炭鉱で働く児童労働者たちを描いた作品が、Paris+で共感を呼ぶ
アートバーゼルがパリで初開催したParis+で話題をさらった作品がある。児童労働者を描いたビデオインスタレーション、《Mineur Mineur》だ。
段ボールに描かれた虹が、その下に設置された5つのスクリーンから伸びているようだ。それらのスクリーンには「生きた絵画が描かれている」──Paris+, par Art Baselでこの作品を展示したギャラリー、Xippasはそう説明する。
グラン・パレ・エフェメールの増築部分、エスパス・エッフェルで展示されている《Mineur Mineur》と題されたこの15分間のビデオ・インスタレーションは、パリ在住のビデオアーティスト、ベルティーユ・バクによるもの。5つの国で撮影した未成年の炭鉱夫たち(フランス語でmineur)を描いた作品だ。彼らは、家で必要とされれば学校を休まざるをえないタイとインドネシアの子どもたちであり、インド、ボリビア、マダガスカルには、フランスの最初のロックダウン前に5日間だけ滞在することができた。バクの祖父も、フランス北部のパ・ド・カレー県で鉱夫として働いていた。
「普段は撮影前に被写体と多くの時間を過ごす」と語るバクは、《Mineur Mineur》制作時、子どもの人権擁護団体に撮影を依頼したという。
「脚本やシーンを繰り返し夢想していたおかげで、頭の中には明確な構想がありました。みんなも私の指示にとても丁寧に従ってくれたので、すべてがスムーズに運びました」
作品では、ドキュメンタリーとフィクションが等しい割合で融合している。エスパス・エッフェルの展示会場に置かれた2台の学校のベンチが、訪れたオーディエンスに幼少時代を想起させる。作品から流れるトランペットやフルートの音色、ゲーム音楽などの効果音によって、周囲のノイズはかき消される。
スクリーンに映し出されるのは、出勤する準備に勤しんだり、岩場で追いかけっこに興じる様子、あるいはトンネルの奥深くに腹ばいで進む子どもたちの姿だ。彼らは炭鉱用のヘルメットを被り、首回りには貴族のようなひだ襟を着けている。つまりこの物語はある種の劇として存在しており、その中で鉱夫の子どもたちは貴族を、あるいはその逆を演じているというわけだ。
一方で、この作品は社会における彼らの役割を明示しない。その理由をバクはこう語る。
「アクティビズムが唯一の支援方法だとは思いません。一歩引いて、詩的に訴える方が好きなのです」
子どもたちの中には、撮影後から学校に通いはじめた子もいるという。しかし、この15分間に及ぶ映像作品を見終わってしばらく経った後も、子どもたちを忘れることはできないだろう。バクによって、もう「マイナー」ではなくなった彼らを。(翻訳:編集部)
*US版ARTnewsの元記事はこちら。