NYの名門「スペローネ・ウェストウォーター」が閉廊へ。ブルース・ナウマンらを支えた50年の歴史に幕
ニューヨークの伝説的ギャラリー、スペローネ・ウェストウォーターが12月31日に閉廊することが明らかになった。著名ギャラリーの閉鎖が相次ぐ中、50年の歴史を誇る老舗の決断はニューヨークのアート界に衝撃を与えている。
ブルース・ナウマン、リチャード・ロング、フランチェスコ・クレメンテなど数多くのアーティストを国際的地位に導いた老舗ギャラリー、スペローネ・ウェストウォーターが、現在開催中のリチャード・ロングの個展「FULL MOON」を最後に12月31日に閉廊するとアートネットが伝えた。
閉鎖の理由についてギャラリーは声明を発表し、「50年の成功を経て、スペローネ・ウェストウォーター・ギャラリーは閉廊します。共同創設者のジャン・エンツォ・スペローネとアンジェラ・ウェストウォーターがそれぞれ別の活動を追求することを決定したためです。彼らはギャラリーの成功と業績に貢献してくれた全ての人々に感謝しています」と説明した。
スペローネ・ウェストウォーターは1975年、3人のアートディーラー、イタリア出身のジャン・エンツォ・スペローネ、アメリカのアンジェラ・ウェストウォーター、ドイツのコンラート・フィッシャーによってニューヨークのソーホーで「スペローネ・ウェストウォーター・フィッシャー」という名でスタートした。オープニング展としてカール・アンドレの個展を開催し、その後の1年間でダグラス・フーブラー、河原温、ブライス・マーデンなどその時代の重要な芸術家たちの展覧会を開催した。だが1982年にコンラート・フィッシャーが離脱したため「スペローネ・ウェストウォーター」と改称した。コンラート・フィッシャーはその後ドイツで「コンラート・フィッシャー・ギャラリー」をオープンさせ、1996年に死去。現在も同名で営業が続いている。
スペローネ・ウェストウォーターは1980年代に、ヨーロッパで興った新表現主義を紹介した。その中で、イタリアにおける新表現主義の潮流「トランスアヴァンギャルディア」の代表的作家であるフランチェスコ・クレメンテ、ミンモ・パラディーノ、サンドロ・キア、エンツォ・クッキと、アメリカ人画家のスーザン・ロスバーグの作品を並べたこともあった。
同ギャラリーは、リチャード・ロング、ブルース・ナウマン、アニッシュ・カプーアらが複数回展覧会を行うなどして常に注目されていたが、時に賛否両論を呼ぶこともあった。映画監督として最もよく知られる故デイヴィッド・リンチが2019年に同ギャラリーで絵画展を開催したが、評価は分かれた。リンチの遺産は現在、ペース・ギャラリーが扱っている。
また、アメリカのギャラリーでは、所属アーティストが長年ヨーロッパ出身の白人男性に偏る傾向があった一方で、スペローネ・ウェストウォーターはその多様化にも取り組んだ。コートジボワール出身の画家ジョアナ・シュマリの個展を2022年に、プエルトリコ人アーティストのガマリエル・ロドリゲスの個展を2025年に開催している。
スペローネ・ウェストウォーターは、2010年からマンハッタン南部のニュー・ミュージアムに近接するバワリーを拠点としていた。同ギャラリーが所有する、ノーマン・フォスターが設計した総面積約1858平方メートルの8階建てビルが今後どうなるかは明らかになっていない。
同ギャラリーは、12月3日から7日まで開催されるアート・バーゼル・マイアミビーチには参加する予定だ。
スペローネ・ウェストウォーター閉廊のニュースは、ニューヨークのアート界に衝撃を与えた。だがここ1年で、ブラム、ヴィーナス・オーバー・マンハッタン、クリアリング、カスミン(新ギャラリー「Olney Gleason」が開廊予定)そしてティルトン・ギャラリーといったニューヨークに拠点を置くブルーチップギャラリーの閉廊が相次いでいる。(翻訳:編集部)
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