カタール、クールベ自画像《絶望》所有を公表。17年ぶりにフランスで公開
パリ・オルセー美術館で公開されたギュスターヴ・クールベの自画像《絶望》が、カタールの所有であることが明らかになった。本作がフランスで展示されるのは17年ぶり。

カタールは10月14日、ギュスターヴ・クールベの名高い自画像《Le Désespéré(絶望)》(1843–45)の所有者であることを明らかにした。本作は10月15日からパリのオルセー美術館で公開されており、クールベの母国であるフランスで展示されるのは、実に17年ぶりとなる。
画家の鋭く野性的な眼差しは、クールベの代表作である《石割り人夫たち》(1849)や《世界の起源》(1866)とともに展示されている。AFP通信によれば、この作品はオルセー美術館で5年間展示された後、カタール・ドーハに2030年に開館予定の新しい拠点、アート・ミル美術館に移される予定だという。
本作は2006年にロンドン・ナショナル・ギャラリーでも展示されているが、当時は、フランスの銀行、BNPパリバの協力を得て正体不明の個人コレクターからの貸出作品として扱われていた。また、2007〜2008年にパリ・グランパレで開催されたクールベ回顧展にも出品され、その後ニューヨークのメトロポリタン美術館、モンペリエのファーブル美術館を巡回した。さらに2010年と2011年には、フランクフルト・シルン美術館でも公開されている。
本作がカタール所有であることが公表されたのは、14日に開催されたパリ・オルセー美術館元館長、故シルヴァン・アミック(今年8月に急逝)の追悼式でのこと。この式に出席したカタール博物館の館長であり、同国国家元首の妹でもあるアル=マヤッサ・ビント・ハマド・ビン・ハリーファ・アル=サーニがスピーチでそれを認めた。
カタール博物館は国家機関であり、同国のアートシーンを統括しているが(アート・ミル美術館もカタール博物館が運営を担う)、《絶望》の取得方法や購入額については明らかにされていない。
アル=サーニは自身のインスタグラムにこう綴っている。
「親愛なるシルヴァン・アミックの追悼として、ギュスターヴ・クールベの《絶望》を公開しました。この作品は、アート・ミル美術館のコレクションからオルセー美術館に長期貸出されます。アート・ミル美術館の開館後は両館を行き来し、芸術は世界に共有され、人々を啓発するものであるというシルヴァンの信念を体現する予定です」
カタールのアートシーンはいま、大きく変貌している。アート・ミル美術館は、カタールの国際現代美術の新たな拠点として位置づけられており、チリ人建築家アレハンドロ・アラヴェナが設計を手がけている。アル=マヤッサはARTnewsの「TOP 200 COLLECTORS」にも名を連ねる世界有数の現代美術コレクターであり、カタール博物館の作品取得を統括している。(翻訳:編集部)
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