「幻のモディリアーニ」が47億円で落札! サザビーズがパリのセールで歴史的成功を収める
サザビーズは、アート・バーゼル・パリ(10月23日から25日まで)開催期間の10月24日にオークション「シュルレアリスムとその遺産」と「モダニテ」をパリで開催した。総売り上げは、昨年10月に行われた同種のセールと比べると50パーセント増の8970万ユーロ(約156億円)となった。
 
                  サザビーズは、10月24日にパリでオークション「シュルレアリスムとその遺産」と「モダニテ」を開催し、合計8970万ユーロ(約156億円)を売り上げた。これはサザビーズ・パリにおける複数出品者のセールとしては最高総額であり、昨年10月にパリで行われた2セール同時開催と比べると50パーセントの増加となる。
「モダニテ」では、1947年に個人コレクションに入って以来、約80年間公に姿を見せていなかったアメデオ・モディリアーニの《胸像のエルヴィール》(1918-1919)が脚光を浴びた。7人の入札者がこの絵画を巡って競い、予想落札価格の最高額である750万ユーロ(約13億円)の3倍以上となる2700万ユーロ(約47億円)で落札。モディリアーニが活躍したフランスにおける作家の最高価格を更新しただけではなく、サザビーズ・パリで販売された作品として最も高額な作品となった。
同セールでは、モディリアーニの《レイモン》(1915)も注目を集めた。小説家レイモン・ラディゲを描いたものと考えられ、65年以上同じ個人コレクションに保管されていたという作品は、緊迫した10分間の入札合戦が繰り広げられた後、予想落札価格の最高額の実に2倍以上となる1060万ユーロ(約18億4000万円)で決着した。
その後もパブロ・ピカソの「347シリーズ」からのエッチングが190万ユーロ(約3億3600万円)で売却され、フランスでのピカソの版画のオークション記録を樹立するなど好調な取引が続いた。「モダニテ」全体の売却率は85パーセント、総売り上げは6280万ユーロ(約111億1000万円)となり、昨年10月の「モダニテ」セールのほぼ2倍の数字となった。
これらの結果について、サザビーズ・フランスの副社長トーマス・ボンパールはUS版ARTnewsの取材に対して、「これらの並外れた結果は、サザビーズ・パリにとって決定的な瞬間を示すものであり、傑作が存在すれば市場が興奮するということを改めて証明したにすぎないのです」と話し、次のように証言した。
「セールルームには信じられないほどのエネルギーがあり、世界中からオンラインで参加する入札者からもそれを感じました。モディリアーニの作品がわずか数分で2700万ユーロ(約47億円)で落札されたことで、パリは新たな次元に入ったように思います。今週、パリのアートシーンは、ニューヨークのイブニングセールと同じぐらい多くの主要市場関係者——コレクター、ディーラー、アートアドバイザー、キュレーター——を集めていました」
「シュルレアリスムとその遺産」は総売り上げが2690万ユーロ(約46億7800万円)と、フランスのサザビーズにおけるシュルレアリスムオークションとしては史上2番目に高い額となった。中でも高額だったのは、ルネ・マグリットの《黒魔術》(1934)で、予想落札価格の2倍となる1070万ユーロ(約18億6100万円)で落札され、マグリットの「黒魔術」シリーズの最高額を記録した。この絵画は、ナチスの迫害から逃れるユダヤ人の子どもたちを助けたためにゲシュタポによって処刑された、レジスタンスの活動家スザンヌ・スパークの家族がマグリットから直接入手し、1世紀に渡って所持していたものだ。スパーク家は、マグリットが2年間1枚の絵も売れなかった時期に彼をパトロンとして支えた。サザビーズも同作を「マグリットの最も伝説的な作品の一つ」と評する。
サザビーズ・フランス副社長のボンパールも、US版ARTnewsの取材に対して同作の希少性を次のように語った。
「マグリットが描いて以来、個人コレクションとして守られてきたこのような象徴的作品に対面出来るのは、まったく並外れたことです。1950年代以降、マグリットの作品を取得してきた世界中の何世代にもわたるコレクターたちは、この重要で著名な《黒魔術》を所有出来るとは、誰も夢にも思わなかったでしょう」
その後はポール・デルヴォーの《薔薇を持つ女性》(1936)が240万ユーロ(約4億2440万円)、オスカル・ドミンゲスの《幻想的風景》(1938)が99万600ユーロ(約1億7500万円)、コンラート・クラフェックの《模範的夫》(1964)が82万5500ユーロ(約1億4600万円)で落札された。
「シュルレアリスムとその遺産」で特徴的だった点は、アメリカ人コレクターが出品作品のほぼ3分の1を落札したことだ。この日行われた2つのオークションを合わせると、ほぼ90パーセントが落札されており、こうした部分にもパリのアート市場における勢いが反映されていた。(翻訳:編集部)
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