超人気作家のジョージ・コンド、ハウザー&ワースとの契約を終了。今後は2ギャラリーが共同代理へ

現在最も成功している現代アーティストの1人で、抽象的な形式を取り入れた独特の肖像画で知られるジョージ・コンドが、過去6年所属していたメガギャラリー、ハウザー&ワースとの契約を終了することが発表された。

ジョージ・コンド Photo: Stefan Ruiz/Courtesy Sprüth Magers

スプルース・マーガスとスカルシュテッド・ギャラリーが、人気現代アーティスト、ジョージ・コンドの共同代理権取得を発表した。コンドは2019年後半から所属していたハウザー&ワースを離れることになる。

この2つのギャラリーとコンドの関係は長く、モニカ・スプルース・ギャラリーの開業から1年ほど後の1984年に、コンドは同ギャラリーで初めて作品を発表。2004年から19年までは、スカルシュテットとも契約していた。ちなみにスプルース・マーガスは、モニカ・スプルースとフィロメネ・マーガスの合併で1998年に設立されている。スプルースは今回の発表に関し、US版ARTnewsへの声明で次のように述べている。

「ジョージ・コンドとは、1980年代初頭に彼がアーティストとしてキャリアをスタートさせたばかりの頃から共に仕事ができ、以後の成長を支えられたことを光栄に思います。1984年にモニカ・スプルース・ギャラリーで開催された彼の初個展は、ギャラリーとしてもオープン間もない時期でしたが、ニューヨークのみならず国際的なアートシーンにおいて、画期的な画家としてのコンドの地位を揺るぎないものにした展覧会です」

今年1月末から4月にかけてコンドは、ハウザー&ワースのソーホーのギャラリーと、アッパー・イースト・サイドのスプルース・マーガスで、「Pastels(パステル)」展を同時開催した。ハウザー&ワースの共同創設者で社長のイワン・ワースは、US版ARTnewsへのメールで次のように述べている。

「過去6年にわたり、傑出した芸術家であるジョージ・コンドと仕事ができたことを光栄に思います。私たちが共に成し遂げた成果は大きな誇りであり、これからも彼の成功を祈っています」

コンドは、17世紀のオランダ絵画、20世紀初頭のキュビスムシュルレアリスムから戦後のポップアートに至るまで、さまざまな美術史の要素を融合させたインパクトの強い肖像画で知られている。その画風は、一度の個展でピカソマティスレンブラントカラヴァッジョウィレム・デ・クーニングフランシス・ベーコンなど、数々の巨匠の作品を参照した絵画を目にできるほど多彩だ。また、油彩画だけでなく、紙を支持体とした作品や彫刻も手がけている。

ジョージ・コンド《The Clown Maker》(1984) Photo: Courtesy Sprüth Magers and Skarstedt / Private Collection

コンドは当代きっての売れっ子アーティストの1人でもある。現時点でのオークション最高落札額記録は680万ドル(最近の為替レートで約10億円、以下同)で、ハウザー&ワースに加わった直後の2020年、香港のクリスティーズに出品された《Force Field(フォース・フィールド)》(2010)で樹立された。2018年には既に600万ドルを超える落札額を達成しており、クリスティーズ・ニューヨークで《Nude and Forms(ヌードとフォーム)》(2014)が620万ドル(約9億5000万円)で落札されている。最近では2024年9月に、《Prescription for the Clinically Normal(臨床的に正常な場合の処方箋)》(2012)が、クリスティーズ香港で620万ドル(約9億5000万円)で落札された。

紙作品であっても、その価格は6桁から7桁(数千万から数億円)に達する。アートネット・ニュースによると、今年の「パステル」展には紙にパステルで描かれた作品20点が出展されたが、価格帯は60万ドルから150万ドル(約9200万〜2億3000万円)だったという。同記事はまた、2024年におけるコンド作品のオークション売上が3920万ドル(約60億円)に上り、存命作家として史上3位の金額を達成したと報じている。

10月下旬のアート・バーゼル・パリでも、ハウザー&ワースはVIPプレビュー前夜に実施された新たな招待制プレビュー「アヴァン・プルミエール」で、コンドの新作絵画《Femme de Monaco(モナコの女性)》に185万ドル(約2億8000万円)で買い手がついたと報告。その後、《Multicolored Female Composition(多色による女性のコンポジション)》(2016)も450万ドル(約6億9000万円)で売れている。スプルース・マーガスは同じフェアでコンド作品3点を販売したが、うち2つは180万ドル(約2億7000万円)、1つは120万ドル(約1億8000万円)だった。

ハウザー&ワースはまた、前週に行われたフリーズ・ロンドンで《Head Composition(ヘッド・コンポジション)》(2025)を20万ドル(約3000万円)で、6月のアート・バーゼルでは2点のコンド作品を各245万ドル(約3億7000万円)で販売している。

コンドはアート市場だけでなく美術館からも高く評価されており、現在はアート・バーゼル・パリの直前に開幕し、2026年2月まで続く大規模な回顧展がパリ市立近代美術館で開催中だ。これまでも、回顧展や個展がモナコ新国立美術館(2023)、ワシントンD.C.のフィリップス・コレクション(2017)、ベルリン国立ベルクグリューン美術館(2016)、ロンドンのテート・モダン(2015)、ニューヨークのニュー・ミュージアム(2011)など世界各地で開催されている。

スプルースは声明でこう続けている。「10月に開幕したばかりのパリ近代美術館の大回顧展は、彼の創作活動の幅広さと現代絵画における卓越した地位を裏付けるものです。再びペール・スカルシュテットと力を合わせ、アーティストとして脂の乗ったジョージ・コンドの共同代理を務めることを嬉しく思います」(翻訳:石井佳子)

from ARTnews

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