王陽明、文徴明の書など、米ミシガン大学に十数億円相当の寄贈
ミシガン大学美術館(ミシガン州アナーバー)が、同大学史上最高額の美術品寄贈を受けた。内容は1200万ドル(約14億円)以上もの価値がある中国の書で、1919年の五四運動の学生リーダーで1969年に亡くなった羅家倫(ラ・カリン)の遺族から寄贈されたもの。
自身が書家であり詩人でもあった羅家倫は、政府の要職に就き、中国の二つの主要大学で学長を務めた。今回寄贈されたのは、元、明、清、そして中華民国時代の書72点で、年代は14世紀初頭から20世紀半ばまでと幅広い。
楊維楨(ヨウ・イテイ)、王陽明(オウ・ヨウメイ)、文徴明(ブン・チョウメイ)、王鐸(オウ・タク)などによる名品に加え、1911年の辛亥革命以降の中国の重要な文化人である蔡元培(サイ・ゲンバイ)、陳独秀(チン・ドクシュウ)、沈尹黙(チン・イモク)らの作品のほか、印や硯(すずり)など、書の道具も含まれている。
ミシガン大学美術館のクリスティーナ・オルセン館長は声明を発表し、今回の寄贈は美術館に「変革をもたらす」ものと評価。「当館が所蔵する中国の書の充実度が大きく増すだけではなく、見学者に中国美術を包括的に見てもらえることから、他の所蔵作品の鑑賞にもさらなる奥行きと幅がもたらされる」と述べている。
羅家倫とその遺族は、ミシガン大学と100年近く前から交流があり、これまでにも中国美術品の寄贈を行ってきた。羅家倫の妻は、1917年にアジアと中東の女子学生のために設立されたバーバー奨学金を獲得し、1927年にミシガン大学で政治学の修士号を取得した。夫妻の二人の娘も、バーバー奨学金を受けてミシガン大学で学んでいる。
娘の一人、ジウファ・ロー・アプシャーは、これまでにも父親の名義で奨学金の寄付を行い、美術館のインターンシップの費用も負担している。今回の寄贈は、公式にはもう一人の娘であるジウフォン・ロー・チャンと、やはりミシガン大学で学んだその夫によるものだ。
ジウフォン・ロー・チャンは、声明の中で次のように述べている。「この寄贈は、父の遺産を称えるだけでなく、一家がミシガン州と深く関わっていること、そして、中国人留学生がほとんどいなかった時代に、ミシガン大学が私たちに学ぶ機会を与えてくれたことに対する感謝の気持ちを表すものです」(翻訳:清水玲奈)
※本記事は、米国版ARTnewsに2022年1月28日に掲載されました。元記事はこちら。