奈良美智の希少作品に最高17億円の落札予想! 市場指標としても注目集まる

欧州で最大となる回顧展を終えたばかりの奈良美智の絵画が、10月15日にロンドンで開催されるクリスティーズオークションに出品される。奈良が自己のスタイルを確立したドイツ滞在時代の作品で、予想落札価格は650万から850万ポンド(最近の為替レートで約13億~17億円、以下同)。

奈良美智《Haze Days》(1998) Photo: ©2025 Christie’s Images Ltd.

奈良美智の《Haze Days》(1998)が、10月15日にクリスティーズ・ロンドンで開催予定の20/21世紀イブニングセールに出品される。ロンドンのヘイワード・ギャラリーでは8月末まで、奈良にとってイギリス初の美術館個展となる大回顧展が開催された。本展はまた、欧州で過去最大規模の展覧会でもあった。なお、約180×160センチと大ぶりな《Haze Days》は、この回顧展には出展されていない。

650万から850万ポンド(最近の為替レートで約13億~17億円、以下同)の予想落札価格が付けられた《Haze Days》で、乳白色の水の中に一人佇む子どもは反抗心と無防備さが入り混じった眼差しで斜め上のほうを見つめている。パンク的な反骨精神と不安な心理がないまぜになった表現は、奈良作品の特徴とされるものだ。これは奈良が独自の作風を確立した時期の絵画の1つで、制作された1998年は12年にわたるドイツ滞在の最後期にあたる。また、1996年から2000年の間に制作された高さ150センチ以上のカンバス作品はわずか22点と、極めて稀少性が高い。

約2年半前の2023年5月、《Haze Days》はサザビーズニューヨークの「ザ・ナウ(The Now)」セールに出品が予定されていた。その際の予想最低価格は1800万ドル(約26億6000万円)だったが、オークション直前に出品取り下げとなっている。コロナ禍で活況を呈したアート市場が縮小に転じたここ数年、ギャラリーやコレクター、オークションハウスがその環境に適応しようとする中で開催される10月のセールに出品されるという意味でも、この作品は、市場の調整がどの程度であるかを示す指標となりそうだ。

奈良作品は最近、香港でのオークションで好結果を上げている。9月28日に行われたサザビーズ香港の近現代アートイブニングセールでは、《夜まで待てない》(2012)が予想落札価格6500万から8500万香港ドル(約12億4000万〜16億2000万円)のところ、7990万香港ドル(約15億2000万円)で競り落とされた。

相次ぐオークションへの出品は、価格への期待値が調整局面にある中でも、世界各地で奈良作品に根強い需要があることを裏付けている。(翻訳:石井佳子)

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