アレキサンダー・マックイーンに盗作疑惑? NYの気鋭アーティスト、アダム・ペンドルトンが主張
今年のホイットニー・ビエンナーレでもフィーチャーされたNYの気鋭アーティスト、アダム・ペンドルトンが、ファッションブランドのアレキサンダー・マックイーン(Alexander McQueen)を盗作の疑いで告発した。対象となったのは、同ブランドが2022年のプレフォールコレクションでお披露目した「マックイーン・グラフィティ」ラインだ。
この疑惑は、ニューヨーク・タイムズ紙が10月末に最初に報じたことで明るみに出た。「マックイーン・グラフィティ」ラインには、ドレスやハンドバッグ、パーカー、そして9月に開催されたニューヨークコレクションのパーティーで『VOGUE』のアナ・ウィンターが着用したスカートなどが含まれる。
黒と白のグラフィティが施されたデザインの「マックイーン・グラフィティ」ラインは、確かに2021年にニューヨーク近代美術館(MoMA)のアトリウムを埋め尽くしたペンドルトンの作品を思い起こさせる。
タイムズ紙によると、ペンドルトンがこれに気づいたのは、友人によるウィンターのスカートがペンドルトン作品に酷似しているという指摘がきっかけだった。その後、ペンドルトンの弁護士がアレキサンダー・マックイーン側に模倣を指摘する書簡をメゾンに送付したところ、調査するとの回答を得たという。
しかしタイムズ紙は、調査の結果、これはペンドルトン作品の盗作ではないことが判明したと報じている。メゾンの声明によれば、「アレキサンダー・マックイーンは知的財産権侵害の主張を非常に深刻に受け止めている」とのこと。「我々はすぐにペンドルトン氏の主張を調査し、これらのデザインは独自に作成されたものであると結論づけた」
2016のアートバーゼルで発表されたアダム・ペンドルトンの作品。PHOTO FABRICE COFFRINI/AFP VIA GETTY IMAGES
ペンドルトンはタイムズ紙の取材に対し、今回の主張はアレキサンダー・マックイーン側に模倣の事実を認知してもらいたいだけであり、賠償金は求めていないと語っている。
またペンドルトンは、「視覚的な文化交流はきわめて重要かつ必要であり、常に起きていることであり、起こるべきことでもあると信じている」としつつ、こう続けた。
「しかし、その交流において、私たちがどのように価値を見出し、尊重するかが問題だ。今回の件では、『あなたには価値がない、あなたのしていることは認めるに値しない』と言われているようなものだ」
ARTnewsはペンドルトンとアレキサンダー・マックイーン双方に取材を申し入れたが、回答は得られなかった。
ファッションブランドがアートにインスピレーションを求めることは珍しくない。しかしアート界には、それがアーティストや作品の権利を侵害する可能性があることを主張する声が絶えずあった。事実、ウフィツィ美術館は最近、ボッティチェリの絵画《ヴィーナスの誕生》を無断で使用したとして、ジャンポール・ゴルチエを訴えている。
*from ARTnews