カタール、湾岸地域最大のアート保管・物流施設を建設。ハマド国際空港至近の「保税地区」

2026年2月にアート・バーゼル・カタールの開催を控え、国際的な近現代アートの美術館建設を計画中のカタールで、湾岸地域最大の美術品保管・物流を担う保税施設の建設計画が進行中であることが報じられた。

2025年9月5日、アル・コルニッシュ道路から見たカタール・ドーハの摩天楼群の眺め。Photo: Getty images

アート・バーゼルが2026年2月にアートフェアを初開催し、2030年には大規模な近現代美術館「Art Mill Museum」がオープン予定のカタールで、湾岸地域最大の美術品保管・物流施設の建設計画が進行中であることが報じられた。施設には、美術品の鑑賞室も備えられる。

この計画の中心は、アート・バーゼル・カタールのパートナー企業である、スポーツ分野を中心に投資を行うカタール・スポーツ・インベストメンツ(QSI)とカタールにおける文化・クリエイティブ産業を推進するQC+。両組織はこの度ロジスティクスとサプライチェーンのプロバイダーであるガルフ・ウェアハウジング・カンパニーQ.P.S.C(GWC)と協業して物流施設の建設をスタートさせる。

施設の建設予定地は、カタールのハブ空港であるハマド国際空港に近く、国家の税関領域内にありながら関税が課されない「保税地区」となる。このような保税地区は、世界的に見るとジュネーブ、ルクセンブルク、シンガポール、アメリカのデラウェア州など世界各地にあり、同国内ではハマド国際空港に隣接するラス・ブフォンタス自由港地区や、ドーハ中心部から車でおおよそ20分ほどの場所のウンム・アルフール保税地区がある。

アート・バーゼル・カタールの会場となるM7の外観。Photo: Julius Hirtzberger/Courtesy Art Basel.

QC+のCEOカースティン・マーンズは声明の中で、建設予定の美術品保管・物流施設とアート・バーゼル・カタールの繋がりに触れ、両者の存在は成熟した美術市場の証であると指摘した。そして、「中東湾岸諸国はもはやアートの新興市場ではありません。 アート・バーゼル・カタールの開催が示すように、グローバル・プレイヤーなのです」と語った。 GWCグループのCEO代理であるマシュー・カーンズは、別の声明で、「このプロジェクトは、カタールにおける総合的なアートインフラと創造的経済成長の新たなベンチマークを示すものです」とコメントした。

成長する地域のアート市場には、フルサービスの保税施設がつきものだ。 韓国は、フリーズ・ソウルの立ち上げの1年後、2023年に施設建設の計画を発表した。ドーハの新施設は、まだ大規模なアート作品の保管施設を持たない湾岸地域全体にサービスを提供することを目的としている。メリッサ・グロンルンドが最近US版ARTnewsに寄稿した湾岸諸国のアート市場の現状に関する記事によれば、ドバイは保税施設の建設についてまだ協議中であり、今年5月にサウジを代表するギャラリーATHRが、ドイツの物流企業ハーゼンカンプと提携してハイスペックな美術品保管施設を開設したという。(翻訳:編集部)

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