奇才ウェス・アンダーソン、敬愛するジョセフ・コーネルのスタジオを再現。パリのガゴシアンで展示
ガゴシアンのパリ拠点で、ジョセフ・コーネルの展覧会が12月16日から開催される。パリで40年ぶりとなるこの展示では、映画監督ウェス・アンダーソンが、敬愛するコーネルのニューヨークのスタジオを再現する。

ガゴシアンが映画監督のウェス・アンダーソンと協働し、アメリカ人アーティストのジョセフ・コーネルがニューヨークで使っていたスタジオを再現する。この再現スタジオは、12月16日〜翌3月14日まで同ギャラリーのパリ拠点で開催される展覧会「The House on Utopia Parkway」の一角で公開される予定だ。展覧会開催を伝える声明で、ガゴシアンはこう説明している。
「ギャラリーは、緻密な演出が施されたタブローへと姿を変え、時を閉じ込めたタイムカプセルとして、そして実物大のシャドーボックスとして鑑賞者を迎え入れる。コーネルの個展がパリで開催されるのは実に40年ぶりのこと。1903年にニューヨーク州ナイアックで生まれた彼は、ペインティングや彫刻を作ることができなかったが、独学で美術を学び、20世紀を代表するアーティストとして数々の名作を残した」
また、この個展をキュレーションしたジャスパー・シャープはUS版ARTnewsに対してこう語る。
「ジョセフ・コーネルの個展には、私がこれまでキュレーションしてきた展覧会のなかで最も感度が高く、熱意のある観客が集まるに違いありません。世界最高峰のプライベートコレクションや、ニューヨーク近代美術館(MoMA)といった主要美術館の多くに収蔵されてい彼の作品には、作家や詩人、音楽家、科学者、数学者、天文学者など、幅広い分野の思想家や夢想家を魅了する力があります。パリで開催されるこの展覧会は、ギャラリーのある通りからも見ることができるため、幅広い層の人々の目に届くことでしょう。誰でも好きな時にギャラリーを訪れ、外からでも作品を見ることができるのです」
『ザ・ロイヤル・テネンバウムズ』や『グランド・ブダペスト・ホテル』などの作品で知られるアンダーソンがコーネル作品から受けた影響は、彼の映像の構図や演出にも明確に見て取れる。例えば、コーネルの作品《Palace》(1943)を見てみよう。シンメトリックに構成されたその作品は、アンダーソン作品にしばしば登場する均整の取れたシーンを思わせる。
ガゴシアンは、展覧会で展示されるシャドーボックスを「記憶とイマジネーションがかけ合わさった詩的な聖遺物箱(*1)」と位置付けている。展示作品のひとつ《Pharmacy》(1943)は、薬剤師の戸棚をモデルに制作され、かつてマルセル・デュシャン夫妻が所有していた。また、《Untitled (Medici Series, Pinturicchio Boy)》(1950頃)や《A Dressing Room for Gille》(1939)といった作品も並ぶ。
(*1)キリスト教において聖人や殉教者の遺骨などを納め、信仰の対象とするための箱
アーティストになる前のコーネルは熱心な収集家で、心に響く品々を探し求めてニューヨークの店を巡り歩いていた。19世紀のフランス小説やチケットの半券など、彼の収集物はのちにコラージュや箱型作品の素材として新たな命が吹き込まれることになる。スミソニアン・アメリカ美術館はコーネルの作品をこう評価する。
「コーネルは自分自身をシュルレアリストと位置づけてはいなかった。しかし、マックス・エルンストのコラージュやマルセル・デュシャンのレディメイドから多大な影響を受けている。1930〜1940年代にかけてコーネルは、彼らとともに展覧会に参加し、親交を深めた。絵画や彫刻を必要としない芸術形式を受け入れる彼らの姿勢が、コーネルの創作活動を後押しした。この時期に制作された作品は、シュルレアリスムとヴィクトリア朝の美術工芸が融合した芸術品と言えるだろう」
(翻訳:編集部)
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