み合う花々、赤と白のローズ ブレスレット》(1924)など、歴史的価値が認められた作品からなるヴァン クリーフ&アーペルの「パトリモニー コレクション」と個人蔵の作品から厳選されたジュエリー、時計、工芸品を約250点、さらにメゾンのアーカイブから約60点の資料を展示する。日時指定予約制。

永遠(とわ)なる瞬間 ヴァン クリーフ&アーペル — ハイジュエリーが語るアール・デコ
会期:9月27日(土)〜2026年1月18日(日)
場所:東京都庭園美術館(東京都港区白金台5-21-9)
時間:10:00〜18:00(11月21日・22日・28日・29日、12月5日・6日は20:00まで、入場は30分前まで)
休館日:月曜(祝日は翌平日)、12月28日~2026年1月4日

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