今週末に見たいアートイベントTOP5:柚木沙弥郎75年の創作を回顧、榎忠ら3作家が「鉄」を多角的に考察

関東地方の美術館・ギャラリーを中心に、現在開催されている展覧会の中でも特におすすめの展示をピックアップ! アートな週末を楽しもう!

メタル展(銀座メゾンエルメス ル・フォーラム)より、榎忠 | 《RPM-1200》| 2011年 | 鋼鉄 | サイズ可変 | 兵庫県立美術館 | 写真:豊永政史 ©Chu Enoki

1. きぎつたえ くちつたえ あびかたらふ(大久保分校スタートアップミュージアム)

展示風景。
《対蹠地 捨身飼虎の物語》
《鮫人の面》

石原が綴る色鮮やかな「物語」

東京都出身の画家・石原七生の個展。石原は神話、伝承、謡曲などの古典、小説など様々な物語を身の回りの関心ごとと共鳴させるように読み解き、その物語と自身の些細な気付きや連想を合わせ、咀嚼を繰り返すことで、物語を受け取る。そして、その物語を自ら語り手となって綴るように作品を制作する。

石原は近年、絵画だけではなく、粘土や張り子による立体作品や金属板を用いたドローイングなど、多様な作品を制作している。様々な手法で紡がれた、石原独自の色鮮やかな世界を楽しんでもらいたい。

ききづたえ くちづたえ あひかたらふ
会期:10月3日(金)~11月30日(日)
場所:大久保分校スタートアップミュージアム (栃木県足利市大久保町126)
時間:10:00~17:00
休館日:月~木


2. MIKAMI MEME 2025 三上晴子と創造のミーム(√K Contemporary)

参考図版:飴屋法水《バリカーデ》(1987)撮影:猪瀬光
毛利悠子《アーバン・マイニング:多島海 #4》(2015)撮影:表恒匡 写真提供:スパイラル/株式会社ワコールアートセンター
三原聡一郎《無主物(Res Nullius)》 (2020/2025)撮影:木奥惠三 Photo Courtesy:日産アートアワード

三上晴子の遺伝子を継ぐ6作家が作品を発表

メディアアートの先駆者、三上晴子(1961-2015)の没後10年追悼展。1980年代半ばに鉄のジャンクによる作品で一躍脚光を浴びたのち、脳とコンピュータ、身体と免疫などのテーマを展開し、90年代前半のニューヨーク滞在を経てインタラクティブアートへと移行。その後20年間、国内外のメディアアート・シーンで活躍しつつ、多摩美術大学で多くの学生を育てた。

本展では、三上と出会い対話をする中で彼女から「ミーム(文化的遺伝子)」を受け継ぎながら、独自の世界を生み出したアーティストの作品を紹介する。参加は、1980年代後半に三上と共作を発表した飴屋法水、2000年代前半に多摩美術大学情報デザイン学科で三上の助手を務めた山川冬樹、同学科のスタジオ5に所属した平川紀道、三原聡一郎、毛利悠子やんツー。「MIKAMI MEME」から独自のミームに展開したアーティストたちの作品を通して、観客に自身の「ミーム」を育くむことを促す。

三上晴子没後 10年追悼展 MIKAMI MEME 2025 三上晴子と創造のミーム
会期:10月18日(土)~11月22日(土)
場所:√K Contemporary(東京都新宿区南町6)
時間:13:00~19:00
休館日:日月


3. 柚木沙弥郎 永遠のいま(東京オペラシティ アートギャラリー)

《型染布「2016」》2016年 型染、紬 日本民藝館蔵 撮影:村林千賀子
《幕》1961年 型染、木綿 坂本善三美術館蔵
《『注文の多い料理店』絵葉書型染原画》1975年頃 型染・顔料、紙 光原社蔵 撮影:いわねだいすけ

柚木沙弥郎75年にわたる創作の全貌

2024年に101歳の生涯を閉じた染色家、柚木沙弥郎(1922-2024)。柚木は柳宗悦らによる民藝運動に出会い、芹沢銈介のもとで染色家としての道を歩みはじめた柚木は、挿絵やコラージュなどジャンルの垣根を超え、創作世界を豊かに広げた。型染の世界に新風を吹き込んだ柚木の作品は、自由でユーモラスな形態と美しい色彩が心地よく調和しつつ生命力にあふれ、見る人を惹きつけてやまない。

本展では、初めて制作した型染布から101歳の時に制作したコラージュまで、 75年にわたる創作活動の全貌を代表的作品で辿る。また、国内外のゆかりの都市をテーマとした特集展示を設けて柚木をめぐる「旅」へと誘うほか、100歳を超えてなお、人生を愛し、楽しんだ作家による、自由な造形と豊かな色彩を紹介する。

柚木沙弥郎 永遠のいま
会期:10月24日(金)~12月21日(日)
場所:東京オペラシティ アートギャラリー(東京都新宿区西新宿3-20-2)
時間:11:00~19:00(入場は30分前まで)
休館日:月曜日(11月24日は除く)11月25日


4. 西山美なコ ~destiny of Sugar Rose~(Yoshimi Arts)

展示風景:左:《Untitled 2025.6.21~》 2025 映像、 右:《Untitled》 2025 シュガーペースト、針金、グラス、他 © Minako Nishiyama, courtesy of the artist and Yoshimi Arts, photo by Kiyotoshi Takashima
展示風景:《Sugar Rose》 2025 シュガーペースト、針金、他 アクリルケース 20×20×h20.7cm © Minako Nishiyama, courtesy of the artist and Yoshimi Arts, photo by Kiyotoshi Takashima
展示風景 © Minako Nishiyama, courtesy of the artist and Yoshimi Arts, photo by Kiyotoshi Takashima

「砂糖」を使った代表的シリーズで時の流れを可視化

1965年兵庫生まれの現代美術家、西山美なコは、日本独自のサブカルチャーを媒介とした美術作品を制作した最初の世代の作家として知られる。等身大の「リカちゃんハウス」を思わせる《ザ・ピんくはうす》(1991)や宝塚の書き割り風の作品など、少女文化を援用した立体作品で注目を集めた。

本展は、2000年代から制作し続ける砂糖で出来た薔薇の作品シリーズ「Sugar Rose」を展示する。今回は20年あまりの時を経たものから現在までの「Sugar Rose」を一堂に揃え、おのおのがゆっくりと移ろっている姿とともに、時の流れの可視化を試みる。

西山美なコ ~destiny of Sugar Rose~
会期:10月25日(土)~11月16日(日)
場所:Yoshimi Arts(大阪市西区江戸堀1-8-24 若狭ビル3F)
時間:12:00~19:00(日曜は17:00まで)
休館日:月火


5. メタル展(銀座メゾンエルメス ル・フォーラム)

榎忠 | 《RPM-1200》| 2011年 | 鋼鉄 | サイズ可変 | 兵庫県立美術館 | 写真:豊永政史 ©Chu Enoki
ÉlodieLesourd | The Breathe Of The Death Is The Only Sound(courtesy N.Gale) | 2024 | Acrylic on MDF | 73.4 x 55 cm ©Élodie Lesourd
遠藤麻衣子 | 《自在》 | 2024年 | 映像作品からの静止画 ©3 EYES FILMS, JST ERATO稲見自在化身体プロジェクト
ÉlodieLesourd | The Half of Half-and-Half (courtesy T.Blass) | 2014 | Acrylic on MDF | 35.2 x 52.9 cm ©Élodie Lesourd

3作家が多角的な視点で「金属」にアプローチ

エルメス財団がこの秋刊行した書籍『Savoir & Faire 金属』(岩波書店)を記念し、「金属」を多角的に考えるグループ展を開催する。金、銀、鉄、鉛、真鍮など、青銅器時代から現代まで人類の文明と共に歩んできた金属は、原材料となる鉱物や加工技術の多様性といった特有の性質を持っている。社会学者・歴史家のユーグ・ジャケは書籍の中で、金属の特徴を「両義性」と呼んだ。素材に備わる物理的なこの性質は、どのような文化的な側面を持っているのだろうか。

本展では、メタル音楽を記号論的に解釈するエロディ・ルスール、日本古来の朱と水銀を媒介に内的宇宙と外的象徴を創造する映画監督の遠藤麻衣子、そして鉄球としての地球に人間活動を重ね合わせ、廃材を用いた作品を作る榎忠の3人が「金属」を読み解き、再考する。

メタル展
会期:10月30日(木)~2026年1月31日(土)
場所:銀座メゾンエルメス ル・フォーラム(東京都中央区銀座5-4-1)
時間:11:00~19:00(入場は30分前まで)
休館日:水曜

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